2000年3月17日にMac OS Xのフォント環境についてのブリーフィングがアップル本社でプレス向けに開催された。フォント関係については、2月のExpoの時期に概要が発表がされているが、それを受けてより理解を深めるための説明会ということだ。発表内容では詳細な内容が伝わりにくい面もあり、それを解きほぐすための説明会だとも言えるだろう。 まず、「文字」「字体」「字形」を区別すると言う説明があった。「文字」とは、ある文字が印刷されていようが、声で出されたものであろうが、伝達できるものであり、情報交換が可能なものとして位置付けた。つまり「高」も「はしご高」も同じ「文字」なのである。文字セットとしては、従来はJIS X0201、JIS X0208を加えた約6,900文字だったが、Mac OS Xでは、JIS X0213:2000(2000JIS)に含まれる約11,200文字をベースにしている。 一方、「字体」としては、同じ文字ながら表示が違うものがあることを考慮した区別である。どちらかといえば、DTPなどのプロユースで字体を考慮することが多いと位置付けている。「高」も「はしご高」は「自体」が違うということだ。これまでのMac OSではAdobe Japan 1-2(AJ 1-2)に基づく8,700字体を採用していたが、Mac OS XではAdobe Japan 1-4(AJ 1-4)という次のセットをベースにしている。AJ 1-4については、現状では発表はされていないが、約17000の字体セットからなる。最終的にMac OS Xに入るとされている17,000文字のセットとは、正確には「17,000字体」であるというのがポイントだ。しかしながら、開発中の製品だけに、数字はあくまでも目安であるとのことだ。最終的にAJ 1-4とJIS X0213との差分を入れ、さらに電算写植で使われる文字も入れる。 Mac OS Xのフォント機構としては、OpenTypeがサポートされることが発表されている。グラフィックスエンジンのQuartsの下位レイヤとしてOpen Font Archtectureがあり、それにフォントフォーマットごとにプラグインするものとして、True Type scaler、Tyep 1 scalerが組み込まれる。新たなフォーマットが出てきたときにも対応できるような仕組みとなっているが、これはMac OSでもすでに採用されたアーキテクチャだ。OCF、CIDフォントに続く次世代のフォントフォーマットしてOpenType(Adobe、Microsoftによって制定された)を採用した。OpenTypeには昔のQuickDraw GXでのアイデアが活かされていて、技術のベースとしてはアップルのものであると言えるそうだ。OpenType/CFFフォントとして提供され、Apple Acvanced Typography(AAT)とOpenType Layoutの両方のレイアウトテーブルを組み込む。 さらに、UNICODEの枠組みをサポートする。文字セットとしてはJIS X0213をサポートするというのが基本となる。さらに、UNICODEのコードを持たない字体や異体字のサポートは、OpenTypeやAATの仕組みでサポートをする。 プリント環境についても説明があった。現在はプロフェッショナルの世界を中心としてプリンタフォントを利用することが常識化しているが、プリンタフォントの必須化をやめるというのがMac OS Xの目的としている。Macintoshにフォントが組み込まれてあれば、プリンタの種類を問わずに文字の出力が可能なことを目指している。グラフィックスとしてはPDFをイメージングモデルとした、新しいプリントアーキテクチャを提供する。それに基づいたプリンタをサポートする。 搭載されるフォントは、大日本スクリーンの「ヒラギノ」ファミリの、ヒラギノ明朝W3、W6、ヒラギノ角ゴW3,W6,W8、ヒラギノ丸ゴW4の6書体を搭載するが、ヒラギノW8は見出しなどで使うことが中心であると考えて、AJ 1-2のサポートになり字形数は少ない。デザインが美しく統一性があるのものとして提供している。フォントについてはアウトライン化ができないなどの制限は一切ないようにする考えだ。 コンシューマ向けには「人名や地名で使えなかった文字が使える」「フォントの使い分けがやりやすく効果が高い」というメッセージで伝える。後者は、現状のMac OSでの同じような字体のフォントが含まれていることからの対比として示されるものだ。プロ向けには「電算写植と同等の文字数と品質」「強力なグラフィックスと高度なラインレイアウト機能」「プリンタフォントを必要としない」というメッセージで使える。 Q&Aでは、現在使われているフォントがMac OS Xでは旧フォントになるがそれが使えるかということが質問された。旧フォントもなんらかの形で使えるようになるという考え方だ。異体字を含むUNICODEテキストの異OS間での交換は、独自の拡張部分を含めると100%完全にはならない。だが、そういした情報のやりとりを必要とするユーザ間では問題点も明確になっているので、問題はないと見ているそうだ。プリンタドライバには、現状のLaserWriter的なものはMac OS Xには搭載される予定だとのこと。ヒラギノフォントはPDFに埋め込み可能であることも明言された。Mac OS Xのシステムフォントについては現状では何も言えないということで、Osakaになるのかどうかということも言えないとのことだ。現状のシステムに付属するモリサワフォントがMac OS Xに含まれるかについても言えないということだ。UNICODEベースで文字処理を行うと、たとえば電子メールにWindowsでの丸数字といった98外字などといわれる文字があっても、Mac OSではきちんと丸数字に表示されるということは原理的には可能であることも分かった。これは、現状のMac OSでもそうだとのことだ。 |