タイトル次期Mac OS X Serverの概要が公開、Mac OS Xをベースにしたサーバカテゴリーサーバー製品, Mac OS X Server
作成日2001/1/12 17:59:9作成者新居雅行
「Mac OS X Server」の概要がアップルのサイトで公開された。名称が交錯してややこしいが、1999年にリリースされた「Mac OS X Server」は現在Ver.1.2v3までアップデートしている。今回、概要が発表されたのは、そのMac OS X Server Ver.1.2のアップデートではなく、2001年3月24日に発売予定の「Mac OS X」の“サーバ版”という位置付けのものだ。名称が混乱するのでVer.1.2までリリースされた方は「旧Mac OS X Server」と以後呼ぶことにしよう。旧Mac OS X Serverと、Mac OS Xは大枠では同様な基盤を持っているのだが、厳密にはコアの部分にはさまざまな違いが存在する。その意味で、Mac OS X Serverは、旧Mac OS X Serverよりも、Mac OS Xに近いと考えればよい。
アップルのサイトでは、Mac OS X Serverは、Mac OS Xと現在のAppleShare IPを合わせたようなものだと紹介している。つまり、Mach/BSDをベースにした堅牢なOS機能に加えて、AppleShare IPでつちかわれた管理のしやすさという点も合わせ持つというものだ。
このMac OS X Serverは、Mac OS Xにアドインモジュールとして追加するような形式になるという話が以前からは出ていたが、今回公開された情報にはその種の話が掲載されていない。システム要件には、Power Mac G4などのハードウエア条件は記載されているけども、「Mac OS Xが別途必要」ということは記載されていない。また、箱の写真もあることも含めてMac OS X Serverという単独の1つのOSがすべて含まれたパッケージになるのではないだろうか。また、旧Mac OS X Server、あるいはAppleShare IPからのアップデートにも対応するとしている。日本語版もリリースされる予定だ。Mac OS Xのリリース後の早い次期に登場するとしているが、次期や価格といった具体的な情報はまだ公開されていない。

Mac OS X Serverの基本的な特徴は、Mac OS Xと同様、とにかく堅牢なOSだということだ。マルチタスクやマルチプロセッサ対応、メモリ保護といった特徴がある。Mac OSのサーバ用途では、SolarisやWindows NT/2000、あるいはLinuxといったライバルと大きな差を付けられていた要因がこれである。だが、この点でも肩を並べるものがリリースされる。Mac OS X Serverはコアの部分はUNIXであり、オープンソースとして公開されているさまざまなソフトウエアも追加できる。もっとも、Mac OS X Server自体にすでにいろいろなソフトウエアが統合されている。マシンに向かって管理もできるが、リモートの管理も可能だ。また、SSHを利用したログインも可能になっている。
ファイルやプリンタ共有では、AppleShare、Windowsのクライアントからファイルやプリンタ共有を可能とするSMB、UNIXのネットワークファイル共有機能であるNFS、そしてFTPが利用できる。AppleShare IPのSMBは、ファイル名が31バイトまでに規制されていたが、Mac OS X Serverではそうしたことはさすがにないと思われる。NFSまで含め、対応プロトコルが豊富なファイルサーバになると言えるだろう。FTPはWU-FTPが使われている。
インターネット機能としては、まずはApacheによるWebサーバ機能が組み込まれる。しかしながら単にApacheが動くだけではない。WebDAVが標準で利用できる他、SSLにも対応する。さらにはPerlのスクリプトをCGIで呼び出したり、JavaのServletやJava Server Pages(JSP)のサポート、PHP4、そしてMySQLによるデータベースエンジンなど、ソリューションに直接つなげるような周辺ソフトを揃えてきている。ServletのエンジンはTomcatだ。
そして、WebObjectsの稼動環境も組み込まれている。バージョンについては明確にされていないが、WebObjectsの稼動環境としてはMac OS X Serverは有力な選択肢となるだろう。QuickTime Streaming Serverについても標準で組み込まれている。
他には、POPとIMAPに対応したメールサーバ機能、IPフィルタリングによるファイアウォール機能、DHCPサーバ、DNSの運用、さらにはService Location Protocol(SLP)への対応と、必要な機能はおおむね揃うと言えるだろう。
ディレクトリサービス機能も利用でき、ユーザ情報をネットワークに対して公開することができる。つまり、ログイン情報の一元化などができるということだ。NetInfo、あるいはLDAPに対応するが、システム側のディレクトリサービス利用機能は、ディレクトリサービスごとにプラグインで対応できるようになっている。理屈の上ではActive Directoryなどにも対応できるのだろうが、とりあえずはNetInfoとLDAPが標準で利用できるようになるのではないだろうか。
Macintosh ManagerやNetBootといった機能も利用できる模様で、Mac OSレベルのクライアント管理にも使える。

Mac OS X Serverの大きな特徴は、こうしたサーバ機能の管理を、アプリケーション上でできるということだ。テキストの設定ファイルをエディタで変更して…というよくあるサーバ管理の大変な作業は、管理ツールを見ながらクリックする…ということに置き換えられる。より手軽にサーバ管理ができるということになるだろう。もっとも、管理者が望むのは、その管理ツールを、別のマシンからも使えるかということだが、その点についてはやや記載が曖昧である。リモート管理はもしかすると、SSHによるコマンドレベルになるのかもしれない。なお、すべてのサービスに対して管理アプリケーションがあるわけではなく、一部のサービスについては、設定ファイルを書き直すなどの一般的な手法を取らないといけない。
Mac OSとしての独自性があるとすると、AppleShare IPサーバや、WebObjectsのデプロイメント環境という点が出るだろう。もちろん、NetInfoやMacintosh Managerという路線もあるが、クライアントはMac OS 9系列になるだろうから、その意味では今後に大きな発展はそれほど期待はできないだろう。
一方、Apacheはもちろん、オープンソース系のさまざまなソリューションを標準で込めてきた点は大きいと言える。特に、PHPやSerlvet、JSPといった、スクリプト環境が含まれている点は大きいだろう。こうしたスクリプト環境をベースにしたアプリケーションの移植はやはりやりやすくなる。また、MySQLは、オープンソース系では高い支持を得ているデータベースソフトだ。もちろん、Oracleなどとくらべると機能的には低いのだが、簡単な参照系のアプリケーションなどではMySQLでも十分にやっていける実力はある。PHPには、MySQLを利用するための関数がある。また、JDBCのドライバもあるので、ServletやJSPからの利用も可能だ。WebObjectsのアダプタまでが用意されていれば、MySQLの利用はかなり広がる可能性も高い。Q&Aのドキュメントには、

いずれにしても、Mac OSでのサーバ機能と、UNIX系のサーバ機能が1つになったというのが全体的な印象だ。一方で、この種のOSは無償であることが多い。サーバ版としてパッケージが販売されていることもあるが、ダウンロードはできたりもする。Solarisですら事実上のフリー版をリリースしている。こうした市場環境に、Macintoshというハードウエアを含めてどのように浸透させるのかといことも課題になるだろう。
一方、WebSTARや、iTools for Mac OS Xといった製品とは、大いにバッティングをする。これらの製品がどういう形態で市場投入するのかも注目したい。
関連リンクMac OS X Server