2001年12月9日には、快技庵の高橋政明氏による「Mac OS X 10.1のヒューマンインタフェースとその実装」の講演が行なわれた。その内容をお伝えしよう(高橋氏は、コーシングラフィックシステムズに10月末まで在籍していた)。 まずはMac OS Xのアプリケーションアイコンについての説明が行われた。アイコンとしては128×128ドットのアイコンが必要になる。アイコンの作成ツールはいくつかあるが、高橋氏はIcongrapherを使っており、自由に拡大や縮小ができる点が便利だと説明した。ジャンボルーペのアイコンを作るときに、実際の虫眼鏡をスキャナーでスキャンして利用したことを紹介した。アプリケーションにアイコンを付ける方法として、アイコンファイルをプロジェクトに追加し、アプリケーション設定でファイルを追加することが説明された。 続いて、nibファイルを利用した各言語の対応についての説明が行われた。Project Builderのテンプレートとして用意されているCarbonアプリケーションについての日本語化の方法が説明された。既存のテンプレートに日本語のリソースファイルを追加し、それをInterface Builderで起動して、新規に日本語のリソースを用意して、テンプレートの内容に統合する方法がデモして示された。これにより、最初から日本語化されたプロジェクトが利用できることになる。 さらに、Mac OS X 10.1対応として、Dockアイコンを状態により変化させる方法の話が行われた。Appleから配付されているTilerというサンプルプログラムを示し、Dock上に表示される画像の様子を説明した。そして、ソースの解説も行われ、Dock上に描画する部分やイベント処理などを説明した。また、Dockメニューの作成方法についても説明され、サンプルプログラムのDockメニューにサブメニューを追加するといったことが実際にデモが行われた。Dockのメニューには自動的に追加される項目があるが、それらにさらに項目を追加することになる。なお、Dockメニューだけしか操作できないようにするのは好ましくなく、通常のメニューあってよく使う機能をDockのメニューに入れるようにすべきだと指摘した。Dockは隠すこともあり得るので、Dockからしか得られない操作やDockにしか表示されていない情報があるという情報は避けるべきだとした。 続いて、サービスメニューへの対応についても解説された。10.1ではCocoaとCarbonでの違いがなくなり連係もできるようになった。これも昨日のアップルからのセッションでも概要が説明されているのだが、資料やCarbonイベントでの実装方法などの概略が説明された。実際に作ったサービスを利用するサンプルプログラムをもとにして、ソース作成のポイントを説明した。サービスメニューを選んだときにやってくるイベントに対応して、やり取り可能なデータを戻す部分の詳細を説明した。サービスの提供を行う Dockのアイコンのジャンプについても説明があった。アプリケーションがバックグランドになっているときに行われ、Dockが隠れていてもアイコンが飛び出す。Cocoaでのアイコンのジャンプの方法が説明された。 さらに、Mac OS Xらしいアプリケーション、つまりヒューマンインタフェースのガイドラインに絡んだ話題も話された。Good Better Bestに区分けされた対応状況のシナリオを示す図を示しながら、そこに書かれている内容を説明した。ヘルプタグは、マウスがポイントしたオブジェクトの短いヘルプメッセージを表示するもので、nibファイルの編集作業で簡単に付加できる。Appleが示したシナリオにはないものとしてはツールバーがあるが、ツールバーのサンプルを示して説明が行われた。ツールバーのボタンなどがCommandキーを押しながらドラッグして移動できたり、カスタマイズができるもので、ここまで対応するとMac OS Xらしくなると説明された。 続いて、Mac OS Xの進化の方向についての考察が行われた。新しいユーザインタフェースが登場するかどうかはなんとも言えないが、ユーザがカスタマイズできる部分は増えるだろうとした。10.1まではきちんと使えるようにするために努力していたが、それも落ち着いてきており、その後はニーズに対応できるようなカスタマイズを可能にしてくることが予想できるとした。以前はAppleメニューがどまんなかにあって選択はできなかったが、それは改善された。シートが透けて見えるというのは、一時的なものであることを示すということであるが、ユーザとしては非常に見づらく裏が透けた紙が見づらいのと同じだが、そうした点をカスタマイズしてほしいと話した。また、メニューバーの右側にメニューを追加する方法についてもAPIとして公開してほしいとの要望も出された。また、ユニバーサルアクセスの機能は米国でのリハビリテーション法改正にともなっての対応でもあることを説明した。さらに、多様性を持たせるためにも従来の機能の復活が望まれるとした。たとえば、アプリケーションメニューの復活が挙げられる。また、「システム環境設定」のアプリケーションがSystem Preferencesといった矛盾を好ましくはないと評価した。最後に、今後も機能が増えることが想定されるが、それに対応していく必要がデベロッパにはあるだろうとして締めくくった。 |