タイトル【レビュー】新登場のメールソフトNusus Email(続き)カテゴリー電子メールソフト
作成日2000/7/14 19:36:52作成者新居雅行
一方、メールの送信はかなり独特な操作体系だ。いくつかの操作方法があるが、1つはエディタなどで文面を作成しておき、その文面を選択し、常に表示されているパレット上にドラッグ&ドロップすることである。文面の最初に「To: 」に続けてメールアドレス、そしてその後に本文を記述しておき、それらのテキストをドラッグ&ドロップすることで、即座にメールは送信される。文面は、テキストのドラッグ&ドロップができればいいので、たとえば、スティッキーズで書いてもよい。ドロップするパレットは、アクティブなアプリケーションが何であろうと常に手前に出ている。
◇テキストをパレットにドラッグ&ドロップでメール送信
 
(左上にあるのがNisus Mailのパレットで、スティッキーズで文面を作成して、そのテキストをパレットにドラッグ&ドロップしているところ)

なお、あらかじめ送信者を登録しておいて、その送信者に対してメールを送ることもできる。パレットをクリックすると広がって、登録した送信者ごとにアイコンが用意され、そのアイコンにテキストをドラッグ&ドロップする。ただ、広げたパレットはサイズ変更ができないなどちょっと使いづらい。また、広がったパレットのアイコンをクリックして、その送信者宛にメールを作成するウインドウが表示される。また、特定のフォルダにテキストファイルを作成し、その記述に従ってメールを送信するということもできる。送信方法のバリエーションはいくつもある。
テキストの冒頭にToがない場合でも、メールの送信処理に入る。Toがない場合には、パレットが広がり送り先をアイコンでクリックして指定する。ファイルを送信したい場合には、ファイルをそのままパレットにドラッグ&ドロップすればよい。そうすると、パレットが広がって送信先を指定し、その後に文面を作成するウインドウが表示される。日本語のファイル名もいちおう送信できた。
◇パレットが広がり送信先を指定する(実際にはパレットが画面いっぱいに広がる)
 

しかしながら、送信時の件名については自動的に設定されるようだが、その設定部分に問題があある。本文の冒頭の何文字かを件名とするようであるが、Nusus Emailで送る段階ですでに文字化けをしている。また、文字コードがJapanese(Auto Detect)に指定されているときには件名部分はShift JISコードをQuoted Printableでエンコードしており、メールの形式としてはあまり見ないタイプだ。しかしながら、Outlook Expressではきちんとデコードできた。本文については、初期状態ではQuoted Printableでエンコードするため改行は挿入されないで送信される。その設定を解除すれば、76バイトごとに改行を入れるようだが、そのときShift JISコード、つまり8ビットコードとして送ってしまう模様だ。結果的に、受信した側で文字列が欠けるなどの結果になってしまった。また、ヘッダの日付部分に時差の記述がないなど、送信するメールの形式自体が独特である。
送信時のメールのエンコードの指定は最初はJapanese(Auto Detect)となっているが、選択肢としてはJapanese(ISO-2022-JP)もあり、それに指定してみた。それでも本文の文字化けが受信側で確認されることもあった。件名はISO-2022ながらQuoted Printableでエンコードされている。

以上のように、受信については概ね問題はないものの、送信するメールの形態がやや独特であり、受信側の設定や、経路上でのMTAでの変換処理によって正しく送信されない場合があることから使用には注意が必要だろう。設定を工夫する必要があるのかもしれないが、それではメールソフトとしてはちょっと危険なような気がする。きちんと日本語文字列の送信などに対応することを確認してから利用するのが良さそうである。

なお、エディタを使ったり、1つのメールを1つのファイルに保存するという発想は自体は決して新しいものではなく、むしろ古くからある。UNIXの世界では、mhというコンソールで動くエディタベースのメール環境があった。パソコンのメールソフトではパソコン自体の処理能力の問題や、あるいは1ファイルの占める最低容量がディスク容量に伴って増大した時期に、1つあるいはフォルダごとなど、複数のメールを1つのファイルにまとめるという形態が定着した。しかしながら、WindowsもMac OSも現在のディスクフォーマットでは、最低容量が4KB程度と十分に小さく、1メールを1ファイルに押し込むことでも効率はさほど悪くはならないまでに至っている。Nisus Emailが「新発想」と呼べるのはむしろ、送信自体をドラッグ&ドロップでできるという、Mac OSの機能を使った点であると言えるだろう。
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