Macintosh Developer Online (MDOnline)


2000年5月27日発行号 - スタート!小池邦人のプログラミング日記



みなさん、お待たせしました。今日は小池さんの最初の原稿をお届けいたします。小池さんは雑誌や書籍、あるいは@NIFTYなどでも有名ですが、なんと言っても本業で、しかもMacintosh環境でのプログラマとして御活躍の方です。MDOnlineの講読者の方々にとっては、同じフィールドの方も多いかと思いますので、知りたかった話やうなずける話もどんどんと出てくるかと思います。小池さんの執筆間隔は特に決まっていませんので、いちおう不定期連載という感じです。また、MacWIRE Onlineにも配信される予定となっています。だけども、MDOnlineの講読者の方が最初に小池さんの原稿を読むことができます! 感想や励まし、叱咤激励など、小池さん宛に送っていただければと思います(MDOnline宛に送っていただければ転送します)。
さて、WWDC 2000おみやげの当選者(敬称略)ですが、以下の方となっております。Palmのプレゼントは今日までですよ!
 Fly’sのマウスパッド当選者:河本 公夫
(新居雅行 msyk@mdonline.jp


【小池邦人のプログラミング日記】2000/5/26<WWDC 2000 セッションに思う>

今年も無事にWWDCが終了しました。参加者は、給食付きの5時間授業を毎日受けているようなものでして、見た目よりしんどい5日間なのです。今回は、Jobsの基調講演以外は機密扱いとなってしまいましたので、各セッションの内容を詳しくご紹介できなくて残念です。Jobsが基調講演で「Mac OS Xは7月にパブリックβ」とさりげなく(なんの抑揚もなく)言い換えた時には、一瞬会場全体が狐につままれた状態になりました。でも「こちらの方が妥当なスケジュールだよなぁ」と言うのが、会場で会ったプログラマー仲間の一致した意見です。なにせ、Carbon化の目玉となるCarbonLib 1.1は未だd版ですし、周辺機器のドライバ開発についても、会場では「今から戦いは始まるのだ!」という雄叫びが上がっていましたので...(笑)ただ、Carbon化されたInternet Explorer 5が、Mac OS X上でちゃんと動いている姿は(基調講演でデモされた)同業者に愛(?)と勇気と希望を与えたことも事実です。そして、私が参加したセッションのデモでは、Mac OS Xのストール(ハングアップ)は一度も起きなかったことを付け加えておきたいと思います。

WWDCでは、特定のテクノロジーに関連した1時間半のセッションが、6会場で並行して行われました。例えば「Mac OS X Overview」とか「OpenGL Tech.Intro」といったテーマ別にです。今年のWWDC会期中に行われたセッションは全部で130以上! セッション会場がコンベンションセンターだけでは足りず、道を挟んだ隣のサンノゼ市民会館を間借りするほど内容が充実していました。通常、最終日の午後にはセッションはないのですが、今年はそこまでもぎっしりとスケジュールが詰まっていました。それだけ、Appleからデベロッパーへ提供すべき技術内容が多岐に渡った(濃かった)と判断できます。ただし、今年はセッション数が多すぎて、いつもは会期の後半に用意されるセッションの再演(一度行ったセッションを再度行うこと)が皆無で、参加をあきらめたセッションが例年より多く、消化不良の感もなきにしもあらずでした。同じような内容や、2つを1つにまとめても時間的に不都合のないセッションも多々あったので(20分で終了してしまうとか...)来年はもっとシェイプアップして、ぜひ再演セッションを復活させてもらいたいと思います。

WWDCでは、Appleの一押(花形)テクノロジーに関するセッションが最も多く組まれ、一番広い会場を占有するのが伝統となっています。「Mac OS 7、8、9」「Copland」「Rhapsody」「QuickTime」「OpenDoc」「AppleScript」「QuickDraw 3D」「QuickDraw GX」などが歴代の蒼々たる花形です。まあ、そのうちかなりの割合が消滅してしまったのはご愛敬なのですが...(笑)、当然、今年の花形は「Mac OS X」です。全セッションの半分以上は、Mac OS Xテクノロジーに関するものでした。なにせ、Java環境も含めてアプリの動作環境だけで4つもあるOSですから、自然とセッション数も多くなります。続いて多かったのが「WebObjects」に関するセッションでした。こちらの充実ぶりには少々驚いたのですが(QuickTime関連よりずっと多かった)、つまるところ、AppleはWebObjectsを次世代のキラーアプリに育てようと目論んでいるようです。(Jobsの基調講演でも値下げの話があった)ただし、WebObjectsがiMovieのように即座に華やかな表舞台に登場できるかと言えば、それは難しいような気もします。まずはMac OS Xの成功が第一条件、そして簡易版を開発するなどして幅広くユーザにアピールすといった、Apple側のさらなる工夫が必要ではないでしょうか?

さて、私が今回一番注目(参加)したのは、「Interface Builder」や「Project Builder」といった「Mac OS Xのソフト開発環境」に関連するセッションでした。今までのApple純正の開発環境と言えば、太古から脈々と続くMPWと、進化が止まったResEditぐらいです。(HyperCardもありましたが..)、Appleは、ここへ来てやっと「Macintoshは何かを創造するための道具」「それを生かす道具を創造するための優秀な道具が不可欠」ということに気づいてくれたようです。純正開発環境を整備することは、教育関係などにMacintoshとMac OS Xを拡販するためにも大変重要な戦略でしょう。今回のWWDCに参加して、Apple側にこうした強い意欲を感じ取ることができたのは、大きな収穫でした。Mac OS Xは、派手なAquaの登場により色々と物議を呼びましたが、Javaの本格的なサポートを含めた強力な開発環境が装備されれば、我々にとって非常に面白い道具になる予感がしています。

関連リンク:オッティモ
カテゴリ:小池邦人のプログラミング日記


Ethernet Updateの詳しい文書が公開

先日公開されたEthernet Update 1.0に関するより詳細な情報が、Tech Info Libraryで公開された。特別なネットワーク環境での性能改善に使われることが記載されており、通常の利用で問題がない場合には適用する必要はなさそうだ。しかしながら、ネットワーク管理をしている人は一読しておく必要はあるだろう。

◇Ethernet Update 1.0: Description
 http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n25146

Ethernet Update 1.0についての説明。特定の機種において、10BASE-2/5のネットワークで、しかも巨大なセグメントで特別な設定を行っているような場合のトラブルに対処する。Mac OS Romは3.8にアップデートされる。

◇Ethernet Update 1.0: Determining Whether to Install It
 http://til.info.apple.com/techinfo.nsf/artnum/n25147

Ethernet Updateが必要なのはネットワークデータのやり取りができなくなっているような場合である。そうした現象が発生するのはある特定のネットワークの状態において、1999年11月以前のスロットロード方式のiMac、Power Mac G4、そしてすべてのFireWire搭載のPowerBookとiBookを利用している場合だ。問題が発生しているかどうかはMac OS 9のCD-ROMに含まれているSNMPのソフトウエアを利用して判断できる。インストール方法や判断の方法が詳細に記載されている。

関連リンク:Ethernet Update 1.0
カテゴリ:Knowledge Base(旧TIL), ネットワーク


ポートに接続して直接データのやり取りができるソフトウエア

Ekim Softwareは、TCPのポートとの直接のやりとりが行える「Socket Sifter」のVer.1.5をリリースした。ポートのリッスンを行ったり、ポートを通じての接続などが行える。アドレスとポート番号を指定して、ターミナル的な画面でデータのやり取りができる他、ポートのスキャンやOpen Transportのエラー一覧などの表示も行える。ネットワーク管理でTCPのポート接続をして直接のやりとりを行うことや、あるいはTCP/IP向けのソフトウエアのデバッグ作業などで利用できるだろう。Lite版はフリーで、Pro版は$10となっている。Pro版はAppleScriptに対応している。

関連リンク:Socket Sifter
カテゴリ:ネットワーク, その他のインターネット


2000/5/26に公開されたTIL-Jの記事

日本語での技術情報を提供するTech Info Library-Jで、5月26日に以下の記事が公開されている。文書のアドレスと要約は以下の通りだ。

◇25140JN :iMovie: “SoundLib--SoundConveterSetInfo”が見つからないため、開くことができません
 http://til.info.apple.co.jp/cgi-bin/artnum?id=25140
サウンドマネージャが正しく組み込まれているかを確認する。サウンドマネージャがないようなときのこうしたエラーが出てくる。

◇30570JN :AppleShare IP: ダイアルアップ接続による送受信のためのメールサーバ設定
 http://til.info.apple.co.jp/cgi-bin/artnum?id=30570
AppleShare IPのメールサーバで、PPP接続を使ってインターネットメール配信に利用することができる。その場合の設定方法が詳しく紹介されている。

◇60725JC :Mac OS 9: インストール前にお読みください (Read Me)
 http://til.info.apple.co.jp/cgi-bin/artnum?id=60725
Mac OS 9のReadMeファイルの内容。

◇60730JN :Final Cut Pro: PAL クリップ再取込み時の問題
 http://til.info.apple.co.jp/cgi-bin/artnum?id=60730
Final Cut ProでPALフォーマットのビデオ利用時の問題点について。

◇60200JN :Mac OS 8.6: システムに必要な環境
 http://til.info.apple.co.jp/cgi-bin/artnum?id=60200
◇60364JN :Mac OS 8.6: Language Kit Update
Mac OS 8.6の利用環境。PowerPC搭載機やハードディスク容量などについて。

 http://til.info.apple.co.jp/cgi-bin/artnum?id=60364
Mac OS 8.6に含まれるLanguage Kit Updateは8.5のものだが、問題なく利用できる。

関連リンク:Tech Info Library - Japan
カテゴリ:Tech Info Library-J