タイトルBrowsing Mac OS X》Mac OS Xの現在の姿は「プロシューマー向け先進OS」カテゴリーMac OSテクノロジー, Browsing Mac OS X
作成日2001/3/24 16:27:51作成者新居雅行
Macintoshの歴史にはいろいろな節目があった。中でも、68kからPowerPCへの大転換は古いユーザなら記憶に留めているだろう。その時は実はシステム的には変わりなく、一般ユーザにとっては何を騒いでいるのか意味不明だったかもしれない。もっとも、そこで転換をしなかったら、Macintoshの進化は止まっていたかも知れないのだが…。そして、今回のMac OS Xの登場は、実はPowerPCの時以上の転換点でもあるのだ。PowerPCのときはアプリケーション環境的には変更はなかったため、互換性に微妙な問題はあったものの同じアプリケーションが使えたのでそれほどのこともなかった。しかしながら、Mac OS Xは違う。Classic環境が用意されているというものの、Carbon対応で行くにしても、Cocoaを使うにしても、Javaだとしても、デベロッパーに対しては大なり小なり「ソフトウエアを作り直す」という大きな開発コストを強いることになるからだ。もちろん、そのために費用はかかるが時間もかかる。結果的に、Mac OS Xがユーザの手に渡る時に、必ずしもユーザが使っているアプリケーションがMac OS Xにネイティブ対応するということは実現しないのである。だが、「アプリケーションがないからダメ」と決めつけて良いものだろうか?
AppleのCEOのスティーブ・ジョブズ氏は、2001年夏ごろに、Mac OS Xのピークを持ってくるといった意味の発言をしている。つまり、プリインストールの始まる時が本来のスタートアップだという意味にも解釈できる。個人的な見解であるが、2001/3/24に発売されたMac OS X 10.0は事実上の「拡張デベロッパーリリース」であると感じている。だけど、デベロッパーだけがある意味での供給者ではない。熱心にMacintoshを使うユーザも市場を牽引する力をあるとAppleは考えているようだ。その意味で、開発者だけでなく、積極的なユーザを巻き込んだ展開に入る時期が必要だと考えての今回のリリースだと考えるべきだろう。すべての状況が固まってからリリースするのでは、変化の激しい時代には乗り遅れる。むしろ、Appleとして積極的に変化をつくり出すという意図が見えてくる。
アプリケーションや対応製品が不足ぎみという状況については、アップルコンピュータでMac OS Xのマーケティングを担当する櫻場氏は「それはどうしても仕方ないことですし、時間が解決するものだと考えています」と話す。その意味では現状ではMac OS Xという環境自体の未成熟さは認識していると言えるだろう。そして、「すべてのユーザに対してMac OS Xに変えてほしいとは今の段階では勧めることはしません。むしろ、状況が安定してきてからアップデートした方がいいユーザも多いことも理解しています。その意味ではそうしたユーザの方々には夏以降にアップデートされる方がメリットは大きいでしょう」とは話す。つまり、すべてのコンシューマ向けにリリースされたのがMac OS X 10.0ではないということだ。その意味で、個人的な見解であるが、Mac OS Xは今現在はプロシューマ向けOSであると感じた。もちろん、DTPユーザなど、状況的にMac OS Xに変更できないユーザもプロシューマに含まれるのだが、いずれにしても、まずはコンピュータ技術に詳しい人から使いはじめることで、環境の整備に向かうという方向性を持たせたいようだ。
Mac OS XにはDeveloper Toolsが添付されている。これにより、Mac OS X対応アプリケーションを開発することができるのだ。Public Beta以降も、無料でなることができるADC Online会員ならダウンロードできたとは言え、パッケージにCD-ROMとして開発ツールをつけることにはさまざまな見方もできるだろう。この件については「純粋に開発者層を広げたいのが1つですが、UNIXをコアに持つところから今までのMac OSとは違った領域の人たちからの注目も集められないかと考えました」と櫻場浩氏は話している。「そのためにも、製品としてMac OS Xを出していることが重要で、デベロッパーやユーザからのニーズやポテンシャルを集め、そうした声を反映するということが今必要なのです。」特にPublic Betaで行われていたフィードバックの効果を高く評価しているそうで、同じように今後もフィードバックをもとにした機能の改定を行う考えだそうだ。「コアなユーザの方々にはどんどんとたたいて欲しいと思います。そういう人たちに引っ張って行ってもらいたいと考えています」とも話している。
Mac OS Xの正式発売によって、フィードバックが終わったわけでもなく、開発が終了したわけでもない。Appleはまだまだこれからもユーザの意見を集めて、よりニーズにマッチしたOSに機能アップさせようとしている。Mac OS Xはこれからも進化するOSであり、その鍵はMac OS Xを使うユーザにもあると言えるだろう。
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