2月の前半、日経産業新聞を見ると、主婦の友社が角川書店と提携を解消するという記事が目に入った。主婦友が解消されるのなら、ローカスはもっと前に解消されているだろうと思い、すぐさま社長らにメールをしたが、なかなか返事はもらえない状態だった。出勤している人にメールを打ってみると、やはりというか幹部は相当バタバタしているようなのである。このときに、いくつかの流れを想定してみたが、やはりどう考えてもMDOnlineをローカスで続けるのは無理となると思った。たとえば、角川と提携がなくなるなどした場合でも、他社の流通を使って出版は続けられるだろう。だけど、今まで通りにはいかなくなるので、会社としてはスリムにならざるを得ない。そうなると、リストラ対象になるのは目に見えているというのが1つの想定パターンだった。また、いきなり会社が終わってしまうという、前月のエクシードプレスパターンも考えたわけではないが、「まさか」という気持ちは強かった。 MDOnlineも、それまでに、つまり2001年中であるが、いろいろなところに追加や新規に支援をお願いしたものの、ことごとく取得に失敗をしたため、もはやすがるところはなく、読者に直接販売することしか道は残されていなかったのである。たとえば、個人となって出版するとなっても、支払い等での不利があるので、今までほどの読者数を獲得できるかというとやはり無理だろう。あとはどこかで出版させてもらうということになるが、赤字が分かっていてそんな出版をやるような酔狂なところは今時存在しないのは明白だ。つまり、ローカスに残る意外にMDOnlineの継続の手段はないことははっきりしていた。 果たして、その後には「なんとかなった」「大丈夫」という声も聞こえたものの、事態は急展開し、2月末に従業員全員解雇となった。MDOnlineで採算が取れていないからリストラされたというよりも、会社自体をリストラしたというわけだ。ローカスは役員4人だけの会社となって、今現在も存続している。おそらく、社長の性格からして、解散なんかにして負債をチャラにしてしまうような不義理を避けるためなのではないかと想像しているが、そうした話を聞く猶予もなく、会社を去ることになったのである。いずれにしても、解雇→廃刊のシナリオをスピーティかつ粛々とすすめるしかなかった。
もっとも、MDOnlineというものがどういうものなのかということをローカスの社内的に認知されていたかは疑問である。実は、ビジネスをどうすすめるという話は、創刊の頃は藤森さんとあれこれ話をしたけど、その後は1年ほど前だったかに、社長と軽くディスカッションしただけである。また、ある時期まではプロモーションの担当者へ配信していたが、ここ最近はローカスでは誰ひとりとしてMDOnlineを読んではいない状況だった。経理担当者にとってはちょろちょろと郵便振替口座にお金が来るなという程度に思えるくらいなのではないだろうか。私自身は解雇→廃刊というシナリオを想定するも、会社にとっては従業員を解雇するより大きな波紋が一部のコミュニティに流れるということは想定していなかったと思われる。 解雇されるのはストレスであるとか言われながらも、最近はむしろ前向きにとらえる風潮もある。だけど、結びつきは弱かったとは言え、12年半も勤めた会社であるし、サーバのrootのパスワードも知っている(笑)ほどの会社である。私に取っては解雇と心血傾けたMDOnlineの廃刊がいっしょにやってくるのである。寂しいとか口惜しいとかそんなものとは違って、いちばん近いのは「とほほ感」というところだろうか。たとえ、MDOnlineがいくらかの赤字があっても、ローカスに対しては全体的には収支がとれるように働くことができる自信はあった。だからローカスが続いてくれればと思っていたが、その枠組みには残れなかった。MDOnlineというビジネスはたたんでしまうことになったが、負け惜しみと言われようが勝てなかったわけではないことを強調したい。ロシアンルーレットの最後の引き金が引かれたのが私の番だっただけなのである…と思いたい。
∽∽∽∽∽∽∽MDOnlineは以上∽∽∽∽∽∽∽[新居雅行]∽∽∽∽∽∽∽ |