タイトルFileMaker Developer 5を使う:概要とアプリケーション作成カテゴリーデータベース
作成日2000/8/1 16:4:6作成者新居雅行
ファイルメーカーPro Ver.5のリリースに伴い、製品群も4つのパッケージに分割されるようになった。今回を含めてそのうちの、FileMaker Developer 5を4回に渡って製品紹介をしていくことにする。1回目は、概要と単独で動くアプリケーションの作成、2回目にはXML、3回目にはプラグイン関数の作成、4回目にはJavaからの利用をテーマとしたい。
ファイルメーカーProは、ある意味ではもっともマックらしいアプリケーションとして常に注目されてきたデータベースソフトだ。初期の頃から、データベースを設計しフォームで入力や印刷結果を得るという手法を取り入れ、GUIがマックにしかない時代では使いやすいデータベースの代表格だった。その後、Windowsが台頭し、各種アプリケーションのGUI化に伴い、むしろリレーショナルデータベースではない形式のファイルメーカーProのデメリットが露呈してきたが、現在ではリレーショナル処理も可能となり、また、スクリプト機能の強化やAppleScript対応などプログラミングを必要とするソリューションにも適用できる能力を備えている。さらに、Webをベースにしたデータベース利用においても、標準機能として備え、さらにUnlimited版として大規模なデータベース処理にも対応するなど、Webコンピューティング対応も本格的に行われてきている。また、Windowsにおいては、開発ツール化が著しくなったAccessを横目に、気軽に使えるデータベースとして、Word/ExcelそしてファイルメーカーProというポジションニングを狙うなど、従来の優位点が再度発揮できる環境になっている点も見のがせない。マーケティング的には「日経ビジネス」誌に広告を掲載している点からも、グローバルなソリューションの中核を狙っている意図も見のがせないものがある。
そのファイルメーカーProのデベロッパー版「FileMaker Developer 5」であるが、いくつかの機能がファイルメーカーProに加わることになる。名前から明らかなように、一般ユーザではなく、デベロッパが対象のソフトである。価格はMacintosh版、Windows版それぞれが\79,000となっている。Developer版は従来からあるが、ファイルメーカーProで作ったデータベースを、スタンドアロンのアプリケーションとして利用できるようにするという機能がメインとなるだろう。ランタイム版の配付はフリーなので、たとえばファイルメーカーProで作った家計簿データベースをもとにアプリケーション化し、それをフリーソフトとして配付してもかまわないのである。
そして、Developer版の特徴としては、プラグイン関数を開発するための素材、Javaベースでの開発のためのクラス群あるいはJDBCドライバなども含まれる。XMLについてはソフトがあるというよりもドキュメントやサンプルなどが含まれている。これらは回を改めることにしよう。なお、Developer版には通常のファイルメーカーProのCD-ROMもライセンスとともに含まれていて、それとは別にDeveloper版CD-ROMが入っている。マニュアルについては通常版にある「入門ガイド」「ユーザーズガイド」に加えて、「デベロッパーズガイド」が追加されている。

<スタンドアロンアプリケーションを作成する>
ファイルメーカーProで実用的なデータベースを構築しても、ファイルメーカーProがなければ動かすことができない。ビジネス現場なら、結果的に人数分のライセンスを購入することになるかもしれない。しかしながら、Developer版では、データベースを自由に配付できるライセンスが付属する。つまり、データベースの実行専用のランタイムを自由に配付できる権利が付属する。そのため、作ったデータベースをフリーソフトとして配付して使ってもらうということも可能になる。だとすると、社内で使っているファイルメーカーProのライセンスは不要になるのかと言えば、それは違う。ランタイム版は設計ができないのはもちろんだが、作成時に指定したデータベース以外は開くことができないため、ネットワークで共有しているデータベースや、あるいはサーバに接続してデータベースを開くということができないのである。つまり、ランタイム版のアプリケーションでのデータ共有は大幅に制限されていると言って良く、ワークグループ利用の基本となるネットワーク共有は利用できない。結果的には、スタンドアロンのアプリケーション作成や、あるいはバッチ処理と組み合わせたようなソリューションに利用できるということになる。

スタンドアロンのアプリケーションは、対話式に作成できるようになっているので、作成作業自体は大して難しくはない。むしろ、こうしたランタイム上でも問題なく利用できるように、データベース自体を作り込んでおくことの方が面倒と言えば面倒だろう。
アプリケーション作成には、「ファイルメーカー Developer Tool」というアプリケーションを利用する。以下、そこで出てくる画面をかいつまで説明しよう。まずは2画面目になるが、何を作成するのかを指定するダイアログボックスが出てくる。「スタンドアロン形式」というのは、雰囲気としては専用のアプリケーションを作ると思えば良いが、アプリケーション+データベースファイルの形式になる。データベースファイルはファイルメーカーProで開くことができるので、つまりはライタイムのアプリケーションを用意するといったものになる。なお、「スタンドアロン形式」のチェックを入れなければ、単にデータベースファイルがコピーされるだけだが、ファイル名の処置などを行いたい場合には利用するかもしれない。

◇ファイルメーカー Developer Toolで作成するものの設定
 

その後、ラインタイムで利用するデータベースのファイルを選択して指定を行う。ランタイム実行時には、アップルメニューからの情報表示や、カスタムのヘルプにも対応している。これらの機能を利用するには、要はフォームを作っておき、そのフォームを呼び出すマクロを定義しておく。そうすれば、Developer Toolでそれらの呼び出しマクロを指定する場面が出てくるので、そこで適切なものを指定する。通常のデータベースではなく、こうした情報表示やヘルプを作成しておくことで、よりアプリケーションらしく仕上がると言えるだろう。さらに「スクリプト」メニューを違うメニュー名にする機能がある。つまり、マクロを独自名称のメニューから呼び出すことができる。
さらに「バインドキー」として後からデータベースを追加するような場合に必要なキーコードの指定もあるが、ここで適当に指定したものは、Developer Toolのフォルダにテキストファイルとして残るので、いちいちメモをしなくても基本的には大丈夫だろう。
最終的に、データベースのコピーやランタイム用のアプリケーションを含んだフォルダが新たに作成される。「ソリューション」という名前が付加されたファイルをダブルクリックすると、実際にそのデータベースが利用できる。

◇Developer Toolで作った最終的な結果
 

途中に「キオスクモード」というものがあった。キオスクという概念は欧米人にはなじみがあるようだが、日本人的にはちょっとピンと来ない。このキオスクモードは、そのアプリケーションのウインドウ以外真っ黒にしてしまうモードで、つまりはそのアプリケーションしか使えない状態にすることだ。ウインドウのタイトルや外枠すら黒く塗られてマウスで作業することができない。スクロールバーは見えている。つまり、FileMaker Developer的に言えば、アプリケーションのウインドウの中身だけが見えているモードということだ。作成するアプリケーションの種類や実行環境によっては有効だろう。ただし、この場合、メニュー処理は一切だめでCommand+Qすら効かない。終了ボタンを付け忘れたら、強制終了させるかAppleScriptのプログラムで終了させるしか手はないようだ。

アプリケーション化はファイルメーカーProの機能を限定するとは言え、やはり通常パッケージだけでは適用できないような世界への利用が考えられる。個人向けあるいはSOHO向けの家計簿や名刺管理などを作って商品として販売することも可能だろう。クライアントが大量にある場合、ライセンスを考えてランタイムで配付し、バッチ処理で集積するなども考えられる。また、さまざまなデータの専用ブラウザを作ることも考えられる。なお、Macintosh版のDevelper版では、Mac OS向けのアプリケーションしか作成はできない。
関連リンクファイルメーカー社