タイトルWeb開発関連のカンファレンスが開催、WebObjectsをはじめWebの今を講演カテゴリーWebObjects, Java, サーバー製品, イベント
作成日2001/7/24 18:44:33作成者新居雅行
2001年7月24日、東京コンファレンスセンターで、びぎねっと主催の「Web Developers Conference」が開催された。全部で8つのセッションが行われたが、そのうちのいくつかを取材したので、その概要をお届けしよう。8つのセッションのうち、4つはスポンサーによるもので、 Oracle 9i、WebSphere、Enhydra、WebObjects 5の各テーマで講演が行われた。そして、残り4つは、Apacheの最適化、PHPとXML、Java、WebDAVといったテーマで講演が行われた。これらのうちMDOnlineでは、WebObjects 5と、Java、WebDAVについて取材をした。

スポンサーでもあるアップルコンピュータは、「WebObjects 5 次世代の開発運用環境」として、WebObjects 5についてのプレゼンテーションが行った。マーケティングの鷲滝薫氏による概要のプレゼンテーションでは、Java2に対応したことや、WebObjectsの開発環境を説明した。WebObjectsのメリットについても説明が行われた。まずはアプリケーションの一番大変なデータベースアクセスをSQLコーディングなしに自動的に行えることを説明した。そして、HTMLのテンプレートによる自動生成ができることから、ビジネスロジックとページでザインを別々にできるということを説明した。また、デスクトップアプリケーションの開発環境としても使えることも説明した。アドバンテージとして、マーケットニーズへの迅速な対応が可能なことやフレームワークの信頼性、稼動プラットフォームを多彩にするJava2であることを挙げた。各社で採用実績があると同時に、Appleでの販売サイトなどさまざまなサービスで利用している。また、来場者にWebObjectsトライアル版のCD-ROMが配付された。評価版のWebObjects 5が含まれている。また、日本語の技術資料も今後はリリースするが、今日からいくつかの文書が公開される。
続いて、アップルコンピュータの野村氏によって技術的な内容の説明やデモが行われた。Webサーバを使うことやJDBCドライバを利用するなど動作の基本を説明した。そして、シンプルなアプリケーションを例に、WO AdapterやEO Adaptorの動作とHTMLの生成までを説明した。そして、アプリケーションを作成するデモを行った。EOModelerでOpenBaseに接続してモデルファイルをまず作成する。そして、Project Builderを起動し、WebObjects Applicationのテンプレートを選択する。そして、最初に表示されるページの設計をWebOjbects Builderで変更を行った。データベースの内容を表示するコンポーネントを配置し、EOModelerからエンティティを追加し、それらを線で結んで設定を行った。また、ムービーを参照するアプリケーションや、MySQLへの接続も行った。

「今Web開発でJavaをはじめる理由」といったセッションで、エア・ロジックの羽生章洋氏による講演が行われた。Webの基本要素をHTMM、HTTP、URLといった要素を挙げ、文書閲覧のためのシンプルな仕組みとして説明したが、こうした仕組みがこのまま続くのかということが気になる状況になってきたと話が振られた。コンピュータの歴史を説明し、現在はサーバに処理を負担させているが、今後もやはりサーバにはたくさんの仕事をさせることになり、また性能がアップしたクライアント側にも仕事をさせる動きになると予測した(ファットクライアント/メガサーバ型と表現している)。ネットワークの進展も前倒しで発展してきている。Webに要求されるのは、大規模、高機能、複雑になってきており、ドキュメント指向から相互にやり取りをするWebサービスになってきている。以前にeビジネスとtビジネス(Traditional)といった対比もあったが、今風に言えば、entryとtransactionとなり、クリック&モルタルというモデルにも近いといったユニークな分析も話された。XMLや携帯も含めて、こうした状況に対応できるものはJavaであるとした。ただ、エンタテインメント系はFlashにまかせるのがいいという話もあった。
Javaに対する疑念について話が及んだ。まず、Javaは難しいという点については、確かに難しいが、学習をすれば実現する範囲も広がり、後から苦労は生きてくる。ただ、手っ取り早く仕事を終わらせるライトウェイトな手段も持っておくのがいいとの意見も話された。Javaが遅いと言うのは事実であるとしながらも、その点に注目が集まり改善は著しい。しかしながら、GUIについてはまだまだ改善の余地があものの、サーバーサイドではマシンスペックが上がっているため問題がないレベルになっている。Javaが普及していないと言う話もあるが、書店でコーナーもあり、新聞に掲載され、携帯で話題になり、情報処理試験に採用されるなど、定着はしてきている。Javaは安定していないという話もあるけど、6年経過して安定してきており、APIも出揃い、良く使うものは安定していると言える。Javaのメリットとしては、APIの使い方を調べるだけで大体分かってしまうので、環境設定でははまっても、プログラミングではまることはないとした。そして、実際のJavaの具体例として、JBuilderを使ってボタンをクリックしたらテキストを表示するといったアプリケーションをすぐに作成した。また、JavaBeansによるコンポーネント作成も手軽にできることを示した。さらに、サーブレットやJSPの作成のデモを行った。さらに、PHPのスクリプトで、JavaBeansで作ったコンポーネントを呼び出して表示するといったデモも見せた。
実際にJavaを利用するために最初に手をつけるには、まずは入門書を読み、JavaBeansの学習をしておく。そして、サーブレット、JSP、JDBCと学習を進めば良い。ここまで来れば、Web開発の一通りを網羅できる。レベルアップするためには、EJBやXMLを操作するJAXP、SOAPを学習すれば良い。最初にSwingを使ったGUIをやるとヘコむので、このテーマは徐々にやった方がいい。まとめとして、大きな変化が近い将来やってきて、HTMLがすべての時代が終わるとした。そして、大きく楽をするために少しの苦労をしましょうとして締めくくった。

「分散オーサリング/バージョニングプトロコル WebDAV」として、テューンビズの早川仁氏による講演が行われた。WebDAVは分散環境におけるオーサリングを実現するためにHTTPを拡張したもので、Webを書き込み可能にし、あらゆる種類のファイルを利用できるようにし、コラボレーションを可能にしたものである。Acrobat5ではDAVサーバ上のPDFを開いて付箋をつけるようなことが可能になっている。WebDAVはプロトコルの名前でアプリケーション名ではない。HTTPにメソッドを追加したもので、HTTPの特徴を引き継いでいる。そして、通信フォーマットにXMLが使われている。WebDAVで提供される機能は現段階では、リソースやコレクション管理、プロパティの管理、上書きの保護となっている。WebDAVの利点としては、HTTPと同じなのでHTTPあるいはSSLのポートしか使わないので、ファイアウォールがあっても利用しやすい。また、さまざまな手法でセキュリティを確保することができる。そして、OSや言語に依存しない規格であるということを挙げた。また、サーバ内でのファイルの移動をサーバ上でだけ行われるなど効率的に動作する。
WebDAVの適用例として、OSに依存しないファイルサーバとして利用することが考えられる。FTPなどの代替えとして安全にファイル転送ができる。また、Webサイトのステージングサーバとしての利用もある。そして、コラボレーションツールとしての利用がある。そして、様々なソフトウエアでの利用方法について説明が行われた。Windows 2000ではマイネットワークから利用でき、ネットワークプレースの追加でアイコンを追加できる。
ApacheでWebDAV機能を実現するには、mod_davというモジュールを使うが、それを使うための諸設定についても説明が行われた。日本語のファイル名の扱いがうまくできないのが問題である。mod_davは文字コードの扱いについては期待とおりの処理をしていないが、クライアントがUTF-8を要求しているのに、実際にはShift-JISのコードが行われる。そこで、IIJの山田氏によって開発されたmod_encodingによってサーバアップロード時に必要な変換を行うようにすれば、日本語のファイル名も扱えるようになる。ただ、残念ながら、mod_davに取り込まれる気配がないので、可能な限りアピールをしたいとした。このmod_encodingの入手方法や必要な設定についても解説された。Acrobat 5での利用例も示された。また、Nautilusも対応しているという話もあったが、機能は組み込まれていない。UNIX系では、SkankDAVを利用することで対処できるだろう。WebDAVを利用する時にはセキュリティには気をつける必要がある。最低限でも参照以外はBASIC認証を設定する必要がある。また、書き込み可能なディレクトリにCGIの実行権限を与えるのも危険をはらむことになる。
WebDAVの今後としては、更新日や作成者を指定したファイル検索が組み込まれるが、IIS等では一部サポートされている。そして、Access Control List(ACL)によって、アクセス権限の設定ができるようになるが、コメント募集を閉め切られており、間もなく実装が始まる予定だ。さらに、バージョニングについても作業が行われて実装が行われ始めているものの、稼動するものが得られない状態である。最後に、WebDAV関連のリンク集を紹介した。
関連リンクびぎねっと