ここ最近、Web開発関係のセミナーが盛んに開催されている。2001年8月2日には、ニッポン放送とMOSAの主催による「ウエッブアプリケーション ソリューションセミナー」が、東京・お台場のフジテレビ本社ビルで催された。アップルが発売した開発環境であるWebObjectsに焦点をあてたもので、会場となったマルチシアターには、開発者など数十人が訪れた。 セッションの内容は、基調講演とアップルによるデモを交えた製品紹介となる午前の部と、実際にWebObjectsで開発を行なっている事例や、システム構築における問題点などを解説する実践的な内容となる午後の部に分かれており、最後には参加者から寄せられた質問に、講師陣が回答するQ&Aも設けられた。
〈基調講演―「小さく始めて大きく育てる」〉 最初に壇上に立った、日経BP社パソコン局主席編集委員の林伸夫氏は、「Webアプリ導入の神髄! 小さく始めて大きく育てる」と題して、Webで展開するシステム開発の現状と、そのなかにおけるWebObjectsのメリットを事例とともに紹介する講演を行なった。 現在、Web上で展開しているサービスにはさまざまなものがあり、用いる製品も多様になっているなかで、林氏は、個人・小規模に適したファイルメーカーから、企業・大規模向けのWebSphereやWebLogicなどの製品をカテゴリー分けして紹介。現在主流となっているものとしてJavaを挙げ、小規模から大規模まで各種のシステム構築に広く用いられていると述べた。そのうえで、Javaに完全対応し、また安価かつ開発効率が高いWebObjectsは、ほぼあらゆる規模に適合できる非常に優れたWebアプリケーション開発環境であると語った。2000年度と2001年度のWebアプリケーションサーバー出荷実績(日経システムプロバイダの調査に因る。2001年度分は予測値)を示し、この市場がさらに大きくなることは確実であり、そのなかでWebObjectsは今後大きく普及してほしいという期待も示した。 自身の経験として、日経BP社が立ち上げたブックレビュー社が行なっているオンライン書評サイト「Book1」のシステム構築にあたってWebObjebctsを選択したことにより、非常に短期間(4月スタートのプロジェクトを7月公開までに仕上げるという突貫作業だったという)でシステムを運用段階に持っていくことができたと語った。実際に一般公開されているシステムの開発に関する話だっただけに、「最初は小規模なシステムを用意し、徐々にコンポーネントを追加することでシステム規模だけでなくビジネスとしても大きく育てていける」という氏のコメントにも大きな説得力が感じられた。
〈セッション1―WebObjects最新情報〉 基調講演に続いたセッション1では、アップルコンピュータ株式会社プロダクトマーケティング課長の鷲滝薫氏、同社WebObjectsサポートエンジニアの野村さやか氏によるWebObjectsおよびMac OS X Serverの特徴や最新情報、開発作業デモンストレーションが行なわれた。 鷲滝氏は、WebObjectsが、NeXT社の時代から受け継がれてきたパワフルなインターネットアプリケーション開発環境であり、リリースからすでに6年が経過したなかで着実に実績を積み重ねてきたことを強調。最新バージョンのWebObjects5がPure Java環境にフル対応したことで、今後より運用事例が増えていくことになるだろうと語った。すでに知られているように、WebObjectsは不特定多数を相手にしたWebアプリケーションや、特定業務向けに適したJavaクライアントアプリケーションの開発に威力を発揮するが、同時に導入コストが安価であることや製品構成が極めてシンプルであることを提示。同種の機能・環境を実現する他社製品と比較して、極めて有利であるとコメントした。 アップルが運営しているAppleStoreやTech Info Library(TIL)など、WebObjectsを用いた自社システムの紹介では、クロック周波数400MHzのPower Mac G3(B&W)1台で、一日10数万ページビューというアクセスがあるTILのシステムを運用していると語り、高い負荷に耐えるシステム構築にも何ら不足はないことをアピールした。 今後は必要な情報をより積極的に提供していきたいと語り、現在リファレンス類の日本語化作業を進めているとした。今後Webなどを通じて配付していきたいとしている。また近々、書籍なども出てくることになると語り、情報不足とされる現状を打開すべく活動していることを示した。サポートについては、開発運用サポートを行なうEnterprise Help Lineに、1カ月単位/3カ月単位の契約形態を追加すると語り、現場のニーズに応じた体制を整えていく旨を明示した。 野村氏が行なった開発プロセスのデモンストレーションは、今回は車のデータベースを用いて価格や車種による検索が可能なアプリケーションを作るというもの。実際にProject BuilderやWebObjects Builderを用いてその場で表示するページの内容を変更し、機能を拡張することも容易であることを実例と共に示した。また、Pure Java環境であればWebObjects5の運用が可能であることを紹介するために、別途Linuxが動いている機材を用意して、その上でWebObjects5のアプリケーションをコンパイルし、実際に動かしてみせた。Mac OS XのTerminalを使った遠隔操作であったことや、時間が短かったことが影響して実感は湧きにくかったものの、Linux上でWeObjectsアプリケーションが動いていることをMonitorで確認することができたのは、これから導入を考えている人にとって大きな収穫だったと言えるだろう。
〈セッション2―「高い生産性の秘密」〉 講師陣との懇談も兼ねた長めの昼食会を終えてから、午後の部に。セッション2では、有限会社テクニカル・ピット代表取締役の倉橋浩一氏による「WebObjectsで作る! 開発者が見せる高い生産性の秘密」と題した講演が行なわれた。 WebObjectsの特徴や利点などを簡潔にまとめた後、実際の開発作業をどのように行なうのかを、自社のWebサイトで運営しているeコマースサイトを例に紹介。「オンラインショップ倉橋屋」のページデザインをWebObjects Builderで行なう様子や、実際にページ上に設けた各種エレメントに対して必要なデータベース情報を割り付ける手順、各種の設定作業を実演。WebObjectsを用いたサイトの構築が容易であることを示した。 氏は、「WebObjectsは、最初覚えるのに時間はかかるものの、一度覚えてしまえば、そのあとはいかようにも応用することができる。スティーブ・ジョブズはこれを使うことで開発効率が2倍になると語っているが、実際に使っている自分としては5〜10倍効率が高まると思う」と語り、技術として非常に優れていることを強くアピール。Webアプリケーション開発におけるWebObjects導入のメリットを強く主張した。 (続く) |