第13回 - 2005/1/17
ビジネスの世界やあるいは学会などでは、プレゼンテーションといえば、通常は「発表」のことを指すのが一般的になってきています。情報の伝達を、その場にいる人たちを中心としたオーディエンスに対して行うのがプレゼンテーションです。もちろん、テレビで中継をしたり、ビデオ撮影により後から情報伝達が行われるような場合などもありますが、多くは会議などでの情報伝達を行うような場合をプレゼンテーションと呼んでいます。いずれにしても、1人あるいは数人から多くの人への伝達を行うようことと考えればよいでしょう。
プレゼンテーションが実際に行われるような場面はたとえば次のような状況です。プレゼンテーションを行う人も、対象も、千差万別ですが、いずれも、具体的な情報を誰かに伝えるという点では共通しています。
こうしたプレゼンテーションのやり方は、ある程度はパターンがあるのですが、見方によっては一定したものはありません。単に、プレゼンテーションをする人、つまりプレゼンター(プレゼンテータ−ではない)が口頭でだけ行うものもあります。配布資料を配ったり、あるいは伝達したい情報の要約を大きなスクリーンに表示したりもあるでしょう。ビデオなどの映像機器を駆使したり、あるいは商談などでは商品の実物などを実際に示しながらのプレゼンテーションが行われます。
場面によってどういうやり方が言いかということは、ある程度一定したものがありますが、逆にいえば、効果的にするために意図的にパターンを破るということもあります。いわば、「プレゼンテーションはこうである」ということが言いづらいのが実情でしょう。
こうしたプレゼンテーションを専業にやっている人もいます。イベント関係や広告関係だと、そうした専門家がいて、コンシューマに効果的にプレゼンテーションをやるということをビジネスとしています。
しかしながら、プレゼンテーションは専門家だけのものではありません。学生の場合、卒業研究の発表ということもあります。サークルなら、メンバー集めのために、サークルの活動内容や利点を説明することもあるでしょう。企業に入ると、何かと会議がありますが、その会議でプレゼンテーションを行うこともあります。また、社外の人に対して売り込みを行う場合にもプレゼンテーションが発生します。つまり、社会人なら誰でもプレゼンテーションの機会があるということになるでしょう。
プレゼンテーションにもいろいろなパターンがあり、すごく手をかけて立派なものをするということはありますが、通常はそれはプロの手によるものです。普通の社会人がプレゼンテーションの必要性が出てきたとき、次のようなニーズがあります。
こうしたニーズを満たす1つの有効な手段として、「プレゼンテーションソフト」というジャンルのソフトを使うことです。MicrosoftのPowerPointが代表的なソフトです。
プレゼンテーションのためのソフトとということで、機能的にはプロのプレゼンテーションにも耐えられるものになっていますが、それだけではなく、むしろ一般的な社会人のニーズに応えるソフトとして注目すべきです。プレゼンテーションソフトでは、
プレゼンテーションといえば、ビジュアル的な単語ではありますが、実際に提示すべき多くの情報は「文字」です。しかも、一般の文章ではなく、見出しあるいはそれに少し追加したような、要点をきっぱりと言い切る短いフレーズを利用します。こうしたフレーズを、ストーリー立ててうまく提示することにより、効果的なプレゼンテーションができるというわけです。
そして、プレゼンテーション時に提示する画面を、実に簡単に、しかもそれなりに見栄えよく作成できるというのがもう1つの大きな特徴です。手をかけてそれなりのものを作るということでは、忙しいビジネスマンは使っていられません。手をかけなくても、それなりものが作れるというのがプレゼンテーションソフトの大きな利点であり、実際に使われている理由です。
こうして作成したものを、パソコンを通じて提示することができます。パソコンの画面は、プレゼンテーションのための画面だけが表示されるようにコントロールされるので、やはり見栄えよくプレゼンテーションの画面をスクリーンに提示することができます。
また、スクリーンに表示するものと同じものを印刷することもできます。一般には、スクリーンに表示したものと同じものを、オーディエンスに配布するということを行い、数値などの客観的な情報をそこに書き込んでおきます。また、メモ欄付のあるいは追加情報を含めて印刷することもでき、より詳細な配布物をプレゼンテーションと連動して作成する機能もあります。
スクリーンを印刷することができるので、OHPシートへ印刷して、パソコンがない場面のプレゼンテーションを行うこともできます。また、OHPがないとしても、ある程度の大きさで紙に印刷しておけば、紙芝居的にプレゼンテーションができます。客先での商品説明では、そうした手法がよく利用されます。
プレゼンテーションソフトの大きな目的は、プレゼンテーション時にスクリーンに提示する「スライド」を作成することです。作成し、実際に画面いっぱいに表示することも行います。しかしながら、いきなりスライドを作成することも可能ではありますが、実際にはアウトラインという形態で内容を検討し、それをスライドという形式で表示するということ行います。
プレゼンテーションを実際に使うときには、アウトラインをまず使いこなして、そこで提示する内容を検討しつつ、プレゼンテーションの流れも見えるくらいになっておく必要があります。
そして、アウトラインと、実際にスクリーンに表示されるものがどう対応するのかということを理解する必要があります。テンプレートがどのように、アウトラインの特定の項目と絡み合うのかということを認識しつつ、アウトラインの内容を詰めて行きます。
全体的には以上のことを心がけながら、実際にPowerPointを利用すればよいでしょう。では、具体的な使い方をまとめておきます。
プレゼンテーションソフトも、ワープロや表計算と同じように、1つの文書ファイルで、1つのプレゼンテーションを記録するようになっています。まず、最初はプレゼンテーションの書類があり、必要に応じて保存するなどの作業が必要であることは認識しておいてください。
プレゼンテーションソフトは、アウトラインでの表示、実際のプレゼンテーション画面に近い形態での表示を切り替えます。どうすれば切り替えることができるのかを知っておいてください。
文書を最初に作るときに、テンプレートとして、既存のデザインを選択できます。これは後からも変更できます。最初は適当に選んでおき、内容に応じてその後に変更を加えてもよいでしょう。
アウトラインの画面では、項目を入力していきますが、Enterキーで次の項目に移動できること、Tabで階層を深くできること、Shift+Tabで階層を浅くできることをまず知っておきます。
それ以外は、テキストの編集と同じです。同一項目内で改行したいときには、Shift+Enterを押します。
項目の左のマークをドラッグすることで、移動したり、あるいは階層を変更することができます。
「スライドショー」メニューの「既定のアニメーション」により、現在のスライドのアニメーションを選択できます。
「スライドショー」メニューの「画面の切り替え」により、スライドが移り変わるときの効果を選択できます。
表やグラフを含むプレゼンテーションを作るときには、「新しいスライド」の機能を使い、スライドのパターンから、必要な形式を選ぶのが簡単。グラフやグラフィックスなどは、アウトラインとは独立して作成するのが手軽でよいだろう。
実際にプレゼンテーションを行う方法を知っておくと良いでしょう。
マウスクリックで、次のスクリーンに移動します。Escで中断します。最低限、これだけは知っておきたいところです。
マウスを動かすと、左下に何か表示が出てきます。ここをクリックすると、メニューが出てきていろいろな作業ができます。「ペン」を選択すると、プレゼンテーション上に、マウスで手書きで線などを書き込めます。
プレゼンテーションの制作では、ソフトをどう使うかという問題に加えて、プレゼンテーションの内容をどう構築するかという内容面のことを考慮しなければなりません。むしろ、内容をしっかりしたものに、それを分かりやすい構成にするということの方が、本来は重要なことです。コンピュータの利用から離れますが、そのことについても、ある程度解説しておきましょう。
内容を考えるとき、まずは基本となるデータなどの素材を集めることです。集めた素材はメモ書きでもいいのですが、アウトラインにランダムで乱雑でもいいので書き込んでおくという方法でも良いでしょう。ともかく、ないように入れたいものをブレーンストーミング的に抽出して集めます。
こうして集めた素材からストーリーを作っていくわけですが、大きく分けて2通りのやり方があります。1つは「演繹法」と呼ばれるもので、理由があって結論が導かれるという手法です。いわば、理路整然とストーリーが展開するというもので、正確に物事を伝えるような必要性がある場合には適しています。学会発表などの“堅い”世界でのプレゼンテーションはこちらが一般的です。ただし、一般にはインパクトに欠けます。
これに対して、「帰納法」といわれる方法があり、先に結論を言ってから、そのことを立証するような順序で進みます。そのため、全体と部分の関連がわかりやすくなり、結果的にはインパクトの強いプレゼンテーションになります。
ただし、いずれの方法でも、「起承転結」ということは忘れてはいけません。起承転結となると、通常は演繹法の特徴としても出されるのですが、全体の流れという意味では、帰納法でも起承転結が取られることもあります。ダイナミックに起承転結する場合もありますが、実際にプレゼンテーションするねたに合わせた起承転結が必要になります。
また、全体の流れの起承転結、帰納法、演繹法ということも重要ですが、その中の一部の流れにおいても、こうした手法があることを念頭において、シナリオを考えます。起承転結の「承」の部分だけで、やはり起承転結があってもかまいません。また、「転」の部分に帰納法を使って効果を高めるという方法もありうるでしょう。型にはまりつつも自由度を持たせる…そこがプレゼンテーションの見せ所でもあります。
演繹法 | 帰納法 |
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演繹法 | 帰納法 |
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プレゼンテーションでは、最後に「まとめ」が必ず必要です。できれば画面1つ、多くても2つ以内に、プレゼンテーションで行った内容のまとめを言って締めます。そうすることで、オーディエンスに対しての印象度は非常に高くなります。
また、これからプレゼンテーションで出て来る内容を最初にまとめておくということも必要になることがあります。帰納法とはまさにこのことだといえるでしょう。
最後のまとめ、最初の概要は、プレゼンテーションに限ったことではありません。ワープロで作成する文書でも、こうしたテクニックはうまく活用しましょう。
スライド画面の文章作成は簡単なようで難しいものです。作文ではあるのですが、コピーライト風でもあり、また見出しっぽい文書を作ってみるなど、テクニックはさまざまです。以下に、留意すべき点をまとめておきました。
その他、機材の使い方、パフォーマンスを含めた意味での話術、リハーサルや本番の運用など、プレゼンテーションではいろいろな要素が絡み合っています。
身近なプレゼンテーションに気を配ってください。特に、ニュースというのは、映像の自由度は高いということはありますが、プレゼンテーションとして非常に参考になります。字幕の出し方と、アナウンサーのしゃべりはまったく同一ではないわけで、そのあたりを分析的に見てもらうと、かなりいい勉強になります。
日経文庫「プレゼンテーションの進め方」山口弘明著(日本経済新聞社、750円?)
ちょっと古い本で、プレゼンテーションソフトについては何も書いていませんが、プレゼンテーションはどうあるべきなのかということが実例を通して分かりやすく、コンパクトにまとまっています。
授業で使ったプレゼンテーションのファイルをダウンロード(右ボタンクリックして、ファイルとしてダウンロードするのがいいでしょう)
PowerPointには、プレゼンテーションをHTML形式に変換する機能があります。昨年の授業で使ったプレゼンテーションをそのままHTML形式に変換してみました。