タイトル【MacWIRE配信予定】Office v.X for MacのWordの機能を見てみるカテゴリー文書作成アプリケーション
作成日2001/12/14 16:19:38作成者新居雅行
前回はいきなりMicrosoft Office v.X for Macのマクロ機能をチェックしたが、引き続いてワープロソフトであるWord X(Microsoft Office v.X for Macに含まれているWord)の機能を紹介しよう。ワープロというアプリケーションはもはや何の説明も不要になった感もある。もちろん、今でも紙の文書を作る必要がある人は毎日使っているかもしれない。さまざまな通知などはやはり紙が多い。だけど、仕事がネットワークにシフトすると、伝達は電子メールで行うということも多くなり、ワープロを使う機会が減っている人も多いだろう。ワープロは、報告書、レポートといったまとまった文書を作成するということで使うということになっているかもしれない。その意味では、アプリケーションソフトの代表格ではあるものの、近年は存在感が薄れているだろう。
そのWord XのWord 2002との違いについては、もちろん、Mac OS Xネイティブで稼働するというのがいちばんの特徴で、Aquaユーザインタフェースに従っており、アイコンやダイアログボックスなどのデザインが変更されたという点はあるものの、それを除くと大きな機能的な変更はない。変更点の1つは不連続な文字列範囲を同時に選択できるようになったことである。Commandキーを押しながら文字列をドラッグすると不連続範囲を選択できるようになったことだ。また、文字列の検索ダイアログボックスには「検索結果をすべてハイライト表示する」というチェックボックスがあって、これをオンにすると、検索した文字列をすべて選択するということも可能である。文書を作ってから、その中の「Microsoft」という文字をまとめて選択して、違うフォント設定にするということも手軽にできるというわけだ。
もう1つの機能追加点は、書式だけのクリアができるようになった点である。「編集」ニューの「消去」から「書式」を選択すればいい。そうすれば、その段落のスタイルにのっとった書式に戻る。ただ、これはWord 2001にもあった機能で、control+スペースというキー操作で可能であった。しかしながら、キーボードメニューでU.S.を選択しておかないと違う機能が働いていたので、実質的には使いにくい機能であったことは確かだ。Word Xではメニューから確実に利用できるということになったし、スタイル選択のドロップダウンリストでも書式だけの削除ができるようになった。
ところで、Office v.X for Macには前のバージョンと同様、MS明朝やMSゴシックが含まれる。製品に含まれる日本語フォントは次の通りで、Office 2001と同じようである。他に英語フォントもいくつか含まれる。今回も「MS P明朝」「MS Pゴシック」は含まれていない。

  • MS 明朝
  • MS ゴシック
  • DFP祥南行書体W5
  • DFP太丸ゴシック体
  • DFP中楷書体

これらのフォントは、システムが用意したフォント関連フォルダには入れられていない。Microsoft Office X/Office/Fontsというフォルダに入れられている。つまり、アプリケーションをまとめたフォルダの中にあるというわけで、もしかしたらOfficeしかこれらのフォントを認識しないようにするための措置かと思ってしまったが、実はこれらのフォントを適切なフォルダに移動しないといけないということが、“お読み下さい”に書いてあった。もちろん、ホームフォルダのLibraryフォルダにあるFontsフォルダに、ファイルをコピーすれば済むのだが…もしかして、/System/Library/Fontsにインストールを試みるもアクセス権がないので実はフォントがインストールされない…なんてことになっているのじゃないかと勘ぐってしまう。もっとも、これらのフォントが入っていなくても圧倒的多数の方々は、Office 2001がClassicのシステムフォルダにインストールされているので、Classic側にあるMS明朝とかが見えてしまって使えることになる。だから当面は気付かないし大きな問題ではないと言えばそうなのだが…。いつかClassicを使わなくなったり、あるいはClassicシステムを入れ替えたときに「MS明朝がない」と叫ぶことになるかもしれない。もっとも、その頃にこんな記事を覚えていていただけるとは思えないところでもある。
もちろん、Office Xでヒラギノフォントなどをつかってもかまわない。ただ、ヒラギノフォンとだとアンチエイリアスがかかるのに対して、MS明朝やMSゴシックはアンチエイリアスがかからない。アンチ・アンチエイリアスな方も多いかもしれないが、アンチエイリアス文字になれていると、何か違和感を感じるという気もする。それに、アンチエイリアスのオンオフが混在するということにもなってしまう。

 

なお、プレス説明会での説明にあったように、Unicode入力はできない。ことえりのパレットで、Unicodeにしか割り当てられていない文字を入力しようにも、何も入力されない。半角のバックスラッシュ(0x005c)は、半角の\マークとなる。この点は、従来のシフトJISの枠組みからは出ていないところである。

ということでそれほど大きく変化したわけではないWord Xはトピックは少ないので、やや私見を交えての評価をしてみよう。ともかく紙の文書を作成する機会が減ったこともあるのだろうが、ワープロを起動するのは何十ページにもわたるレポートを書くような場合などに限られてきてしまった。もっとも、チラシなどを作る場合でもワープロを使うが、むしろそうした用途ではグラフィックス系ソフトやレイアウトソフトを使う人も多いかもしれない。
レポートのような文書の場合には、細かなレイアウト機能よりも、スタイル機能といったところをよく使う。Wordのスタイル機能はけっこういろいろできるものではあるけども、使い勝手という点ではちょっと厳しいものがある。特に、段落に自動的に番号を付けて、「1.1節」みたいなナンバリングを自動的にさせようと思っても、これがけっこう思い通りにいかない。それでも、Word Xは設定パレットからスタイルをすぐに選択できるし、そこで書式の消去もできるなどの改良も見られる。Word XPだとさらに作業ウインドウという文書の右側に出る領域で、ヘルプメッセージを交えて作業ができるユーザインタフェースがあるのだが、ここでスタイルの作業をしたら大きくはまってしまったということもある(その機能を使わなければいいだけなんだが…余談でした)。
一方、こうしたワープロ作業は、AppleWorksで十分という意見もあるだろう。もちろん、十分なことも多いのであるが、スタイルを使いたいとなると、AppleWorksはいきなり難解なアプリケーションとなる。Wordも完璧ではないのだが、レポートを作るような用途だとAppleWorksのスタイル機能よりかはまだ使いやすいし柔軟であると感じるところである。
レポートの類いとなると、図を作ることも多い。写真一発ならまだしも、オブジェクトを組み合わせて概念図などを作る場合には、実はWordだとけっこう大変な思いをしないといけない。いろいろなテクニックがあるのだが、Windows版のWord XPでは「描画キャンバス」という機能が加わっている。文書内に、描画領域を埋め込み、そこで描画することで、四角い領域での作図が容易にできる。この機能によって作図はかなりスムーズにできるようになったと言える。ところがこの機能がないと、図形を描くもまずは本文と重なってしまうし、そこそこ作り込んでグループ化して周り込みを設定するなどけっこう面倒なのである。修正するには、グループ化を解いてオブジェクトを入れ替えてなどとかなり面倒になる。せっかくWord XPに入った描画キャンバスはぜひともWord Xにも入れてほしかった機能である。
Windowsの世界ではワープロソフトの代名詞になったWordであるが、特に日本のマックユーザに受け入れられていない多くの理由が、安定性とスピードだろう。こればっかりはしばらく使い込まないと分からないのであるが、さすがにMac OS Xだからということと、従来品を改良しているということもあって、以前よりも安定性はあるような気がする。少し作業をしてみたのだが、今のところ落ちたことはない。(Office 2001ではけっこうよく落ちていた…。)スピードについても、Word 2001よりはスムーズだと感じるが、やはり独特のレスポンスのタメが感じられるアプリケーションである。それにWindows版のWord XPと比べると、やっぱりWord XPの方がスムーズに使えるような気がする。それでも、以前よりかはWordによる文書作成は、Word Xの登場でスムーズになっているとは言えるだろう。
関連リンクMicrosoft Office v.X for Mac