タイトルジャストシステムが個人向けASPサービスを今年度に開始カテゴリーJava, サービス
作成日2000/6/6 10:9:15作成者新居雅行
ジャストシステムは、インターネットを経由して、さまざまなサービスを提供する事業を今年度に開始する。ソフトウエア開発会社、特にパッケージ販売をしている会社は実行プログラムをユーザの手元に届けるというのが1つのパターンだったが、そうしたビジネスモデルを大きく変革するものだ。つまり、ユーザはネットワークを通じてサーバにあるソフトウエアあるいはその場でダウンロードして利用できるソフトウエアを使う。そのソフトウエアをサービスとしてユーザに提供する。一部の企業ではその動きもあったものの、パッケージソフトの大手であるジャストシステムが、こうした動きに本格的に取り組むというのは、ソフトウエア業のある種の転換を象徴していると言えるだろう。同社の売上高はピーク時には300億を越すが、2000年3月決算期で169.4億円となっている。このサービス事業で2003年には150億の売上を見込んでいるというのは、業務の柱にすえる意気込みであることの現れであると言えるだろう。なお、このサービス自体の名称はまだ未定であるが、個人向けAPSサービスとしておく。APSサービスは企業向けに急速に発展してきているが、ジャストシステムは自社開発ラインナップから個人あるいは家庭向けソフトに強みがあると見ているのだと思われる。サービスは個人向けであることを強調していた。
ジャストシステムの個人向けAPSサービスは、「グループコミュニケーション」「パーソナルビジネス」「ホームエンタテイメント」の3つに分類されており、それぞれ、順次今年度中にサービスを開始する。グループコミュニケーションでは、パーティの開催をお知らせして出欠を取るような作業を、Webブラウザ上で行えるようなデモでその一端を示した。お知らせはメールで行くが、出欠をWebページで簡単に取ったり、掲示板機能と連動してイベントの打合せを行うようなことができる。こうしたサービスはメーリングリストを中心としたフリーのサービスが存在するが、より目的にあわせた形式のアプリケーションをWebで提供する点で差別化されている。「パーソナルビジネス」では、ワープロや表計算などのアプリケーションをWebベースで提供する。作成したデータは、サーバ側で管理する形態となり、インターネット接続環境があれば、どこからでも同じワーク環境が実現するというサービスだ。「ホームエンタテイメント」は年賀状作成や家計簿といったホームユースのサービスを提供する。これらのサービスをパソコンからはもちろん、iモードやPDA機器などあらゆる機器から利用できるようにサービスを構築するとしている。
もちろん、Web上サーバでのさまざまなスクリプトやソフトウエアを構築しているが、クライアントサイドの実行環境として、Javaを採用している。ただし、現状では、対応するJavaのバージョンについては明言できないということだった。なるべく多くの機器で利用できるようにするのは大目標のようだ。また、デモンストレーションでは、デモはWindowsのInternet Explorerで行われていた。デモで使用していた画面も参照していただきたい。なお、パソコンについても、「対象機種」についての限定は行っておらず、基本的には、Mac OSでも利用できるサービスと考えてよいだろう。ただし、技術的にすべてのパソコンで稼動するということはありえないが、利用できるサービスかどうかは、サービスの開始時点で明らかにされるものと思われる。Javaのアプレットがあるとすると、Mac OSでは微妙な点があるのはマックユーザにはよく御存じのところだろう。
個人向けAPSサービスで提供する1つ1つのサービスについては、すでにフリーのものが存在し、そうしたサービスと競合する。もちろん、さまざまなサービスが1つにまとまっているというメリットは大きいが、サービス自体の一部を無償、ある程度以上を有償といった階層付けを対抗上行うことになる。たとえば、ディスクスペースは一定量を無償にしながらも、追加領域の利用で有償にするなどが検討されているようだ。また、広告などさまざまな収入源を利用して売上を確保するという。2003年の150億の売上目標では、ユーザは500万人と見ている。単純に見て、1人から年間3000円となるが、広告などのモデルを考えると、その半分あるいはそれ以下をユーザから徴集するというものになるのかもしれない。
いずれにしても、アプリケーションをネットワークで提供するという、ソフトウエア開発会社のビジネスモデルを大きく変えるものだ。そして、ジャストシステムは、1999年発売のジャストホームなど、家庭向けのソフトウエアでは、目的指向のユーザインタフェースを採用している。まずアプリケーションを起動するのではなく、ユーザはやりたいことを選択していき、そこで適切なアプリケーションやテンプレートを選択するという具合だ。こうしたテイストをネットワークサービスに持ち込み、ホームユーザ層を狙うのである。
また、こうしたサービスは、サーバサイドあるいはネットワーク経由でダウンロードするソフトウエアの開発が必要になり、ソフトウエア開発会社の出番である。また、目的指向でサービスを組み立てるということは、1つの大きなソフトウエアではなく、単機能のソフトウエアを数多く作ることになる。サービス提供については、ジャストシステム1社ではなく、アライアンスとして、他社との協業を積極的にすすめるとしている。

◇自分独自の機能メニューを構築できる。右側には提供されるサービスが並んでおり、それを左側の自分のメニューに登録するようなイメージで、自分の作業環境を構築できる
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◇ToDoリスト、電子メール、スケジューラを1つの画面に組み合わせるようなカスタマイズもできる。こうしたアプリケーションを、個人のニーズに合わせてネットワーク経由で提供する
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◇グループコミュニケーションサービスの画面。グループを作る点では他のサービスにもあるが、幹事向けのさまざまな機能があるなど、目的にマッチした機能が提供される
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