タイトルリクルートエイブリック:就職情報のWebサイトをMacintoshで運用、WebObjectsとWebSTARを利用カテゴリーWebObjects
作成日2000/11/29 16:24:2作成者新居雅行
人材紹介を行う株式会社リクルートエイブリックは、求人をしたい企業と、就職希望者の間を取り持つのが業務である。Webサイトの「キャリアスクウェア」で、誰でも求人情報を参照できるようになっているが、びっしりと文字が並ぶWebサイトに募集内容やそれに関わるさまざまな記事が掲載されている。このサイトはおおむねMacintoshだけで開発し、運用されている。そして、アプリケーションサーバにはWebObjectsが使われているのである。
リクルートエイブリックの実績は、求人数が2000年9月末時点で約3万名となっている。登録者数は1999年度で約2万8500名、紹介実績は1999年度で5632名だ。そのリクルートエイブリックのWebサイトであるCarrerSquareでは、求人情報や記事がジャンルごとに分けられて、自分の就職したい業種を選び、そこから実際の求人情報を抽出して表示している。こうした求人情報や記事は、もちろんデータベースに登録されて公開されることになる。求人情報や記事のページを、スタティックなHTMLで作成していては多大な労力がかかるのは一目瞭然だ。データベースと連動して紹介業務と連動する形でシステム化を行い、Webサイトもダイナミックに生成するといったことで、実務が可能になると言えるだろう。データベースでは、求人関連や記事の情報だけでなく、そのレコードを公開するかどうかといったフラグや、公開期間といったデータも与えておき、一定期間に求人情報や記事がWebサイトで公開される仕組みとなっている。
公開サイトのシステムは、2台のPowerMac G4/450を用いたWebサーバ、さらに2台のPowerMac G4/450を用いたアプリケーションサーバ、さらに1台のPowerMac G4/450によるデータベースサーバからなる。インターネット側に見えているネットワークに2台のWebサーバマシンに加えてコンテンツ管理用サーバ(Power Macintosh G3/DT266)が稼動している。そして、それらと切り離した内部ネットワークで、アプリケーションサーバ、データベースサーバ、さらにPower Macintosh G3/MT300による運用管理サーバを働かせている。合計7台すべてがMacintoshという運用構成だ。
まず、アプリケーションサーバにはWebObjects 4.5を利用している。2台のマシンで負荷が分散されているが、いずれもメモリ640MB、ハードディスク20GBで、Mac OS Server 1.2Jという構成になっている。Webサーバには、WebSTAR 4.2を使いMac OS 9.0.4Jで稼動させている。WebSTAR用のWOAdapterを利用し、WebObjectsを呼び出す形式になっている。640M/18Gと576M/9Gといったメモリやディスク構成となっており、ディスクはいずれもUltra Wide 2 SCSIだ。WebサーバマシンにはIPNetRouterを入れて、プライベート側のネットワークと接続を行っている。データベースサーバは640MB/18GBのマシンにMac OS X Server 1.2Jを稼動させ、データベースにはFrontBase 2.1.8を稼動させている。QuickDNSを利用することでWebサーバの負荷分散やフォールトトレンラントも実現している。また、PageSecurityを使うことでWebSTARの稼動をチェックしてハングアップ時に自動再起動も実現している。

◇Macintoshで安全なシステム、WebObjectsでスケールアップ
こうしたMacintoshによるシステム化の理由として、リクルートエイブリック情報システム部WebMasterの石津広也氏は「セキュリティを確保することを考えると、Macintoshを使うことが他のOSを使うことよりもはるかに安全だ」と話す。また、Mac OS X Serverを利用することでの安定性確保も利用する目的に挙げた。Webサイトのシステムは、古くはファイルメーカーProとバトラーを用いたシステムを利用し、それを4th Dimension(4D)を利用したシステムに展開していたが、さらに今後のスケールアップを考えてWebObjectsで作り直すことにしたそうだ。Ver.4.5のリリースを受けて検討を開始し、仕様決定が2000年の8月初旬で、何とその段階から3.5人の人員で約1.5ヶ月という極めて短い期間で現在のシステムを作り上げている。ただし、今現在が同社の考える最終形態ではなく、就職希望者のエントリーシステムや、あるいは求人検索機能については、現在は4Dやバトラーを利用したシステムなどで稼動している。こうした機能についてもWebObjectsベースのシステムに今後は移行することも考えており、まだまだシステム移行の第一段階に過ぎないということなのだ。
開発を始めて稼動ができるまでは極めて短期間だったが、仕様を固めるまでがかなりの時間を費やした。それも、WebObjectsやOS関連のノウハウをこれからためるという段階だったので、検証や知識の学習にそれなりに手間取った。しかしながら、ある程度の知識を得てからは非常に効率的に開発ができるようになった。WebObjectsについても、開発者担当者の1人、エーテンの谷雅彦氏によると、「ウィザードは一切使わないで、1からプログラムを起こした」とのことで、短期間に十分なスキルを積んで開発に臨むことになったということだ。また、コンサルタントとして倉橋浩一氏も開発に参加し、プログラミング面でのサポートを受けた。また、リリース前にソースコードレビューを行い、パフォーマンス改善の対策などについて指摘を受けたそうだ。
ただし、WebSTARのWOAdapterの問題があって、一方のWebサーバは一方のアプリケーションサーバにしか接続しないようにもなっている。現状では負荷分散的に問題がある状態ではないものの理想的な状態とも言えない。こうした点も含めての改善も今後と課題として挙げている。
FrontBaseをデータベースエンジンに採用している点については、SQL言語が非常に素直な点と、不具合に対する対処を素早く的確に行ってもらえたというサポート面を挙げている。
また、将来的には基幹業務システムとの連動をWebObjectsを使って行うことも検討している。社内で使うソフトウエアについても、サイバーフレームワーク(サイバー・ラボ)の利用を検討しており、WebObjectsの利用範囲は今後も広げていく考えである。

(今回の取材では、記事中に紹介した以外に、株式会社ニックネーム・ドットコムの谷本靖氏、KDK, Inc.の河本公夫氏、有限会社福井文具店の福井浩之氏にもお話を伺った。)
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