2001年5月21日、WWDC 2001が開催し、基調講演が行われた。ファイアサイドチャットとして、CEOのスティーブ・ジョブズ氏が来場者の質問に答えるのではと推測されていたが、開始前のステージスクリーンにはまさにその名前通り、暖炉の火がゆらいでいる。もちろん、ビデオ映像によるファイアではあるが…。今年は人数は少ないかなとも思われていたが、基調講演会場を見る限りはかなりの人数が集まったようだ。開場と同時に人がなだれ込み、前の列から埋まっていく。いつもと変わらないWWDCの風景である。チェロソナタがPAから流れ、刻々と開始時刻が近づいてきている。 スティーブ・ジョブズ氏は、Mac OS Xのパッケージを手に、定刻通りに登場だ。満場の拍手で迎えらた。そして、「今まで何度もこのステージに立ったが、今回は将来の話はしない」とし、すでに発売されたMac OS Xを紹介した。「アップルに来たのはWindowsを使いたくないからだ」と話し、大きな拍手で迎えられた。まず、ハードウエア製品としてはiBookをリリースした。すばらしい製品であり、クールな製品で、すでに大量に出荷されていると説明した。そして、おなじみのiBookのビデオ(Webサイトで公開されているもの)を流した。また、米国で流しているiBookのCMも流した(飛行機の中でビデオ編集をやっているという笑える内容だ)。 17インチのCRTディスプレイを見せたが、これが最後のCRTディスプレイになるとした。そして、スタンドアロンのディスプレイは、すべて液晶ディスプレイになると説明した。Appleはデジタル接続やUSBハブも組み込まれており、コンピュータから電力を取り出し、1つのケーブルで接続できる。22と15インチのディスプレイがあることを説明し、22インチは2499ドルに値下げをする。15インチは599ドルに値下げをする。そして、2製品の中間に当たる17インチのStudio Dysplayを発表し、6月の最初に出荷される予定だ。価格は999ドルとなっている。 Mac OS Xの話に移った。Xはすでに出荷されて58日経過し、600以上のネイティブアプリケーションがすでに出荷されている。MacWorld誌の調査では、読者の86%がMac OS Xを利用できる機種を持っており、68%がすでに購入しており、82%はネイティブアプリケーションが出ればそれをすぐに使いたいと考えており、57-82%の人が早くネイティブアプリケーションに切り替えたいと考えているといった結果が出た。つまり、現在のアプリケーションを使うのをやめて、ネイティブアプリケーションを使おうとしていることを意味している。 Appleがこれからすることを紹介した。まずはOSをアップグレードし続けることだ。フィードバックを受け付けており、出荷後に40,000件の情報が寄せられた。デベロッパーからはパフォーマンスやツール、ドキュメントといった要望が寄せられた。1000人のソフトウエアエンジニアがXの改良に今は取り組んでいる。ソフトウエアアップデートはすでに3回行っており、うまく機能している。 2番目にはネイティブアプリケーションを出荷することである。そして、越えないといけない山があるとし、右肩上がりのグラフを示し、7月以降に多くのアプリケーションが出荷されるようになるとした。ネイティブアプリケーションとしてはMacromediaのFreeHand 10を紹介し、MacromediaのSenior Vice PresientのTom Hale氏が登場し、ソフトウエアの紹介を始めた。すべてAqua対応となっており、性能の改善が可能となった。ズームなどのスピードが大幅にアップできたとした。そして、マルチページの文書を示し、マスターページなどを使った編集を紹介した。 続いて、FileMakerが紹介され、PresidentのDominique Goupil氏が登壇した。昨年150万コピーが出荷されたソフトがMac OS Xのネイティブに対応した。Xの出荷後50日で製品を出荷できた。また、Webパブリッシングした結果と同一になることを示し、PDFフォーマットの取り扱いを紹介した。すでに出荷しており、12月にはCocoa対応のServer版も出荷される予定となっている。 いずれのサードパーティも、Appleのサポートによって早期の製品出荷が可能であったことを紹介し、Appleに対して謝辞を表明した。 そして、スティーブ・ジョブズ氏に戻り、Mac OS Xのアーキテクチャについて、フレームワークについての説明が行われた。そして、Appleでフレームワークを担当しているScott Forstall氏にバトンタッチした。そして、Cocoaは次のキラーアプリケーションを作るためにあると紹介した。Cocoaはロバストでオブジェクト指向のフレームワークであり、アプリケーションを容易に作成できる。Interface Builderを使ってCocoaアプリケーションを作るところをデモで示した。ユーザインタフェースのガイドラインをInterface Builderを取り込んであり、レイアウト時にガイドラインなどを出すようになっている。実際にビデオ編集を行うようなアプリケーション作成をデモした。カスタムクラスを利用して、ボタンなどを線で結び素早くアプリケーションを作る。そして実行させ、ムービーをいくつもつなぎ合わせたり、あるいはスプリットするようなアプリケーションの動作を自分で撮影したムービーを利用して説明を行った。作成したコードはカスタムクラスを作るときだけで、デモの上ではプログラムを1行も書かないでアプリケーションを作り上げている。 ジョブズ氏に戻って話が続けられた。Java2やUNIXといった手法でもアプリケーションが作成できることを説明した。UNIXの安定性とパワーに、Macのシンプルさとエレガンスを加えたのがMac OS Xである。バイオテクノロジーなどUNIXを使っているような分野の人たちがMac OS Xに興味を持っている。そして、AppleはUNIXの最大の供給者になることになると説明された。 3番目にやることは、Mac OS Xをハードウエアにプリインストールするという必要があると説明し、これまでは7月よりプリインストールを始めるとしたが、そうではなく、今日からプリインストールをすることにしたことを表明した。Mac OS 9が最初に起動されるが、Mac OS Xに切り替えることができるので、すぐに切り替えてもらいたいとした。今日出荷されるMacintoshから、すべてのものにMac OS Xが追加費用なしにインストールされているようになっている。
そして、25の直営小売店を米国で開催することについての話に移った。先週、2店舗が開店し、300のソフトウエアを販売している。小売店展開するのは成長を促すためだ。現在Macintoshは5%のシェアがあるが、ベンツとMBWのシェアを加えたのと同じくらいである。95%の人はアップルを考慮しない人たちなので、残りの95%を獲得するための戦略である。そして、新聞広告の内容を紹介した。そして、もう1つはデジタルハブになるという戦略である。Mac OS Xをデモし、iTunesを見せたりムービー作成のデモをする場所がほしかった。PowerBookのユーザに調査したところ、62%がデジカメ、44%がビデオを持っているなど、PCマーケットの数値よりも2倍の所有率を示している。こうした機器を接続して使うところをショップで見せることができる。そして、販売店の「ゴールドスタンダード」になり、見本を示すととも、失敗をするとしてもその実例を示すものとなりたいとした。開店より2日で、1000近いソフトウエアの売上があり、本体も含めて記録的な売上を示した。そして、作成されたビデオを紹介した。直営店の様子をジョブズ氏が紹介するといった内容のものだ。最後の締めくくりが「ソフトウエアを作成してくれれば、この棚を追加しますよ」といったものだ。(ここまでが前半の1時間である)そして、開店の様子を示したビデオも流された。列を作っている客がやたら盛り上がっており、全米はおろか、世界中から開店を目指してやってきた人がいたようだ。ショップでの買い物客のインタビューなどを示し「Shop Different」で締めくくった。 (続く) |