タイトルFinal Cut Proの新版Ver.2の説明会を開催、現場のソリューションを強調カテゴリービデオ編集, ビデオ編集, イベント
作成日2001/6/15 18:3:10作成者新居雅行
2001年6月15日、すでに発売されたFinal Cut Pro 2.0についてのプレス向け説明会が、アップルの本社で開催された。そこでの説明の内容などをお届けしよう。Final Cut Proは、プロ向けの本格的なビデオ編集ツールだ。コンシューマ向けのiMovieに対して、映像のプロフェッショナルでも使える機能の編集ツールとしてFinal Cut Proを提供している。価格は98,000円であり、6月8日から発売されている。説明は、プロダクトマーケティングの古村秀幸氏が行った。
まずは、アップルのビデオソリューションの説明が行われた。製品系列として、コンシューマ向け、プロ向けとしてさまざまなものを発売しているが、ビデオ製品も同様である。プロ向けのビデオ編集ツールとしてFinal Cut Pro、DVDオーサリングツールとしてDVD Studio Proが発売されている。「Apple is Video」として、ビデオ業界に対してMacintoshの利用を勧めているが、スケーラブルでフレキシブルなソリューションを、低価格で提供し、安定性や機能拡張性を提供するものとし、プロに納得してもらえるソリューションを提供している。Final Cut Proは編集、合成、エフェクト、サウンドを1本で可能にするすべての機能が含まれたソフトであり、DVからHD、ストリーミングなどスケーラビリティが高いことが特徴である。そして、使いやすいユーザインタフェースを持ち、安定した環境を提供できている。ハイエンドのシステムに比べてのコストパフォーマンスの高さも特徴であり、さらにPowerBookでも制作が可能なことがある。調査の結果、12%ほどのユーザがPowerBookを使って編集を行っている。製品のポジションとしては、ハイエンドとエントリーレベルの中間を中心的に狙っており、ポストプロダクションや放送局、テレビ局、制作会社、デザイン会社、教育機関などで使われている。日本では、医療関係者が学会のプレゼンテーションなどで使うといったケースが見られる。岩井俊二監督の新作でも利用されスタジオ代の削減などに寄与したと話をしている。タイムワープ社の「シネマ通信」という番組制作でも使われている。ユーザからのフィードバックとして、リアルタイム、スピード向上、タイトル機能の向上などがあったが、それを受けたのがFinal Cut Pro 2である。Ver.2では、QuickTimeのアップデートともにサードパーティのビデオカードを使ったリアルタイム合成に対応した。タイトルを作成するテキストジェネレータを機能アップした、縁取りなどの機能を組み込んだ。また、パフォーマンスを約30%、デュアルプロセッサマシンでは79%の向上を実現した。そして、1440ページという膨大なマニュアルも付属させた。使い方だけでなく、ビデオ関連の技術的な情報も織り込んだ。メディアマネージャを改良し、ハードディスクの節約に寄与している。OMFオーディオの出力もサポートした。リアルタイム処理は、MatroxのRTMacを使う。3Dレイヤーをリアルタイムで編集ができる。コンテンツを圧縮するCleaner EZ5、オーディオ編集ソフトのPeak DVなど、いくつかのアプリケーションソフトも付属する。
続いてデモが行われた。米国で実際に放映されているコマーシャルを、実際に編集しているところをプレゼンテーションした。まずは、全体的な機能として、画面構成の説明が行われた。コンテンツを時間軸上に配置したが、オーディオレベルメータが新たに搭載されたことが説明された。オーディオ編集メニューも新たに追加され、片チャンネルのサウンドを中央に位置するように編集を行った。コンテンツの一覧上でもビデオをスクラブ再生して内容を確認できるところが示され、QuickTimeのサポート機能も紹介された。DVビデオの開始や停止を検出する機能が追加され、シーンの移り変わりに自動的にマーカーが付けられるようになった。また、トランジションはRTMacを使うとリアルタイムでできるようになる。従来はレンダリングが必要なマークが示され、すぐにはプレビューができなかったが、リアルタイム処理によりすぐにプレビューができる。一部のトランジションはリアルタイムできないが、そうした動作になることが分かるように色分けがされている。続いて、グラフィックスの素材をタイムライン上に配置し、透明度を時間軸上で変化させたり、グラフィクスを動かすということをリアルタイムで処理できることを示した。さらに、テキストを配置した。OMFへの書き出しや、DVD Studio Proをインストールしていれば、MPEG2への書き出しができるようになる。各社のFinal Cut Proのソリューションについても紹介し、ハイエンド向けのユーザも増えてきていることが紹介された。また、DVDのオーサリングツールDVD Studio Proとの連携も可能なことが紹介された。

続いて、サードパーティのソリューション実例の紹介に入った。紹介は各社の担当者より行われた。まず、イメージワンのChineWave RT(Pinnacle Systems)の紹介が行われた。HDの圧縮ができる高機能な点がいちばんの売り物となっている。非圧縮のシステムで、ボードと外部のボックスを接続する。アナログビデオ信号の扱いもできる。パソコンでHDのポストプロができる唯一のシステムではないかと紹介された。QuickTimeに完全互換となっており、各種形式のハイクオリティの画像をHDとして編集ができる。ハイビジョンの編集システムは従来は数千万していたが、ChineWaveを使えば500万円ほどでできてしまう。松下電器産業のAVCデジタルソフトラボでの納入実績があり、スタジオでの利用が行われている。対応フォーマットや、他のグラフィックスソフトとの連動、標準的な構成のRAIDで実用になる、価格などが導入の理由としている。さらに、Commotion ProとDVについても説明があった。機能限定版のDVがFinal Cut Proがついているが、Proへのアップグレードを受け付けている。(ChineWaveにはProが付属する。)数十台の出荷は行っているが、多くはHD編集を目的にして購入している。
続いて、フォーカルポイントコンピュータから導入事例を中心とした説明が行われた。Final Cut Proの導入事例として、映画や番組制作などを行っているガルエンタープライズでは、Aurora Igniter Film導入した。作成した映画をビデオとして配布する必要があったために利用した。次の導入事例として、10ビット非圧縮ビデオを利用したものを紹介した。テレビ局の番組制作やプロモーション映像などを制作しているタイムワープという会社で利用している。Final Cut Proに加えてD1 Desktop 64AVを利用しており、AVID系システムよりも高画質であると高く評価しているとのことだ。続いての導入事例として、電通テックでは、ブロードバンド向けのコンテンツを、D1 Desktop 64AVを使ったシステムで構築している。フジテレビのCG制作でも導入されており、D1 Desktop 64AVを使ったシステムではクオリティの高さが評価できるとの声が聞かれる。米国のテレビ番組制作会社でエミー賞を受賞した実績もあるWestwind Mediaでは、D1 Desktop カードを使っており、Final Cut Proは業界標準になりつつあると評価している。また、現場でのビデオ編集ができるポータブルマシン(中身はMacintosh)も紹介した。

最後に、価格や動作環境などの説明が行われた。なお、Final Cut Pro 2は、Mac OS Xには対応していない。Mac OS 9で稼働するものであるが、Mac OS XのClassicの動作にも対応していないということだ。Mac OS X対応は鋭意進めているが、現時点ではいつになるということは明言できないとのことである。
関連リンクFinal Cut Pro