タイトルMOSA・第4回テクニカルセミナー開催、テーマは「Mac OS X開発環境」と「WWDC報告会」カテゴリーイベント, 開発情報, Mac OS X
作成日2001/6/17 14:50:53作成者新居雅行
2001年6月16日、MOSA(Macintosh OS Software Association)が主催する第4回テクニカルセミナーが東京・神田の中央大学駿河台記念館で行われた。今回は、今後本格化していくであろうMac OS X環境に向けたセミナーと、2001年5月下旬に開催されたアップルの国際開発者会議であるWWDC(World Wode Developers Conference)の報告会という二部構成。第一部のセミナーでは、コーシングラフィックシステムズの高橋政明氏と、MDOnline編集長の新居雅行氏がそれぞれ講演した。

高橋氏の講演は「nibベースのカーボンアプリケーション作成」と題したもので、Mac OS XのDeveloper Toolsに含まれているサンプルなどを用いて、Carbon対応アプリケーション開発におけるメリットと問題点を解説。nibとはNext Interface Builderの略で、Interface Builderを用いて生成できるインターフェイス部分を指す。nibベースにすることで、インターフェイスの設計がより簡便になり、またアップルの示すガイドラインへの適合も行いやすいというメリットを述べ、今後アプリケーション開発の方向性を示した。
シートウインドウの実装など、Mac OS Xらしさを示すインターフェイス設計においてnibベース、すなわちInterface Builderを用いた開発作業の効率性の高さを示す一方、スライダーなど一部のコントロールについてはまだnibだけでフォローできず対応が十分ではないことや、文字フィールドへの日本語入力に不具合がある点などを指摘。今後の改善への期待を述べた。

新居氏は「ネイティブ化へ向かうMac OSの開発環境」と題した講演を行い、「ネイティブとはどういう状態を指すのか?」という根幹的な問いを基軸に、Mac OS Xが備えているCarbon、Cocoa、Javaの各フレームワークについて解説。各環境に即した開発ツールを紹介しつつ、そのフレームワークの現状と今後についての分析や予測を行った。
アプリケーション作成デモでは、Project Builderを用いて、本当に素の状態からの作業を実演し、Cocoa-Java環境で動作するファイル情報確認ツールをその場で作ってみせた。Java(Swing)環境での開発を行うボーランドのJBuilderもデモを行い、その概要を紹介。起動時に「アップルのサイトからJavaをアップデートしろ」というダイアログが出ることをさりげなく紹介し、きっと近いうちになにかあるのではないか(笑)という推測も披露した。

第二部のWWDC報告会では、セミナー講師の2氏に加え、オッティモの小池邦人氏や、MOSAの招待で現地を訪れた学生らが参加して、今年のWWDCの内容を語り合った。小池氏は、セッションの大半がMac OS X関連で、Mac OSのセッションがほとんどなかったことを挙げて、アップルのMac OS Xへの姿勢を改めて感じたと同時に、かつてはMac OS環境とMac OS X環境の橋渡しと考えられていたCarbonが、Mac OS X向けの環境として位置付けられたという点についてコメント。学生からは、「北米からは350人ほどの学生が参加していたのに、日本からは数人だったのは寂しかった」というコメントがあり、小池氏なども、もっと積極的に参加できるようになってほしいと今後の希望を語った。
高橋氏、新居氏とも、「もう後戻りはできない(アップルは後戻りするつもりはない)」と感じたと述べ、今後は確実にMac OS Xへ移行していくことになると語った。今回の2氏のセミナーは、これからMac OS X向けアプリケーションを開発していく人に向けたもので、わずかずつではあっても状況が確実に動いていることを示している。「珍しく開発ツールが充実している」というコメントもあったが、それもまた今後の展開を支える要素として重要なものと言えるだろう。

WWDCそのものについては、特に新しい技術や新製品の発表があったわけでもなく、地味な印象が強かったという。セッションの内容はすべて機密保持というわりに、紹介されている情報は既知のものがほとんどで機密にすべきものは少なかったとも言えるが、これまでのノリから比べると、開発者会議としてはまっとうなものと言えるのではないかという意見もあった。
今回のテクニカルセミナーは、Mac OS Xの開発に関する現状を整理し、今後を考える素材を提供したものと言える。大手アプリケーションベンダーを始め、対応製品の動向が判然としない状況でもあり、ユーザー環境も含めて急激な変化は起こらないという推測は、恐らくそのとおりになるだろう。だからこそ、これから本格的に始まるMac OS X環境に向けて、今のうちにしっかりと押さえるべきところを押さえておくということが、今後の長丁場を乗り切る上で欠かせない基盤となるはずだ。その意味で、今回のセミナーは有意義だったと言えるだろう。

[森 恒三(もり こうぞう)] 編集者・ライター。Mac専門誌の制作、Web雑誌の制作などを経て、現在フリーランスとして活動。月刊MACLIFE誌(エクシードプレス)にて展開中の雑誌内雑誌『apeX』編集長。
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