タイトル | アップルがMac OS X ServerとWebObjects 5の説明会を開催(2) | カテゴリー | WebObjects, Mac OS X Server, イベント |
作成日 | 2001/6/22 18:44:9 | 作成者 | 新居雅行 |
□Java化が目玉のWebObjects 5。サイバーラボのデモは圧巻 Webアプリケーション開発環境であるWebObjects 5については、鷲滝氏による製品説明の後、アップルによる開発デモと、株式会社サイバー・ラボによる開発環境「サイバーフレームワーク」のデモを交えた紹介が行われた。WebObjects 5そのものについての説明は、すでに公表されている情報に則したもので、特に目新しい点はなかった。 X Server 10.0のパッケージにはWebObjects 5のクライアント数無制限の実行環境が付属するが、開発作業に必要なツールは含まれていない。Webページ上の体裁を決めるHTMLビルダーのWebObjects Builderや、データベースモデルの設定を行うEOModeler、稼動確認を行うMonitorなどのツールはWebObjects 5のパッケージにのみ含まれるので、開発を行う場合はこちらを購入する必要がある。Interface BuilderやProject BuilderはMac OS X付属のもの(パッケージ版には同梱されるが、プリインストールモデルには開発ツールは付属しない)をそのまま使う。標準状態のProject Builderでは新規プロジェクト作成を選んだとき、ローカルアプリケーション向けの選択肢が出てくるが、WebObjects 5を組み込むことで選択肢が追加される。 アップル側の開発デモは、データベースに記録されているデータをグラフ表示するというアプリケーションを作るというもの。Webブラウザ上で結果を確認するWebアプリケーションと、通常実行型のアプリケーションの2種類をそれぞれ作り、実行してみせた。時間の関係であらかじめソースコードの一部が用意されていたものの、15〜20分足らずで2種類のデータベースアクセス型のアプリケーションが出来上がってしまうというのは、やはりすごいと言うべきだろう。Mac OS Xの開発環境のレベルの高さを示すと同時に、データベースとの連係を容易にするWebObjectsの実力の一端を示した。もちろん、すでにデータベースがあるということが前提ではあるが、開発効率の高さは折り紙付きと言える。なお、WebObjects 5はJDBC2アダプタをサポートするので、基本的にはすべてのSQLデータベースが扱えるはずだという。アップルでは、Oracle 8iについては動作確認を行っている。 Javaという点については、Java2SE対応ということで、Pure Javaの実行環境を備えるプラットフォームであれば運用に問題はないはずだという。アップルとしてはMac OS Xのほか、Windows 2000とSolaris 8における動作を確認している。また、Java2SE対応と言っているが、実はJava2EEに近い実装をしているというコメントもあった。Linuxなどのプラットフォームにも対応できるだろうということで、Javaならではの汎用性や開発者層の広がり、運用環境の普及に期待を見せている。 最後に行われたサイバー・ラボのデモでは、同社が開発しているフレームワーク指向のプログラミング環境である「Cyber Framework」が披露された。これはWebObjectsの技術をバックボーンとしたデータベースアクセスアプリケーションの開発環境であり、すでにWindows上では稼動している。今回、初めてMac OS X上で実演された。 プログラミング環境と書いたものの、それを言語コーディングすることと同義であると解釈した場合、Cyber Frameworkのそれは「プログラミング」とは呼べない。この開発環境の特徴は、レゴブロックのように部品を組み合わせるだけで開発が完了するという点にある。定義しておいたデータベースモデルをアプリケーションウインドウにドラッグ&ドロップするだけで、基本的なデータベース検索アプリケーションなどが開発できてしまう。用意されているウインドウといった「部品」そのものに、すでにデータベースモデルをどのように解釈して表示するのかという機能が備わっており、開発者は、その部品が処理すべき対象、すなわちデータベースモデルをドラッグ&ドロップで与えるだけという状態になっている。本当に、一切のコーディング処理なしにデータベースアクセスを行う検索や統計処理アプリケーションが出来上がってしまう様は、圧巻というほかない。 デモを行った同社代表取締役社長の加藤康之氏は、「再帰的な開発作業を可能にすることがメリットである」とコメントした。現在のアプリケーション開発では、一度作成したプログラムが実情なり運用環境に即さなくなった場合、最初から作り直す必要が生じる。しかし再帰的な開発が可能になれば、これまで作成してきたアプリケーションの機能を無駄にすることなく活用できる。これはオブジェクト指向環境全体におけるメリットともされるが、Cyber Frameworkでは、用意されているその一連の作業や操作をドラッグ&ドロップのみで可能にしている点が大きな特徴である。デモのなかでは、Mac OS X上で行った統計処理の結果を、AppleScriptによってMac OS版(Classic環境)のMicrosoft Excelに受け渡して表示させるといったものもあった。 複雑なデータベースモデルを視覚的に把握・管理できるツールを含めたWebObjectsの存在があってこそ可能になった開発環境であり、古くからこの技術に着目してノウハウを蓄積してきたサイバー・ラボならではの成果と言える。加藤氏は、この環境がMac OS Xで動くようになったことを喜んでいるとコメントし、今後の展開に大きな期待を寄せた。 今回紹介された2製品はともに、AppleCareなどのサポートプログラムが設けられている。WebObjectsに関しては、Apple Developer Connectionにおけるサポートのほか、Enterprise Help Line(EHL)という専用のサポートも設けられている。このEHLは年間契約で350万円という金額のため、容易に申し込むことは難しいという点を考慮して、今後対象期間を短縮したプログラムも用意する方向で検討していることが鷲滝氏から示された。 専門性の高い製品だけに、実際のデモを多数交えて行われた今回の説明会は、概ね好 評だったようだ。惜しむらくは、製品の発表から時間が経ち過ぎているように感じら れてしまう点だろう。 アップルが2001年念頭にリリースすると発表したMacOSX関連の製品群は、これでほぼ出そろったことになるが、すでに稼動実績が多くなってきているWebObjectsや、その動作プラットフォームとしてのMac OS Xの導入が、これを機にどこまで進んでいくのかが注目される。 [森 恒三(もり こうぞう)] 編集者・ライター。Mac専門誌の制作、Web雑誌の制作などを経て、現在フリーランスとして活動。月刊MACLIFE誌(エクシードプレス)にて展開中の雑誌内雑誌『apeX』編集長。 | |
関連リンク | WebObjects 5 |