タイトルDarwinがIntelプラットフォーム向けに構築できたことが報告カテゴリーMac OS X, オープンソース
作成日2000/3/29 16:44:19作成者新居雅行
Darwinが1つの節目を迎えたようだ。Darwin 1.0のリリースに向けての重要なステップをクリアした模様だ(Darwin 1.0がリリースされたわけではない)。AppleのDarwinのエンジニアが、メーリングリストでIntelプラットフォーム向けのコンパイルができるようになったことを表明し、併せて、開発状況を日記風につづるWebサイト(記事の末尾を参照)を始めた。これまでは、Intel向けのビルドができないとされていたが、なんらかの技術的な障壁を乗り越えたのではないかと思われる。そして、CVSとしてソースコードが登録された。これからインストールや稼動テストを行うとしており、そうしたプロセスを経て、正式にリリースされるものと思われる。なお、どんなハードウエア条件なのかなどは、公表されていない模様だ。
DarwinをLinuxやFreeBSDと同じ、フリーUNIXのディストリビューションと見る向きもあるだろうが、Appleの本来の目的は、Mac OSのコアであり、その点は変化はないだろう。Darwinだけを取り出してシェアを確保するというマーケティング的な動きは行っていない。また、IntelプラットフォームでDarwinが動くとなると、Mac OS XのIntel版という話も出てくる。しかしこれについて推測してみたが、結論は否定的なものだ。OPENSTEPから発展してきたYellow BoxのWindows版は出さないことになっていることからも、Macintoshコンピュータ以外のプラットフォームは当面は眼中にないと思われる。
Intel版Mac OS Xは技術的には可能だろうか? Mac OS Xの構成を見ると、Darwinの上に、グラフィックスレイヤとしてOpenGL、QuickTime、Quartzがある。それらは並列にあるものの、これは説明のための図であって、ソフトウエアレイヤ的には、QuickTimeやOpenGLは基本的なグラフィックスを処理すると思われるQuartzの一部分を経由する必要があると考えられる。従って、QuartzがPowerPC以外で動かないことには、Mac OS Xを異なるプラットフォームへ移植することは実現しないだろう。その部分をIntel上で動くようにするという意味ではハードルはあるし、この部分はオープン化されていない。Classic、Carbonのような部分はMacintosh以外で動かす意味は薄いだろうが、Cocoaベースのアプリケーションは、以前はWindows版もあったYellow Box対応アプリケーションと同じ意味であり、マルチプラットフォームも可能と考えられる。つまり、AppleがグラフィックスエンジンをIntelプラットフォーム向けに移植する意志があるかどうかということが大きいのだ。QuickTimeはIntel向けに動いているではないかと思うかも知れないが、これはWindowsのグラフィックスエンジンの上で動いているだけにIntel Darwinとは直接結びつかないと思われる。Mac OS Xの説明で、G3やG4のパワーを最大限に生かすという言い方がなされるが、これはPowerPCに最適化されたソフトウエアコンポーネントを作っているということにも取れなくはない。
DarwinのIntel対応で意味があるとすると、“Apple”が“オープンソース”で“Intel”に対応したという事実を世間に印象づけることだ。いかにも魅力的なキーワードがきれいに並んでいる。結果的に、業界に対するAppleから1つのプレッシャーとなり、存在感を大きく高めるという役割を担うのである。Intel向けにビルドが成功されたという報道があちらこちらでされること…Appleの真の狙いはそこにあるのではないだろうか。
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