WWDC 2001の基調講演の後半を紹介しよう。ソフトウエアエンジニアリングの副社長Avadis Tevanian, Jr.氏が紹介され、登場した。Mac OS Xで何が提供されているかについての説明をするとした。現在、製品として存在するが、将来のためのプラットフォームであるというのが今でも重要なことだとした。ソフトウエアの開発は長期に渡るため、数ヶ月はあまり問題ではなく、何年かして振り返ってどうかということを検討すべきことである。だから、ずっと使い続けるOSであり、自分がアップルにいる間にはずっと使い続けたいと考えていると話した。 Mac OS Xのゴールの1つは、UNIXのパワーとマックのシンプルさを兼ね備えることである。保護メモリ、仮想メモリ、プリエンプティブなマルチタスク、より使い勝手がよくなったマルチスレッド、マルチプロセッサ、BSDのUNIXサービス、オープンソースといった特徴が説明された。そして、大きなコミュニティを形成していることを強調し、それらをAquaユーザインタフェースを含めたパッケージとして提供できるものとした。そして、妥協や譲歩をまったくしていないとした。 デモとして、E-muのTim Swartz氏が紹介され、MIDIについてのデモが行われた。Mac OS XではMIDIはビルトインされており、BGMに合わせて演奏を行ったが遅延無くできることを示した。そして、サウンドを再生させながら同時にEメールのチェックやWebを見ても、遅延がないことを示した。次のデモに移った。UNIXはスリープや復帰をしなかったが、それをできるようにする必要があった。スリープからの復帰にすぐできることをPowerBook G4で実際に示した。 2つ目の目標は、オープンスタンダードを取り込むということである。新しいものを作るのではなく、オープンなスタンダードを提供する方がいいとし、Apacheなどを始めとしてそうしたものをMac OS Xに採用してきている。2Dグラフィックスでは、Quartzという技術を使い、各種のフォントやPDFのイメージングモデルを採用している。アンチエイリアスやトランスペアレントもサポートしている。そして、OpenGLを組み込んでおり、ゲームで広く使われており、Mayaでも利用されている。QuickTime 5ではSkip ProtectionやFlash、Cubic VR、MPEG-1のストリーミング、DV Codecといった機能を紹介した。ColorSyncによるカラー補正についても説明された。ウインドウはダブルバッファされており、ウインドウの表示が早くなる。また、ピクセルごとにアルファチャネルを利用できて透明化ができる。トランスフォームとワープ(Dockにしまい込む)についても説明された。 続いてデモが行われた。ビデオを再生しながら、Dockにゆっくりしまい込み、その間、ビデオを再生したままアニメーションが行われ、Dockでの表示ができることを示した。また、3Dグラフィックスとムービーのブレンドができることを示した。 3つ目の目標としては、キラーアプリケーションを実現するということだ。Carbonを開発し、すでに存在するコードを守るとともに、さらに進化して利用できるようにしたものである。つまり、Mac OS Xに最適化できるようにした。また、Mac OS 9でもCarbonを使えるようにした。そして、Cocoaについて、完全なオブジェクト指向による生産性の向上やコードを書かないで機能を追加するといったことが可能になる。また、機能も豊富に用意されている。フレームワークに機能が用意されているので、アイデアがあれば、それを実現することができる。CocoaはOSに組み込まれている。Java2をMac OS Xに組み込んであり、Aquaのインタフェースを実現している。 フレームワークを使うにはツールが必要になる。そこで、デベロッパーツールをAppleは提供している。ツール開発にこれまでも投資をしてきたが、今後も投資を行って改良を続けるというのが4つ目の目標となる。パフォーマンスツールやリーク探知などのツールもいっしょに配布し、最適化のための機能も提供している。デベロッパーツールをすべてのMac OS Xに含めている。そして、Developer Toolsの最新版を、来場者には配布した。 そして、Project Builderでのデモが行われた。ツールを使って問題を解決する実例を示した。CPUモニタを見ると、アプリケーションを使ったときにCPUの時間をすべて使っている。これは、Mac OS Xでは問題のある動作であり、Samplerというツールでアプリケーションの動作を調べるということができる。そして、時間を使っている部分を見つけだし、問題のある部分をつきとめる、といったデモであった。 5番目としてインターネットとの統合を深く行うということである。セットアップ時の設定やiToolsの設定がその実例である。BSDのネットワーク機能が組み込まれていたり、Keychainも利用できるようになっている。キーパネルやシートを組み込み、iDiskとのシームレスな統合を行っている。 6番目の目標はモバイル機能の実現である。BSDでこれまでに実現していなかった、スリープや復帰に加え、ネットワークの自動認識も実現した。場所の機能が利用できるようになっている。また、電子メールをオンラインやオフラインで利用できるようになっている。 7番目は、ワールドワイドで販売できるということで、UNICODEに対応をした。1つのソフトウエアで各国の言語が扱えるようになっており、アプリケーションでも同様な機能が利用できるようになっている。3/24には日本語を含み7カ国語に対応した。そして、多くの言語を追加する予定となっており、5月の待つには追加の8言語が入手できるようになる。 そして、マーケティング担当のKen Berenskin氏が登場し、世界中でも同じOSが使える点についての説明のために登場した。日本語と英語、そして写真を含む文書を示し、UNICODEでの言語の扱いや、質の高いフォントであることを拡大した日本語の文字で示した。そして、ログインをしなおして別の言語に切り替わるところをデモンストレーションした。フォントやインプットメソッドをOSに組み込んであることで十分に機能するようになっている。 8つ目の目標は、やさしい移行だとした。まず、Mac OS 9とXでデュアルブートが可能なようにするようにした。そして、無理だと言われていたClassic環境の実現がある。Ken Berenskin氏が登場して再度デモを行った。そして、MacPainの文書を開いて古いアプリケーションが利用できることを示した。そして、Mac OS Xでは過去のすべてのアプリケーションが稼働すると説明した。 9つ目は、デジタルハブのための究極的なエンジンとなるのが目標となる。デジタルハブの機能をMac OS Xに網羅するために努力してきた。iMovieを稼働するだけではない。デジタルカメラ機能の統合として、実際にデジタルカメラで撮影をしてケーブルでプラグインし、Image Captureでダウンロードやさまざまな処理ができるところを示した。そして、デジカメで撮影した結果をスクリーンセーバーにすることができるところも示した。 |