タイトル【小池邦人のプログラミング日記】2001/2/26<Expo/Tokyo 2001で最新Mac OS Xに触る>カテゴリーMac OS X, 小池邦人のプログラミング日記
作成日2001/2/27 14:53:24作成者新居雅行
今回は、NibベースCarbonアプリケーションの開発の話しを一回休憩し、MACWORLD Expo/Tokyo 2001のAppleブースでデモされていた最新ビルドのMac OS Xの印象について述べたいと思います。

展示会場のAppleブースにはMac OS Xをデモするための専用コーナーがありました。大きな丸テーブルに5〜6台のPowerMac G4 とシネマディスプレー(22インチ)の組み合わせのデモ機が設置されており、Mac OS X専門の担当者が来場者の質問に応じてデモを行うと言う形式を取っていました。ただし「触らせてください」と頼めば、かなり自由に操作をさせてくれましたので、現在のMac OS Xの状態を知るのにそれほど厳しい規制は無かったようです。たま〜に、担当者が留守になるデモ機もあったりして(笑)、そうした時には1人でかってに操作できたので(本当はダメだったかも?)、パブリックβ版からの改善点をあれこれと確認することができました。

デモされているMac OS Xのビルド番号を調べてみると「4K64」となっていました。驚いたことに、これは、USのリークサイトなどで最近話題に上がっている「4K56」や「4K60」よりも新しいビルド番号です。きっと、現場では恐ろしいほどの急ピッチでビルドの更新が進んでいるのでしょう(でないとマズイのですが...)。また同時に、JEditやATOK14などのMac OS X対応アプリケーションや、日本語化されたInternet Explorerなどの動作確認も行うことができました。会場内では、Appleブース以外でもMac OS X用アプリケーションがいくつかデモされており、なかでも私を安心させたのは、プリンターやFireWire HDなどのMac OS X用ドライバが幾つかデモされていたという事実です。

パブリックβ版と比較したかった点は、まずは安定性の改善、次にパフォーマンスの改善、それからユーザインターフェース回りの改善についてです。また、パブリックβ版を利用したユーザからの大量のフィードバックに、Appleがどの程度答えられたのかについても注目してみました。安定性が向上したかどうかは、長期間使用しているわけではないので正確な判断はできません。ただし、この点に関してはパブリックβ版でもそこそこ大丈夫でしたので、それほど心配する必要はないでしょう。デモ中のファイルコピーやネットワークアクセスでトラブルが発生している現場には遭遇しませんでした(ATOK14はたまに落ちていたそうですが...)。目に見えて分かることは、今回のバージョンではClassic環境の安定性や信頼性がかなり向上していた点です。デモを行ってくれた担当者も、この点は強調していました。これは、Mac OS Xと連動するClassic環境がMac OS 9.1に変更された事が大きく寄与しているのかもしれません。

次に操作してみて一番驚いたのは、体感パフォーマンスの向上です。多分、描画ルーチン(Quartz)やビデオカードドライバ(アクセラレータ)のチューニングが進んだ結果でしょう。何をするのにも少々待たされていたパブリックβ版での「イライラ感覚」は、ほぼ解消されています。Carbonアプリケーションの起動時間も半分ぐらいになっています。Finder回りの動作もキビキビとしていて、同マシンでMac OS 9.1を利用している感覚に、かなり近づいたかもしれません?使用されていたデモ機は、500MHz Dual CPUのPowerMac G4 でした(搭載メモリ容量はチェックするのを忘れた)。Dual CPUマシンなのですが、Finderなどの処理スピードは、背後に負荷が大きなプロセスが無いかぎり、Single CPUマシンとほぼ同等だと考えて良いでしょう。改善されたパフォーマンスとシネマディスプレーの画面の広さにより(この要因も大きい)、Finderやデスクトップ回りの操作感は実に快適でした。Appleの担当者の話では、Dual CPUによる負荷分散や、Classic環境で多数の旧アプリケーションを起動した時のパフォーマンスにも、大きな改善が見られるそうです。試しにサンプルのMovieファイルをシネマディスプレー全体に拡大して再生してみましたが、コマ落ちは目立ちませんでした。QuickTime(多分QuickTime 5)のパフォーマンスに関しても、パブリックβ版から大きく進歩していることは間違い無いようです。

以前に書いたかもしれませんが、私はMac OS Xの使い勝手(ユーザインターフェース回り)に関しては、あまり心配していません。なぜなら「不便」な箇所には「商売の種」があり、それを埋めるためにサードパーティが存在しているからです。Mac OS 7、8、9に関しても、そうした歴史をたどってきました。FinderやDock等の最近の改良については、Jobsの基調講演でもハデに宣伝されていますので詳しい説明は省略します。しかし、それ以外の細かい点についても、ユーザからのフィードバックが生かされている箇所を発見することができました。例えば、Dockを隠して利用している時、以前のバージョンだとマウスカーソルがモニターの下に降りた瞬間にDockが反応してポップアップしていました。よって、ウィンドウの下方を操作する時に、Dockの過敏な反応が邪魔になる場合が多々あったわけです。今回のバージョンでは、Dockが反応するまでの時間に少し余裕が持たせてあり、モニターの下に一瞬マウスカーソルが接触しただけでは、Dockはポップアップしてきません。非常に些細な事なのですが、このような地道な改善の積み重ねが、ユーザの操作感に大きく貢献するという良い例ではないでしょうか?

期待してはいませんでしたが、やはりDockを切るオプションや、それをモニターの横側に並べるオプションは存在しませんでした(涙)。モニターは横の方が広いし、メニューバー、ツールバー、ツールパレットなどからのマウスカーソルの移動距離を考えても、横に列べたDockには利点があると思うのですが?せめてDockにパッチを当てる箇所ぐらいは残しておいもらえると、どこかの有志が実現してくれる可能性があります(笑)。また、今回からマウントされているボリューム(ハードディスク)アイコンがデスクトップ上に表示されるようになりました。フォルダのマウスクリックで新規ウィンドウがオープンするように設定しておけば、新Finderの操作感覚も旧Finderのそれにかなり近づいてきています。そんな中で私が一番喜んだのは、新Finderのウィンドウタイトルに「Finder」とではなく、ちゃんとオープンされているフォルダ名が表示されるようになったことです。(あっ、新規フォルダのショートカットがCommnd+Nに戻ったかどうかを確認するのを忘れていた)

旧Mac OS には存在していたのに、Mac OS Xでは実装されていない(もしくはする予定がない?)機能としては、デスクトップ上の「ゴミ箱」、Appleメニューへの起動項目の登録、ポップアップウィンドウ、ポップアップフォルダ、フォルダやドキュメントアイコンのカラー指定、アプリケーションスイッチメニュー等があります。探せば、まだまた出てくると思われますが、このうちの幾つかの機能はDockで代用して欲しいというコンセプトなのでしょう。しかし、無くなったのが納得できない機能もあります。例えば、デスクトップにゴミ箱が置けないのは、どのようなコンセプトからそうなったのかを担当者に尋ねてみました。すると、「アプリケーションで何かを削除するち処理を、Dockのゴミ箱に入れるという操作方法で統一したいのでは...」という返事が返ってきました。

つまり、画面いっぱいにウィンドウがオープンしているアプリケーション(iMoveやiDVDなど)では、デスクトップ上のゴミ箱は隠れてしまい利用できないので、ゴミ箱をDockに入れたと言うわけです。ゴミ箱の位置がかってに変化するのは使いづらいとツッコミを入れると、「新Finderのツールバーにはカスタムでゴミ箱が付けられるので、それで代用できるかも」という回答でした。しかし、家にひとつしかゴミ箱がないのも不便だし(笑)なによりMac OSらしくなく、古いユーザが不安に感じるでしょうから、デスクトップにゴミ箱はぐらいはあっても良いのではないでしょうか?それから「あれだけFinderのカスタマイズができるようになったのに、フォルダやドキュメントアイコンのカラー指定ができなくなったのは何故?」と尋ねたところ、「それは私にも謎です」という答えが返ってきてしまいました(涙)。
(続く)
関連リンクオッティモ