Macintosh Developer Online (MDOnline)


2001年5月22日発行号 - WWDC基調講演を解説



セッションをさぼって(笑)、重要なことの記事をまとめておきましたので、また、配信します。最初のセッションは、すでにみんな知っているようなことばかりでした。この調子だと、ごく基本的なことを説明するといった趣旨のセッションがそこそこあるのではないかと思ったりもしますが、それも勉強ですからね。一応、現地時間月曜日の配信はこれまでとします。火曜日は朝にまず配信をすると思います(現地時間ですね)。
(新居雅行 msyk@mdonline.jp


WWDC》Appleからのメッセージは「ネイティブアプリケーションを作ってほしい」

WWDC 2001の初日、2001年5月21日にAppleのCEOであるスティーブ・ジョブズ氏を中心にしたセッションが行われた。基調講演という用語は使われていなかったが、イベントの初っぱなでもあり、事実上の基調講演と言えるだろう。過去のWWDCではCarbonというフレームワークの発表があるなど、開発の世界の次世代を担う重要な発表が行われた。しかしながら、「今年は将来の話はしない」と最初に釘をさされた。
今回の基調講演でスティーブ・ジョブズ氏やアビ・テバニアン氏からの何度も発せられた「Mac OS Xのネイティブアプリケーションを作ってほしい」という言葉が、Appleからのメッセージのすべてを物語っていると言えるだろう。Macworld誌の調査を引用し、多くのユーザがMac OS Xネイティブアプリケーションを熱望していると市場の状況を説明した。また、新たに開店した直営店でもアプリケーションを扱うことを言明し、デベロッパーのモチベーションを高めた。
技術的な内容については、すでにこれまで説明されたことが中心であったが、Appleの姿勢として、Cocoaを使ってネイティブアプリケーションを作りましょうというスタンスがより明確になってきたと言えるかもしれない。昨年中は、CocoaよりもCarbonに対する情報提供を積極的に行ってきているだけに、姿勢の変化を感じた。ただ、Carbonを否定するものではなく、Carbon自体も「ネイティブ」と言える環境をAppleは提供していることも強調して説明した。いずれにしても、デベロッパー会議という場に沿った有効なメッセージはこれしかないというところだろうか。
ニュースとしては、Mac OS Xをハードウエアにバンドル、WebObject 5の出荷、Mac OS X Server 10.0の出荷がいずれも、今日から行われたことだ。1つ目の話題はともかく、WebObjects 5やMac OS X Server 10.0については詳細な技術的な説明は講演では行われなかった。内容が公開できるかは微妙だが、これらについての詳細なセッションは、WWDCのプログラムの中で用意されているので、そちらで詳細は聞いてほしいというところだろう。
いずれにしても、「おみやげ」の少ない講演だったかもしれないが、逆に考えれば昨年までとまさに時代が変わったことを意味する。ローカルでベタな表現だが、今年はまさに「Mac OS X元年」だとも言えるわけだ。派手な話題を期待する向きとしては、「Mac OS Xの次」を知りたいという話もあるわけだが、大きな流れで「次」というのは今はないと言っていると感じる。これから始まる長い「Mac OS X時代」のまさに出発点にAppleもデベロッパーも立っているのである。そして、今一番の問題は、サードパーティのネイティブアプリケーションが不足しているということだ。AppleがiTunesなど自社でアプリケーションを開発してしまっていることからも、現場ではサードパーティが成り立たないのではないかという危惧も広がりつつある。そのことに対しての明確には言明していないが、Appleは「がんばって製品を作ってください」と明るく提案してきたのである。順調にアプリケーションが出荷されると、サードパーティというものがなくなるかもしれない…というのが取り越し苦労だったと言える時がやってくるかもしれない。将来を示して鼓舞していた昨年までと、まさに時代が変わったのだ。

カテゴリ:イベント


森下克徳の崖っぷちからWebObjects》第14回〜昔なつかし天中殺かも…。そんでもってMac OS X Server1.2セットアップ・その6

前回、PowerBookの電源がいかれたという話をしたけど、どうも最近ついてない。実はちょっと前、小さな交差点で私の前を走っていた車が左折しかけて急に戻ってきたので、こっちの左側面のドアを2枚つぶされた。ほら、向こうが悪くても車の保険って100パーセントは出ないよねえ。で、余分な出費が…。そのうえ実は、私はサイバーな仕事の合間に、琵琶湖の西の安曇川というところに3反ほど畑を持っていて、無農薬無化学肥料の自然農法で健康な野菜を作っているんだけれど、野菜の苗を定植したら、お猿が出てきて抜いていかれちまった…。あう……。で、全く困ったのが次のこれ。5月1日、わがネットワークのメールサーバが不調だったこともあって、ゲートウェイになっているルータのファームウェアをバージョンアップしたところ、みごとに反応しなくなってしまった。リセットも効かないわ、パケットは全部通らんわ、にっちもさっちも行かなくなってしまった。まったく、むか〜し流行った「天中殺」っちゅうのんは、これやねえ。重なる時は重なるもんだ。

でもまあ、事故は命に別状なかったし、お猿にやられたのは一部だし、不幸中の幸いではあった。特にルータの場合、連休の谷間の平日2日間で対処できたのが本当に幸いであった。障害が復旧できないとわかったところで、即座にメーカであるセンチュリーシステムズさんにTelを入れた。すると、営業している2日中に届けばすぐ対処できるとのこと。即座に近所の宅配便の営業所まで走り、もう午後3時ぐらいだったけど、翌日午前中着指定で送った。すると、2日後の3日には、もう正常な状態になって戻ってきたのである。しかも、修理代無料の返送料向こう持ちで。そもそも手のひらサイズのCR-20なので、送料800円ぐらいで済んだんだけどね。

本当にこのセンチュリーさんの迅速な対応には感謝したい。京都〜武蔵野間を往復して3日かからなかったおかげでネットワークが止まったのが最小限で済んだのだ。ありがとうございました。

さあて、本題である。今日の話は、ファイルシステムのアクセス権などの説明である。

一般的にUNIなシステムでソースからソフトウェアをコンパイルしてインストールする場合、一般ユーザでソースを入手してコンパイルし、rootになってからシステムにインストールするという手順をとる。

Macはもともと個人で使うコンピュータ、つまりパーソナルコンピュータなので、中身全部は持ち主のものという発想で、歴史的に一般ユーザがそのまま絶対権を持っているようなものであった。それに対してUNIXの育ってきたのは最初から共同利用を前提としたシステムである。極論したら、一軒家とマンションの違いかなあ。一軒家の主人はどの部屋に入ろうが問題ないわけだけれど、マンションは同じ建物でも赤の他人が住み込んでいる。好きに他人の部屋に入るわけには行かない。そこで名前(ID)とそれに対応するルームキーを用意して(パスワード)その人の部屋と共有部分しか基本的に入れなくしたのである。逆にいえば他人がかってに自分の部屋の中を荒らして行くこともないわけだ。この仕組みが所有者とアクセス権の仕組みなのである。

詳細な解説はよそに譲るとして、一般的に何でもできてしまうrootでは、極力作業しないということを覚えておこう。それはセキュリティを守るためである。だから、root以外のユーザでコンパイルまでして、最後に、rootだけが書き込むことができる部分に書き込む必要がある時にだけrootに変身するのである。

前回までの作業で、Terminal上であなたはBINDのコンパイル済みのもろもろが用意されているディレクトリにいるはずだ。それではこれをインストールしよう。それにはまず、「suリターン」として、次に**rootの**パスワードを入力しリターンする。するとその場であなたはrootに変身できる。これでインストールできる立場になったわけだ。それでは、make installリターンと入力しよう。自動的にずらずらと表示が流れる。この時にインストールがなされているのだ。最後までいったら、とりあえずrootから普通のユーザに戻ろう。exitと打ち込んでリターンだ。すると最初のユーザに戻っているはずだ。

BINDはつまりIPアドレスとホストを対比させるためのデータベースなんだけれど、もちろんインストールしただけでは動きようもない。データベースをちゃんとセットしてあげないとならないのだ。それがつまり設定ファイルである。次回はそれをしよう…と思ったんだけれど、BINDが17日付けで8.2.4にバージョンアップしている。現在BIND8系列のバージョンアップは、おおかたセキュリティに関わる部分の修正に限られている。つまりは、8.2.3が入ったばかりだけれど、8.2.4を入れてみよう。今日現在、Stepwiseに8.2.4はまだないようだから、次回はコンパイルから挑戦だ。

※注※次期Mac OS X Serverが発表されるらしいということなので、サブタイトルに「1.2」を追加しました。
[森下克徳]

カテゴリ:Mac OS X Server, 崖っぷちからWebObjects


Mac OS X Server 10.0が出荷、UNIXの有用性に手軽に管理できる環境を提供

Mac OS X Server 10.0がリリースされた。従来まで販売されていたMac OS X Server 1.2までのものとは製品系列が異なるOSだと言ってよいだろう。Mac OS X 10.0をベースに、サーバ向けOSとしたものが「Mac OS X Server 10.0」だ。同時にファイル共有を10クライアントまで利用できる10ユーザ版が$499、アクセス数を無制限に使えるバージョンが$999となっている。10ユーザ版を無制限版には$499でアップグレードできる。なお、従来のMac OS X Server 1.2からのアップグレードはない模様だ。対応機種は、Macintosh Server G4、Power Mac G4、Power Mac G4 Cube、iMac™、Macintosh Server G3、Power Macintosh G3となっている。要するに、Mac OS X 10.0の対応機種のうち、PowerBookやiBookを除いたものとなっている。メモリは128MB、ハードディスクは4GBを必要とする。
まず、ファイル共有サーバとしては、AppleShare IP、NFS、Samba、FTPに対応し、WindowsやLinuxなどあらゆるコンピュータに対応したと言ってよいだろう。また、ApacheによるWebサーバ機能があり、WebDAVの機能も統合されている。QuickTime Streaming Server 3や、WebObjects5の稼働環境も含まれている。電子メールについては、POP、IMAP、SMTPに対応したサーバ機能が利用できるが、これはsendmailなどの既存のソフトウエアではなく、Appleで開発されたもののようである。IPフィルタリングによるファイアウォール機能やDHCPサーバ機能もある。DNSやService Location Protocol(SLP)も利用できるが、DNSはBINDを使ったものとなっている。さらに、Mac OSのクライアントを集中管理などができるNetBootやMacintosh Managerのサーバ機能もある。ディレクトリサービスとしてはNetInfoやLDAPにも対応する。なお、そのほかのネットワーク機能はMac OS X 10.0と同等である。つまり、DHCPクライアントになる機能やPPPoEの機能、sshによるリモートシェルを利用したリモート管理などの機能も使える。
Mac OS X Serverはこうしたサーバ機能を、独自の管理ツールを使って、GUIのユーティリティで行えるというのが大きな特徴となる。管理ユーティリティは、従来のAppleShare IPのものに感じとしては近いと言えるだろう。管理ツールはリモートでも可能なので、離れたところやあるいは鍵のかかった部屋にあるサーバの管理も、デスクトップで行える。管理ツールは、Mac OS X/Server 10.0で利用できる模様だ。
現時点で正式にリリースされたMac OS X Server 10.0を使用していないので推測になるが、Sambaが日本語環境でも問題なく使えるかどうかが懸念されている。Mac OS XはUTF-8でファイル名をエンコードされていて、そのエンコードを含む日本語版Sambaがリリースされている。しかしながら、UTF-8のエンコード機能はSambaのもともとのリリースに含まれていないとか、日本語版のエンコード機能も完全でないなどの問題があり、Windowsクライアントから日本語のファイル名を使えるかどうかは予断を許さないところだと考えられる。
いずれにしても、インターネットで使われている標準的なサーバと同じ構成で、ユーザインタフェースはマックであるというOSが登場した。LinuxやFreeBSDなどはGUIも利用できるものの、サーバで使う場合にはターミナルでコマンドを打ち込むといった管理が基本となっている。そうしたサーバと機能的には匹敵するかあるいはそれ以上のものを持ち、使い勝手が良く管理のしやすいOSというのがMac OS X Serverの位置付けとなるだろう。もちろん、ワークグループなどLAN内のイントラネットサーバとしても利用可能な構成だ。一方で、Linuxなどは事実上フリーといった大きなメリットもある。利用者あるいはシステムインテグレータがMac OS X Serverに目を向けるかどうか、注目できると言えるだろう。

◇Apple Introduces Mac OS X Server
 http://www.apple.com/pr/library/2001/may/21osxserver.html

関連リンク:Mac OS X Server
カテゴリ:Mac OS X Server


WebObjects 5が出荷、開発や稼働をMac OS X/Serverで可能に

WebObjects 5が出荷された。価格は$699である。執筆時点では日本での販売価格や時期についてはアナウンスはない。WebObjectsは、Webサーバを利用して稼働させるアプリケーションを作成するために使われる。さまざまなデータベースエンジンに接続できるの特徴だ。データベースの利用を必要とするようなeコマースサイトや、業務アプリケーションなどに利用されている。WebObjects 4.5までは、Objective-CおよびJavaによる開発が可能であったが、WebObjects 5ではJavaだけとなった。また、開発したアプリケーションは純粋なJavaで構成されており、Java2が稼働するプラットフォームであれば原則としては稼働するようになった。また、4.5まではMac OS X Server 1.2などが開発・稼働環境であったが、WebObjectsでMac OS X 10.0で開発や稼働が行えるようになっている。なお、Objective-Cで作られたアプリケーションの稼働や継続した開発をMac OS X 10.0で行うために、WebObjects 4.5.1というバージョンも最近リリースされている。
WebObjects 5では、Mac OS XのDeveloper Toolsに付属するProject Builderをベースに、Webページの設計ではWebObject Builder、データベースのモデル作成にはEOModelerといったところが主要なツールとなっている。なお、開発を行うには、Mac OS X 10.0ないしはWindows 2000 Professionalを利用できる。稼働環境については、Mac OS X Server 10.0、Windows 2000 Professional、Solaris 8をサポートするとしている。データベース接続にはJDBC 2.0をベースに行う。また、Oracle 8iをサポートするデータソースとして紹介されている。WebObjects 5の期間限定版が、WWDC 2001の来場者には配布されている。すでに、いくつか試してみた人もいるようだ。仕様の上では、WebObjects 4.5とは等価ということになっているが、生成するページのエンコードを指定する部分の記述方法が変わっているなどの変化がある模様である。日本語のアプリケーションでは必ず使うメソッドだけに、日本語のアプリケーションをWebObjects 5に移行させたときには、多少ともソースの修正を必要とすることになりそうだ。日本での発売はもちろん、こうした情報も早く公開してほしいところだ。

◇Apple Ships Java-Based WebObjects 5
 http://www.apple.com/pr/library/2001/may/21webobjects.html

関連リンク:WebObjects
カテゴリ:WebObjects