タイトルMIDIから音響処理や画像処理にまで発展したMaxのすべてを紹介する書籍が出版カテゴリー開発ツール, 雑誌、書籍
作成日2001/10/31 16:58:1作成者新居雅行
Maxの本が出た、実に5年ぶりだ。筆者は赤松正行氏と左近田展康氏による「ノイマンピアノ」で、リットーミュージックからの出版だ。ちょうど1000ページという(狙った?)大著で、\6,800となっている。古くからMIDIをベースにしたプログラミングによる音楽制作を行うという意味での開発環境であったMaxであるが、その後、サウンドを処理する機能であるMSP、さらには処理結果が画像という意味での画像合成のnatoや3D画像処理のGEMなど、より多彩な表現が可能になった。本書はその全ての側面を扱っており、基本的な操作方法や、実例として分かりやすいシンプルなオブジェクトの利用方法からはじまり、そして上級者向けのテクニックも含むなど、すべてのMaxユーザが持っていて価値のある書籍だと言えるだろう。入門者にとっても最初の1歩から説明されているが、上級者にとってのリファレンスやあるいはヒントとなる話題も含まれている。さらに、MIDI機器だけでなくセンサーなどを含めたさまざまな入出力機器の利用方法や、あるいはMaxを使って作品制作をしているミュージシャンたちへのインタビューもあり、実際にパフォーマンスや音楽制作をしている人にとって見のがせない情報も含まれている。Maxのソフトウエアとしての能力に加えて、作品制作環境としての視点も含め、Maxのすべてが凝縮された書籍であると言えるだろう。
なお、2001年11月17日(土)には、東京新宿のタワーレコードで、15:00〜16:00の予定で、『「トランスMaxエクスプレス」出版記念トーク&ミニライブ』が開催される。「Sound&Recording Magazine」の2001年12月号には、出版記念インタビューも掲載されてる予定だ。

Maxについての概要を説明しておこう。Maxは一種の開発環境であるが、オブジェクトをウィンドウ上にグラフィカルに配置し、そのオブジェクト間を線で結んで処理の流れを定義するといった形式のものだ。たとえば、そのオブジェクトが、一定のパターンで音を生成したり、あるいは指定した処理を行うフィルタだったりする。かなりたくさんのオブジェクトがあり、それらを組み合わせて「作品」を仕上げるといったものだ。入出力機能もあるため、インタラクティブな作品も作成できる。一般には音楽は楽譜というものに代表されるように、どのような音をどんな順序で発するのかといったシーケンシャルな指示をもとに作られるというイメージが強いかもしれない。一般的な音楽ソフトは、1つ1つの音をいつどこでどれくらいの長さで出すかといったことを記憶させてそれを再生する。Maxによる音楽制作はそうした再生を行うものというよりも、一定の規則をプログラミングして、「生成する」ものと考えればよいだろう。Macintosh環境にはMax以外にもMやJamFactoryなどユニークな音楽ソフトがあったもののビジネス的には苦しかったようで、ジャンル的には相対的な意味でも縮小した。もちろん、お手軽なお遊び的音楽生成ソフトはWindows環境も含めて存在はするが、本格的な作品の制作が可能なのはMaxだけと言っても過言ではない。そのMaxは現在はMacintoshでのみで利用できる(Windows版も開発中ではある)。結果的にMaxにフォーカスしたクリエイタもそこそこ存在するわけだが、解説本の需要は常にあった。1996年にディー・アートから、やはりノイマンピアノ著による「マジカルMAXツアー」が発売されていたものの、数年前から入手困難書籍となっていた。また、当時はMIDI中心だったMaxであるが、その後のサウンド機能や画像処理への伸展も含めて、今現在のMaxを語る書籍の強いニーズがあると言えるだろう。それに応えるのが「トランスMaxエクスプレス」である。
関連リンクトランスMaxエクスプレス