Mac OS Xのネットワーク機能は、ちょっとおおざっぱな言い方となるが、インターネットを前提にしたシステムと言ってよいだろう。Mac OSでも今ではインターネットをびゅんびゅんと楽しんでいるわけであるが、やはり後から追加した機能であった。MacTCPなどと言えば懐かしんでもらえるかもしれないが、当時主流だったモデムによるインターネット利用には、サードパーティが作ったFreePPPを使ったりもした。後に、Open Transportやリモートアクセスとしてシステムでしっかり対応してきていたが、System 7系列時代はいろいろなソフトを寄せ集めてのインターネット利用だった。もっとも、その時代にすでに「Internetスタータキット」として、設定を簡単にする機能を提供していたことは特筆すべきことなのであるが、数年後、同様な機能をしっかりWindowsは取り込むことになる。とまあ、昔を懐かしんでないで、Mac OS Xのことに話を移そう。 Mac OS Xの前に、Mac OS 9でのネットワーク機能を見てみよう。基本的にはコントロールパネルで設定はすべてできるので、後は必要なパラメータを入力するだけだと言えばそれまでだが、もちろんアシスタントを使って設定しても良い。むしろ、アシスタントをうまく使うことで、環境設定マネージャとの連動をうまく取るというのがモバイルをしている人では1つのノウハウにもなるとは思うが、そこまでをMac OSの機能だけでスマートにやるのもちょっと難しいことになってしまう。環境設定マネージャについてはいろいろな評価はあるかとは思うが、設定がややこしいのと手作業の面倒くささはあるわけだ。しかしながら、動作自体はまったく問題ないと考える。ただ、Ethernet接続やあるいはAirMacによる利用はシンプルにできるとは言え、モデム接続やあるいは携帯電話接続となると、あちらこちらに設定ポイントがあって大変だったと言えるだろう。 一方、Mac OS Xでは、そうしたネットワークの設定は、システム環境設定の「ネットワーク」というパネルに集約されたため、作業自体もやりやすくなった。しかしながら、もっとも大きな変化は、ネットワークの接続先を切り替えなくても住むようになった点がある。Mac OS 9では、TCP/IPコントロールパネルでEthernetを選択すると、内蔵のEthernet以外でのインターネットアクセスはできなかった。モデムで接続するには、TCP/IPコントロールパネルの設定は必ず変えないといけなかったのである(もちろん、作業環境マネージャのコントロールバーでワンタッチの切り替えはできるのではあるが…)。そうした、Mac OS Xのネットワークと、今はまだ完全には実現できていないモバイルの話をからめて、今後の使い方も含めて検討をしてみよう。
まず、Mac OS Xのシステム環境設定にある「ネットワーク」を見てみよう。ここに「場所」というポップアップメニューがあり、「自動」が選択されている。そして「設定」には3つの項目と「設定」という項目が見えている。
□システム環境設定にある「ネットワーク」
まず、基本的な概念として、ネットワーク設定をいくつも記録して切り替えるという機能がある。それが“場所”なのである。「自動」という場所は、インストーラによって自動的に作られるものだ。その1つの場所について、ここでの「設定」ポップアップメニューにあるいくつかの“ポート設定”が定義できる。ポート設定は複数定義できる。数台にインストールした結果から、どんなマシンでも、「内蔵Ethernet」「内蔵モデム」というポート設定は必ず作られるようなのだが(モデムのない機種でも作られるようだ)、AirMacカードがインストールされていれば「AirMac」というポート設定も作られる。 ちょっとややこしくなるが、この1つの「ポート設定」は、物理的なインターネットの利用窓口である「ポート」を利用する。だから、ポート設定とポートは対応するものであるが、1つのポートを複数のポート設定で利用することも可能であるし、また、どのポート設定でも使っていないポートがあってもかまわないのである。 インストール時には、利用できるポートと同じ名前のポート設定が1つずつ作られると考えればよい。つまり、設定の受け皿を自動的に作ってくれるので、あとはその中の設定値をユーザごとに合わせて設定してくださいということになるのである。 なんかわざと難しく説明しているみたいにも思えるのだが、モバイルを効率的に行いたい人は、このあたりの関係を理解してもらうと、後の説明もわかりやすいだろう。 いずれにしても、Mac OS Xでは、複数あるポート設定のどれかを使うようにアプリケーションは動作する。接続が確立されているポート設定があれば、それを使うのである。接続ポートを調べる順序についても指定することができる。だから、Mac OS 9のように、基本的には「切り替える」ということはしなくても、そのときに使えるインターネット接続手段を自動的にアプリケーションは使うようになっているのである。
ところで、Mac OS Xでモバイルというのが現実的ではないというのはどういうことかと言えば、携帯電話を接続しようがないのである。携帯電話のインタフェースはたいがいはPCカードないしはUSBケーブルだ。いずれもモデム等を使うためのドライバが必要だが、現実にはそれが存在しない。Mac OS 9ではPCカードを差し込むとそのままモデムとして使えたじゃないかと思われるかもしれないが、Mac OS 9ではカードモデムのドライバがシステム標準であった。Mac OS XはCarbBusのドライバまでは入っているようなのだが、カードモデムのドライバまでは入っていないのである。Appleでもサードパーティでも、とにかく今何かMac OS Xでモバイルできるものを発売したら、筆者も含めてニューズレター関係者はあっさり買ってしまうに違いない。だけど、何もないので、ここではモデム接続を「モバイル」としよう。もっとも、ISDN電話ボックスでモジュラーケーブルを使って接続し…というモバイルもあるわけだが、携帯電話系に慣れきってしまった後だけに、電話ボックスでのモバイルという時代を後戻りしたようなことはなんかできないのである。もっとも、最近だと、そうした電話ボックスを探すのも苦労しそうな気もする。 さて、ここで、モデムを使う場合の設定を説明しておこう。正確には、ポートとして内蔵モデムを使ったポート設定の設定だ。「設定」メニューからここでは「内蔵モデム」を選択する。その中の「設定」では「PPPを使用」が選ばれてるのを確認し、ほかは「TCP/IP」のタブでは通常は「ドメインネームサーバ」の設定をプロバイダで指定されたとおりにしておくと良い。「検索ドメイン」はなくてもOKだが、プロバイダにより指定されている場合には指定しておこう。
ところで「PPP」のパネルには「PPPオプション」というボタンがある。ここもチェックしておこう。ボタンをクリックすると、ダイアログボックスがシートの形で降りてくる。通常、プロバイダを利用する場合はこれを変更する必要はないが、TCP/IPアプリケーションを使用時に自動接続というオプションがある。Mac OS 9だとこれをオンにしていることもあったかもしれないが、Mac OS Xでの利用では常時モデムを使うのでないのなら、オフのままがお勧めである。具体的には後に説明をしよう。また、このチェックをオンにしていると、Mac OS Xを起動したときにモデムでプロバイダに接続にしにいってしまうのである。