5月11日の日経産業新聞第一面に、Javaで作られたワープロソフト「一太郎Ark」をオープンソース化することが報道された。ジャストシステムが正式に発表したわけではなく、日経産業のスクープのようだ。正式な発表ではないため、新聞の記事からの情報のみになるが、MacintoshのJavaに与える影響などを考えてみたい。 まず、最初に押さえておきたいのは、一太郎Arkは一太郎という名前が付いているが、Windows版一太郎を移植したものではなく、機能的にははるかに低いものだ。たとえていれば、AppleWorks 6のワープロ機能よりも、一太郎Arkの方がまた機能的には低いと言える。一太郎Arkは、SwingのHTMLエディタのコンポーネントを中心に、段落設定などの付加属性を加えた程度のワープロだ。「一太郎のJava版」ではないことはまず認識しておく必要がある。一太郎Arkが最初に登場したときにはMac OSでも動作させていたが、パッケージとして販売されたものはJava2対応になっており、現状のMac OSでは稼動しない。 一太郎Arkのオープンソース化により、ジャストシステムがMac OSへのきちんとした対応をしなくても、誰かが取り組んで、ドラッグ&ドロップや文書のダブルクリックなどを含むMac OSへの適正化が行われるという期待は高まる。また、Javaのフレームワークは文書ファイルという視点のクラスがほとんど用意されていない。もちろん、一太郎Arkのソースの出来栄えにもよるが、文書ファイル処理を巻き込んだアプリケーションフレームワークを抽出するということも考えられることだ。 一太郎ArkなどのJava製品でXMLへの進出を狙っているジャストシステムだが、XML関連のクラスはすでにいろいろな手段で利用できる。ソリューションの1つとして一太郎Arkを見ることはできるが、開発の素材になるものとしてはそれほどメリットは感じないのではないだろうか。データ形式としてXMLを使う場合での開発補助ツールとしてはまったく最適化されていない。また、DOMの参照アプリケーションとしては利用できるかもしれないが、そうしたインタフェースを一太郎Arkのソースが持っているかどうかに関わってくる。すでに、XMLに最適化された各種のツールが出始めた現在では、そうしたフォーカスをきっちりと取った製品に強みがあると考えられる。XMLの文書ファイルが一般化しはじめたときには先行のメリットが見えるかもしれないが、その頃にはWebブラウザが完全対応するだろうから、やはりジャスト製品を軸にXMLが展開するとは考えにくい。 オープンソースではたしてビジネス的展開が可能なのだろうか? 日経産業の記事ではあいまいな書き方で、お金の流れが描かれていない。おそらくはジャストシステムの方針に明確な点がないのであろう。Linuxで大きくビジネスをしているレッドハットなどの例もあるものの、リーナストーバルズ氏自身ですら、ある意味ではLinuxを専業にしているわけではない点からも、オープンソースビジネスの難しさは容易に想像できる。 ジャストシステムは一太郎ArkなどのJava製品を業務システム開発の核になるものとして位置付けたいと考えているようだ。しかしながら、ロータスがeSuite DevPackをやめたという事実を考えても、コンポーネントとしてのビジネス展開の難しさは浮き彫りにされている。確かにオープンソースは流行っている。しかしながら、明確なビジネスビジョンがある企業が成功している。オープンソース化を通じてそうしたビジョンを描くことができるようになるかが大きな鍵となるだろう。 |