タイトル | LightWave 3DのCarbon対応版が特別価格で販売、ネットワークレンダリングはCocoa対応版を開発 | カテゴリー | グラフィックスアプリケーション |
作成日 | 2001/7/13 17:30:25 | 作成者 | 新居雅行 |
2001年7月13日に、ディ・ストームは、アップルの本社でLightWave 3D Ver.6.5の出荷発売に関する説明会を開催した。3DグラフィックスソフトとしてすでにMac OS向けなどに発売されていたが、Mac OS Xにこのバージョンでネイティブ版として対応した。そして、168,000円という特別価格で販売を行う。クリエイティブ分野のアプリケーションはなかなかネイティブ化が行われない中、いち早くMac OS Xに対応することで、シェアの取得を狙っている。また、Cocoa対応のアプリケーションの開発にすでに取りかかるなど、Mac OS Xの機能を最大限に行かす制作環境としての地位を目指している。以下、説明会の内容をお届けするが、記載は基本的にはプレゼンテーションで講演者によって示された内容である。 まず、最初にディ・ストームの副社長である阿部氏より話が行われた。LightWave 3Dの歴史の説明があった。スターウォーズのような映画を作るソフトを作りたいと考えた2人の開発者が最初にリリースしたのは1986年で、それはStuart Ferguson氏のModeler 3DとAllen Hastings氏のVideoScope 3Dとしてリリースされた。そして、89年にNewTek社との出会いがあり、Amiga向けのVideo Toasterにバンドルされ、93年にはツールとしてエミー賞を受賞したものの、94年のAmigaの生産中止により、WindowsやSGI、Macintosh向けに移植を行った。開発リソースとしてはWindowsを重視をしていたものの、97年にVer.5.0としてPowerMac版がリリースされたが、日本のユーザからの強い要望があったことが影響しているそうだ。その後、2000年3月のVer.6.0で「今後10年以上耐えうるアーキテクチャー」に内部的には大きく変更を行った。2001年2月にはMac OS XのCarbonに対応したプレリリース版を公開し、7月には正式に対応した。現在は日本人2人を含む12人で開発が進められている。さらに、来年度以降にはCocoa対応を予定している。また、現在はCodeWarriorを開発環境としているがMach-O対応や、Cocoaベースのフレームワークなどを含め、よりネイティブに機能することを目指すとしている。また、OpenGLとの互換性を高めるなどの目標も設定されている。 続いて、アップルコンピュータのマーケティング本部長である大宮哲夫氏よりのスピーチが行われた。Mac OS Xにネイティブ対応した最初の3Dソフトである点を高く評価している。今後はプロフェッショナルなマーケティングに力をいれたいが、デベロッパーやチャネルの協力が必要である。チャネルを通じLightWave 3Dが流通可能であるることもあり、また、ネイティブ対応や、マルチプロセッサに対応したLightWave 3Dの出荷に期待をしている。さらに、アップルコンピュータのMac OS Xのマーケティングを担当する櫻場浩氏からは、Mac OS Xについての説明が行われた。Mac OS Xはすべてのマックユーザの未来であると説明し、伝統的な使い易さに加えてUNIXのパワーとオープン性をOSに折り込んだものである。そして、Mac OS Xの構成についての簡単な説明を行った(この部分については詳しく説明されたが、MDOnline読者にとっては既知のことだろうから、簡単に紹介する)。特に、UNIXをベースにしたOSであるというのはLightWaveのようなアプリケーションには有利であると説明し、メモリ保護および管理やマルチタスクの利点を説明した。「未来」ではあるが、すでに発売されたOSであり、そうした新しいOS上で、LightWave 3Dのようなアプリケーションをクリエイタにどんどん使って欲しいと締めくくった。 続いて、ディ・ストームの飯尾氏より製品の説明が行われた。まず、現在のユーザ層を紹介した。プロフェッショナル向けとしては、ゲームコンテンツ開発者、Webコンテンツ開発者、映画やCMといった映像制作、広告イメージなどの画像制作、デザインやプレゼンテーションを行うために使っている一般企業がある。さらに、マルチメディア教室や研究発表などの教育機関の利用も目立っている。さらに、低価格なことから、プロシューマやマニア、アマチュアの利用者も多い。以前の調査では、プロでは40%近く、ホビーユーザでも20%の利用者がいる。LightWave Ver.6.5では、モデラーやレイアウトの改良が行われている。新しい機能であるVertexPaintは頂点カラーのペイントやウエイトの編集ができる。「アトラス」というマッピングの機能は展開図上にシールを貼るようにマッピングが可能できる。風や重力と言った物理シミュレーションによるアニメーション機能や、人間のからだの動きをシミュレーションの機能を紹介した。レンダリングとしては、レイトレーシング、コースティクス、ラジオシティに加え、実写との組み合わせがリアルになるHDRI(High Dynamic Range Image)にも対応している。また、オブジェクトを階層構造で管理する機能や、アニメーション動作を数式で定義する機能も紹介された。そして、Mac OS XでのLightWave 3Dのデモが行われた。 デモは、ディ・ストームの村上氏によって行われた。まずは、Dockから1クリックで簡単に起動ができる点を示した。そして、モデルを読み込み、OpenGLでの描画が高速にできることを示した。Carbon対応であり、ボタンなどユーザインタフェースは従来のLightWaveの形式のままとなっている。従来はモデラーとレイアウトでのメモリ割り当てが難しかったが、Mac OS Xではメモリに関してはなにもしなくても最適に動かせることが大きなメリットになる。さらに、アプリケーションの安定性も高くなっている。また、ネットワークを利用した複数のマシンを使った分散レンダリング(ScreamerNet)を説明をした(999台までサポートできる)。10台のPowerMac G4を使っての分散レンダリングをデモンストレーションした。ScreamerNetの機能については、Cocoaのアプリケーションを使って実現している。従来は共有フォルダに、ジョブを記入したファイルを参照して処理を行い、処理結果をさらにファイルを書き込むと言う原始的なやり方を使っていた。そこでは、SiOUXを使ったアプリケーションを分散されたマシンで稼動していが、それをCocoaアプリケーションとして新たに開発を行った。NetInfoを利用して、ネットワーク上でレンダリングが可能なマシンを認識して、分散処理をコントロールする。分散処理側もCocoaアプリケーションが稼動している。新しい分散レンダリングのアーキテクチャでは、分散オブジェクトの機能を使って、別のマシンが生成したイメージをオブジェクトとして受け取るといった仕組みになっている。また、従来はフレーム単位での分散処理していたが、分散オブジェクトにより1枚のグラフィックスの部分ごとに分散処理ができるようになった。また、Interface Builderでの開発が行われれば、ローカライズがより容易になるといったメリットがあることにも期待をしており、将来のCocoa対応についての展望を示した。ScreamerNetの機能は日本で開発を行っているということだ。ScreamerNetは近日公開となっており、ムービーへの対応もその後に行う予定となっている。 飯尾氏にバトンタッチし、クリエイティブマーケットでのシェアの高いMacintoshに力を入れることを説明した。そして、通常は248,000円のパッケージを、キャンペーン販売として、168,000円として特別価格で2001年7月26日〜9月30日の期間に発売する。 Mac OS Xの3Dツールとしては、早くからMayaの対応が公開されるなど、Maya一色といった状況だった。しかしながら、今現在、Mayaはまだ出荷されていない。また、出荷されたとしても、ハイエンドしか手が出せない値段ではないかというのがおおかたの予想である。しかしながら、LightWave 3Dはネイティブ版を出荷実際に出荷することになり、Mayaよりも先に市場投入が可能となったことから、Mac OS Xを利用する3Dクリエイタの注目をここで一気に集めてシェアを確保したい考えだ。 また、分散レンダリングのためのCocoaアプリケーションを日本のメンバーで開発するなど、単なる代理店という枠をこえたコミットを行っていることも注目できるだろう。高い技術力を背景にサポートを行っていることをアピールできると共に、Mac OS Xへの対応に対しても弾みをつけることも可能だと言える。その意味でも、ディ・ストーム社の動きは注目できると言える。 | |
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