タイトル軽くて速いプレイヤのiPodが登場、FireWire接続で事実上はMacでしか使えない仕様にカテゴリーメディアプレイヤ, 各種プロダクツ
作成日2001/10/24 15:47:41作成者新居雅行
「Macではない新しいデバイス」の正体はオーディオプレイヤであった。そのiPodについては各方面で紹介がされるであろうから詳細な内容はさておいて、私見を交えてさらに開発者的な側面からの考察を展開してみたい。携帯のオーディオプレイヤ(AIFFやWAVEも再生できるので、“MP3プレイヤ”という言い方はしないことにしよう)自体は決して珍しいものではない。しかしながら、iPodはFireWireでの接続を行うという点がまずいちばんの特徴だと言えるだろう。記憶装置の大容量化が進むもののケーブルがUSBでは転送時間までも肥大化するばかりであり、問題点の解決をしなければならなくはなっている。USB 2.0という方向性もあるかもしれないが、FireWireを推進するAppleとしては、FireWireオンリの接続ということでのさまざまなメリットが得られる。まず、現行のMacintosh製品はすべてFireWire端子を装備するようになったことから、Macintoshとの互換性は問題ない。もちろん、オリジナルiBookユーザは困ったということになるだろうが、Appleの狙いとしてはiPodへの注目からMacintoshの購入を促すというところもあるだろう。また、USB 2.0をある意味でコンペティタと認識するならば、普及する前にコンシューマデバイスでFireWireを広めることで、先行しているメリットを強く生かすことができる。もちろん、MacとiPodとの間の転送時間を短縮するという直接的なメリットも大きい。また、FireWireケーブルの接続でiPodが充電できるというのも含めてケーブルはFireWireの1本で済ませられるから、非常に便利な機能となるだろう。さらに、iPod自体がFireWire外付けハードディスクとして機能する点もユニークな点だが、ディスクの状態でコピーしたサウンドファイルはiPodでの再生はできないようになっている。
一方、FireWireを利用したことにより、Windowsなどの他のプラットフォームでの利用をとりあえずはブロックできる。つまり、iPodは事実上Macintosh専用機となるわけである。もっとも、ある意味では、WindowsやLinuxでiPodとのデータのやりとりができるようなアプリケーションソフトというのは、それなりに需要が出るかもしれないので、開発者としては狙っているところかもしれない。だが、ハードディスクモードと、音楽データの転送とは別々の動作になっていることから、単に「ファイルコピー」でiPodにデータの転送はできない模様なので、音楽データの転送プロトコルをAppleが公開するかどうかによって、iTunes以外のアプリケーションでの利用が左右されるだろう。非公開にした場合には、iPodはMacintoshプラットフォームに囲い込むことができるし、Windows版も自社開発ができる。一方、Macintosh側のアプリケーションとしても、需要はあるかどうかの問題はあるが、たとえばDJ編集したサウンドデータを直接iPodに転送したいとかいった特殊なアプリケーションでの利用もありうる話だ。しかしながら、iTunes 2をハブとして利用できるような枠組みでアプリケーションを設計すれば、iPodと直接やりとりする必要もないだろう。そう考えれば、開発者側としてはiTunes 2の使い方をうまくやれば、iPodはもちろん各種のサウンドプレイヤ対応はうまくできるそうである。
ことあるごとに引き合いに出される「デジタルハブ」構想であるが、iPodはそうした戦略から出てきた商品である。ただ、これまでは基本的には本体はApple、周辺機器は別のメーカという図式であったものの、その一角をAppleが強く攻めてきた。そうなると、他の周辺機器もAppleは狙っているのではないかという予測もできる。昔から言われているPDAはどうなのだろうか? もしかすると、QuickTake以来のデジカメも出てくるのだろうか? たとえば、FireWire接続できるデジカメであれば、そこそこの需要はあるとも言えるだろう。さすがにビデオカメラまでは作らないとしても、ハイエンドオーディオあるいはAVシステム、さらには音楽制作システムとのFireWireをベースにした接続と連係といった世界も、Appleが主体性を持って製品投入するかもしれないという期待も出てくる。いずれにしても、iPodからどんな製品に発展するのか、あるいは波及するのかという新たな楽しみが増えたことは確かである。コンピュータとOSのメーカから、アプリケーションを含めたソリューション提供を自社でまかなうようになったAppleである。そして次は戦略的な周辺機器もやってしまうというメッセージが読み取れる。
その意味ではスペック的には魅力も多いものの、ある意味ではまだ冒険は少ない製品だ。これを見て、いろいろなニーズを求める声が上がることは予想できる。録音できるようにしろとか、あるいはカスタムアプリケーションを起動できるようにしろ、あるいはAirMacとか電話接続できるようにして、ネットワーク利用やインターネットラジオを聞けるようにとか、さらには普通のAM/FMも聞きたいとか、どうせならQuickTime Playerよろしくビデオも見たり単体でプレゼンしたいとか…。そうした声が上がることによって、ユーザのニーズも見えてくるし、そうなると製品のマーケティングもやりやすくなる。そうした狙いも感じさせるスペックの製品でもある。

製品として評価できる点はいろいあるが、最初から各国語に対応しているところが目につくところだ。特に日本語が最初から組み込まれているのは嬉しいところだが、一方で韓国語などは入っていない言語も多いのも事実であり、OSに対応した全ての言語が組み込まれているわけではない。バッテリの充電速度が早いことや、デザイン、軽量な点も評価できる点ではある。
持ち運びながらの音楽再生という点では、音飛びがしないように設計されているあたりもやはり実用上は重要な機能となるだろう。20分ものバッファはかなり余裕があると見ていいかと思われる。使いやすさという点もAppleは主張しているが、これは実際に使ってみないと分からない面もある。特に、スクロールという考え方は確かにMacユーザにとってはなじみがあるかもしれないが、デザインを見る限りは、円形の部分を操作しないとスクロールしないということは、通常は説明されないと分からないことである。むしろ、携帯電話に慣れている人にとっては、上下の矢印キーの方が素直に使えるとも考えられる。
一方、$399という価格については、やはりやや高めである。米国での販売サイトなどを見ると他社のハードディスクタイプのプレイヤは、録音ができたり20GBくらいの容量でも300ドル台の中ごろだし、数ギガバイトくらいなら200ドル台である(もっとも、USBではあるが)。その差額に、FireWireのバリューを感じるのならそれはそれでOKなのかもしれない。また、Windowsプラットフォームでの横並び競争をするのではないという製品ポジションからも、Appleは強気の価格設定ができるのは明白である。気になる日本の価格だが、47,800円と発表され、発売日も米国と同じく11月10日(土)と発表された。Creative MediaのNOMAD Jukebox(6GB)は定価が49,800円となっているため、その意味では標準的かもしれない。ただし、ソフマップの通販サイトでは特別価格ながら約3万円で販売されているなど実勢価格はもっと安い。もちろん、NOMADは440gの重量で、185gのiPodより倍以上重いなどの違いはあるし、接続はUSBだ。月並みにな結論だが、価格については個人個人で評価は分かれるところだろう。
もっとも、オーディオプレイヤは誰でも必要とするものでもないことは事実だろう。しかしながら、外付けハードディスクにもなるのなら…という思いも重なることで、いくらかは市場は広がることも予想できる。そのあたりはうまく製品に魅力を与えていると感じるところだ。
関連リンクiPod