タイトル小池邦人のプログラミング日記》2001/7/23<Macworld Conference & Expo/New York>カテゴリーMac OS X, 小池邦人のプログラミング日記, イベント
作成日2001/7/23 19:21:58作成者新居雅行
今回は、7/17から7/20までNew Yorkで開催されたMacworld Conference & Expoの印象を述べてみます。私が海外でのMacworld Expoに参加するのは、San Francisco Expo以来6年ぶりとなります。

以前、東海岸でのMacworld ExpoはBostonで開催されていました。それに参加した帰りに何度かNew Yorkへ寄りました。今回は、それ以来十数年ぶりのNew York滞在だったのですが、その変貌ふりには驚いてしまいました。町は綺麗で治安も良好、走っている車は新車ばかりで地下鉄の車両もピカピカです!当時は、ツアー添乗員から「あっちには行くな」「地下鉄には乗るな」「夜は外出するな」と口うるさく忠告されたものでした。実際、昼間に道を歩いてると血まみれで倒れている人に遭遇したり(マジです)、ひったくりや脅し詐欺の経験談も多く、市街を走るパトカーのサイレンも絶えませんでした。Expo前日には、地下鉄を利用してApple社がショップを出すと噂されているSOHO地区なども散策してみましたが、緊張せず歩ける感覚は、まるで普通(笑)の観光地のようです。やはり、ここ数年続いた景気拡大のおかげでしょうか(市長がエライという噂有り)? IT関連企業の凋落で景気後退が囁かれているUSAですが、今回その影響が現れている感じはしませんでした。

Macworld Expoのチケットは、先んじて日本からWeb経由で購入してありましたので、Expo前日に会場へと足を運び、レジストレーションを済ませておきました。展示会だけのチケットならば当日29ドルで購入できますが、Jobsの基調講演を聞くのには「Users Conference」チケットを購入する必要があります。こちらは、事前登録の割引を利用しても195ドルもします。Users Conferenceに関しては、そのタイトルから推測して私が聞くべき内容は見あたらなかったのですが、基調講演を外すわけにはいきません。昨年は、基調講演終了後に参加者全員にPro Mouseという「お土産」があったので元が取れたようですが、今年は何も無し(涙)実に割高です。主催者には、基調講演を含んだもう少し安いチケットを用意して欲しいものです。Macworld Expoの初日、Jobsの基調講演開始の1時間半前には会場に到着したのですが、すでに講演が行われるホールの前には長蛇の列ができており「こりゃ、ホールに入れるかな?」と焦ってしまいました。なにせ入れないと、Users Conferencチケットにした意味がありません(涙)。幸運にもホールの収容人員が多く、何とか滑り込みで席を確保することはできましたが、ずいぶん後ろの方で聞くはめになってしまいました。(次回はプレスとして入れるように根回か?)

基調講演の内容は、すでに多くのメディアで報道されていますので、詳しい説明は省略します。実際にその場で聞いた感じとしては、ハードウェアの発表については少々物足りませんでしたが、Mac OS X 10.1のデモは結構インパクトがありました。できれば、Jobsの「今日からアップデート可能だ!」という声を聞きたかったのですが本音ですが...。基調講演後は、さっそくAppleブースへ出向き、実際にMac OS X 10.1のデモを見ることにしました。10.1のデモブースにはApple社の担当が張り付いており、来場者が直接操作することはできません。ただし、熱心に頼んだりスキを盗めば(オイオイ)、少しは操作することが可能でした。長時間デモを見ていると、1時間ぐらい掛けてAppleScriptのコンパチビリティをチェックする怪しいおじさんとか、あちこちのWebサイトへアクセスし、10.1搭載のJava 2とApletの整合性をチェックしまくる少年とか、へビーユーザが相手だと担当者に同情したくなります(笑)。しかし、中には、今使っているアプリが使えるかどうかを尋ねる初心者のご婦人がいたりして、多種多様なユーザで常時にぎわっていました。私も短い時間操作させてもらいましたが、アプリの起動、メニューの表示、ウィンドウのリサイズなどのパフォーマンスは確かに良くなっています。特に、アプリの起動は特筆すべきで、Mac OS 9環境と比べても遜色ありません(それ以上?)。ただし、デモマシンが新型PowerMac G4 800MHz(Dual)という高速マシンでしたから、体感速度の本当の評価は、自分のマシンにインストールして試してみるまで差し控えたいと思います。とは言っても、10.0.4がインストールされている同マシン(こちらは自由に使えた)で同じ操作を試してみましたが、確かにFinderのレスポンスはワンランク向上したと実感できました。

デモマシンに搭載されているClassic環境はMac OS 9.2でした。また、アプリ起動のデモに使われていたInternet Explorer 5.1は正式版のようで、現状10.0.4で使っているバージョンとは異なりました。多分、アプリ自体もCFM(PEF)ではなくMarch-Oベースになっているのではないかと推測しますが、残念ながら、そこまで確認はできませんでした。それから、Apple社から発表が無かった項目についても、何点か確認してみました。Finderのリスト表示では、ファイル名の頭文字をキーから打ち込み項目を選択する機能が動くようになり、システム環境設定の「一般」では、アンチエイリアスで表示する最小文字サイズの設定もできるようになっていました。残念だったのは、相変わらずフォルダやドキュメントアイコンにカラーラベルが設定できないことです。それから、コンテクストメニュー表示など、現状と同じく反応が遅い箇所もいくつか見受けられました。加えて、今回から可能になったDVD再生についても、長時間再生のデモをしないのが実に怪しいと思います(笑)。まあ、まだチューニングされていない箇所をあえてデモすることもないでしょうから(気持ちはよく分かる)残り一ヶ月で、どの程度そうした箇所を無くせるかが重要となります。会場でデモされているMac OS X 10.1は、あくまでもPreview版であり、これがそのままGM版になるかどうかは分かりませんが、さらなる努力により最良の状態で我々の手元に届くことを期待したいと思います。

近年のMacworld Expo/東京は、出展するサードパーティがどんどん少なくなってきており、会場を回るのも楽になってしまいました。Expo/New Yorkでも出展者が少なくなっている傾向はあるようですが、予想していたほど極端ではありませんでした。ゆっくりと丁寧に回れば、2日ぐらいは十分に楽しめます。また、相変わらず来場者の数は多く、初日は大変な混雑でした(ただし、平日なので子供が少なかったような気がする)。老若男女、ノーネクタイのMacユーザが世界中から集合し、各ブースで、Tシャツ、バッジ、シール、デモCD-ROMの争奪戦を展開しています(笑)。Apple社がどんな状況であろうと、会場内の雰囲気はいつも明るいのが、この展示会の大きな特徴でもあります。会場を回ってみると、WACOM社など、まだMac OS 9環境でデモしている有名メーカもいくつかありましたが、ブースの半分以上は、Mac OS X環境で自社製品をデモしていたのではないでしょうか?老舗アプリケーションがバージョンアップによりMac OS X対応になったケースが目立ち、新規開発やUNIXやWindowsから移植されたアプリケーションのデモがそれに続いていました。それから、デモ用マシンとしてPowreBook G3やG4が多数使われていたのが印象的でした。デスクトップの凋落を、こんな場所でも実感できたと言う訳です。

Microsoftをはじめ、今回のExpoでMac OS X対応アプリケーションを発表したサードパーティの多くは、9月にMac OS X 10.1が出荷された時点で正式に発売を開始するようです。同業者として、現状の10.0.4環境を避けて通りたい気持ちは良く分かります(笑)。開発環境にしても、Metrowerks CodeWarrior 7.0が9月発売開始ですから、タイミング的にもそうなるのが自然でしょう。本当ならば、Mac OS X 10.1はWWDC 2001で発表されるべきバージョンであり、今回のExpoで正式出荷になるはずだったと思います。Apple社としては、サードパーティがMac OS X用アプリを多数販売することで、今回のExpoを盛り上げたかったのでしょうが、10.1を間に合わせられなかったのですから、これは自業自得ですね。ただし、多くのサードパーティがMac OS Xへの対応を進めていることを来場者に示すことはできたと思いますので、Expoとしてはまずまず成功だったのではないでしょうか?

お土産としてMac OS X10.1が入手できないと知っていたら(薄々感じていたけど)New Yorkは止めてParisにすれば良かったかなぁ?と思う今日この頃です(笑)。とにもかくにも、9月には期待を裏切らないMac OS X 10.1の登場を望みたものです。でないと、ソフトの作り手側の志気も気力も上がらないことは、今回のExpoが証明しているわけですので...。
[小池邦人/オッティモ]
関連リンクオッティモ