タイトルCubeの生産休止を発表、低シェア下では製品絞り込みは不可避カテゴリーMacintosh本体
作成日2001/7/4 16:19:0作成者新居雅行
Power Mac G4 Cubeの生産が休止されることが発表された。発売から1年足らずでの幕引きである。事実上、Cube系ラインナップの凍結となった。2000年7月のMacworld Expo/New Yorkで華々しく登場し、当初は多くの注目を集めた。それまでは、製品系列を4つにわけたマトリックスで、コンシューマ/プロシューマ、デスクトップ/ノートという切り分けをしていた。これは、スティーブ・ジョブズ氏がAppleのトップとして働きはじめてそれまでの製品系列をシンプルにまとめたものだった。しかしながら、Cubeの登場により、5つ目の枠が登場したのである。デスクトップで、iMacとPower Mac G4の中間的な存在である。また、スタイルもほとんど立方体だとか、透明のケースで浮いた感じになるなど、ユニークなものだった。もっとも、キューブとなると、古くはNeXT社のワークステーション、あるいはCobalt Cubeなどもあったわけだが、Macintoshの歴史の中では目新しいデザインであることが目を引いた。そうした突飛なデザインは敬遠される向きもあったのだが、発売直後は例によって高い評判を獲得した。また、ハードウエアデザイン的なユニークさは、ファンが組み込まれていないで静かであるとか、コンパクトということ以上にケーブルを底面から出すなど配線がすっきりできるといった特徴もあった。CD-ROMの出し入れも天面から上下に行うなど、さながら“トースター”を思わせるものでもあった。いろいろな意味で常識破りがあちこちにあって、話題に事欠かないマシンであった。また、Power Mac G4とは微妙に低い目のCPUクロック設定ではあるが、価格的に安価であり、しかもG4を搭載しているということもあって、コンパクトでハイパワーという点でも注目が集まった。
しかしながら、ある程度製品が出回った段階で、逆風が吹きはじめる。不良品がそこそこの数あった模様だ。いちばんよく聞いたのは、勝手に電源が入ったり、切れてしまったりするというトラブルである。発売当初の好評はなかったかのように、ブーイングが吹き荒れる。折しも、2000年後半は、アップルにとっては売り上げが伸び悩んだ時期でもあったが、不良品騒ぎでやはり「避ける」マシンとして定着してしまった感がある。2001年2月のMacworld Expo/Tokyoでは、CD-RWドライブ搭載マシンとしてリニューアルを図ったが、やはり世の中の注目は買うか買わないかは別にして、Power Mac G4のDVD-R搭載マシンに移っていた。Cubeは最初の注目を取り戻すことはできなかったのである。
安定してコンピュータを利用したい業務ユーザは、結果的にPower Mac G4を買うことになっただろう。今どきなので、特別な目的もないのであれば、拡張性ということは重要視されてはいないと思われる。むしろ、不良品に当たる可能性が高いのであれば避けたいと思うのだろう。また、ハードディスク交換やメモリ増設は当たり前に行われるのであるが、Cubeがそれらに対応していないわけではない。だが、不良品騒ぎと連動して、中身の密集度の高いハードウエアは「下手に触るとまずいかも」と思わせてしまい、やはり安心して中身をあけられるPower Mac G4という選択肢に落ち着くということも考えられる。
2000年後半からの落ち込みで、2001年度の第一四半期の業績はあまり振るわなかったのだが、さまざまな理由があるとしても、やはりMac OS Xの影響はぬぐい去れなかっただろう。その時期にMac OS 9で業務ベースで利用するユーザに取っては関係のないはなしであるが、Mac OS Xを積極的に使いたいユーザにとっては、Mac OS Xが正式発売するまでハードの買い控えが発生した。Xが出てみないと実際どうなるか分からないということがあっただけに、Cubeの伸び悩みもそうしたことも理由の1つとも考えられる。もちろん、今現在ならG4で500MHzなら十分Mac OS Xは使えると言えるのだが、そのことは2000年の寒い時期に明確に分かっていたかと言うとそうではなかった。
一方、コンパクトなデスクトップということはメリットにならなかったのかということは興味深い点である。仮に、コンパクトなものを欲しいと考えれば、やはりPowerBookやiBookを購入するだろう。その意味ではデスクトップでのコンパクトさというのは、現状のMacintoshのラインナップではあまり大きなメリットを見出せないというところである。もっとも、ごく一部のユーザ、特に家庭でサーバを運用したいユーザにとっては、静かでコンパクトと言う絶好のスペックであることもあって注目はされているが、そうしたユーザは売り上げに貢献するほどの数がいないことは明白である。
5つの製品系列をとりあえず、以前の4つの製品系列に整理をした。図らずも、当初の基本路線であった「ラインナップを絞り込む」という方向に落ち着いたと言える。もっとも、今後別の新しい製品が出てくる可能性もあるのだが、収益が厳しい状態では、やはり基本に忠実になるのだろう。今月の中盤に行われるMacworld Expo/New Yorkでの新しい製品についてはさまざまな予想が行われているが、ここでCubeの休止を発表したということは、4系列の製品群を継承するというメッセージである可能性が高いと思われる。Apple製品がそれなりのシェアがある状況では、Cubeのような存在も許されたかも知れない。しかしながら、ある意味ではぎりぎりのシェアで効率的に展開をしなければならない状況下、Cubeの食い込めるマーケットは製品を維持するほどの規模ではなかったと言えるだろう。
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