Macintosh Developer Online (MDOnline)


2001年5月22日発行号 - WWDC 2001基調講演



基調講演が20分ほど延長して終わりました。いちおう、基調講演の内容をすべてそのままとりあえずお届けします。しかし、ちょっと長く、何を言いたいのかといったエッセンスは伝わりにくいと思いますので、改めて解説記事をもう1本送ります。期待されていたQ&Aはありませんでした。そして、今日からMac OS Xのバンドル、WebObjects 5、Mac OS X Server 10.0の出荷が開始されるというのがニュースです。また、17インチの液晶ディスプレイが$999で発売されるなど、液晶ディスプレイが値下げされたのがニュースになるかと思います。こちらでの午後のセッションのスケジュールを見ながら記事を作成しますので、しばらくお待ちください。それから、写真はいちおう撮影していますが、距離があったので、あまり期待しないでください。写真をアップしたら、mdo-dの方でアドレスをお知らせします。
(新居雅行 msyk@mdonline.jp


WWDC》WWDC 2001が開催、Mac OS Xを今日からプリインストールを開始

2001年5月21日、WWDC 2001が開催し、基調講演が行われた。ファイアサイドチャットとして、CEOのスティーブ・ジョブズ氏が来場者の質問に答えるのではと推測されていたが、開始前のステージスクリーンにはまさにその名前通り、暖炉の火がゆらいでいる。もちろん、ビデオ映像によるファイアではあるが…。今年は人数は少ないかなとも思われていたが、基調講演会場を見る限りはかなりの人数が集まったようだ。開場と同時に人がなだれ込み、前の列から埋まっていく。いつもと変わらないWWDCの風景である。チェロソナタがPAから流れ、刻々と開始時刻が近づいてきている。
スティーブ・ジョブズ氏は、Mac OS Xのパッケージを手に、定刻通りに登場だ。満場の拍手で迎えらた。そして、「今まで何度もこのステージに立ったが、今回は将来の話はしない」とし、すでに発売されたMac OS Xを紹介した。「アップルに来たのはWindowsを使いたくないからだ」と話し、大きな拍手で迎えられた。まず、ハードウエア製品としてはiBookをリリースした。すばらしい製品であり、クールな製品で、すでに大量に出荷されていると説明した。そして、おなじみのiBookのビデオ(Webサイトで公開されているもの)を流した。また、米国で流しているiBookのCMも流した(飛行機の中でビデオ編集をやっているという笑える内容だ)。
17インチのCRTディスプレイを見せたが、これが最後のCRTディスプレイになるとした。そして、スタンドアロンのディスプレイは、すべて液晶ディスプレイになると説明した。Appleはデジタル接続やUSBハブも組み込まれており、コンピュータから電力を取り出し、1つのケーブルで接続できる。22と15インチのディスプレイがあることを説明し、22インチは2499ドルに値下げをする。15インチは599ドルに値下げをする。そして、2製品の中間に当たる17インチのStudio Dysplayを発表し、6月の最初に出荷される予定だ。価格は999ドルとなっている。
Mac OS Xの話に移った。Xはすでに出荷されて58日経過し、600以上のネイティブアプリケーションがすでに出荷されている。MacWorld誌の調査では、読者の86%がMac OS Xを利用できる機種を持っており、68%がすでに購入しており、82%はネイティブアプリケーションが出ればそれをすぐに使いたいと考えており、57-82%の人が早くネイティブアプリケーションに切り替えたいと考えているといった結果が出た。つまり、現在のアプリケーションを使うのをやめて、ネイティブアプリケーションを使おうとしていることを意味している。
Appleがこれからすることを紹介した。まずはOSをアップグレードし続けることだ。フィードバックを受け付けており、出荷後に40,000件の情報が寄せられた。デベロッパーからはパフォーマンスやツール、ドキュメントといった要望が寄せられた。1000人のソフトウエアエンジニアがXの改良に今は取り組んでいる。ソフトウエアアップデートはすでに3回行っており、うまく機能している。
2番目にはネイティブアプリケーションを出荷することである。そして、越えないといけない山があるとし、右肩上がりのグラフを示し、7月以降に多くのアプリケーションが出荷されるようになるとした。ネイティブアプリケーションとしてはMacromediaのFreeHand 10を紹介し、MacromediaのSenior Vice PresientのTom Hale氏が登場し、ソフトウエアの紹介を始めた。すべてAqua対応となっており、性能の改善が可能となった。ズームなどのスピードが大幅にアップできたとした。そして、マルチページの文書を示し、マスターページなどを使った編集を紹介した。
続いて、FileMakerが紹介され、PresidentのDominique Goupil氏が登壇した。昨年150万コピーが出荷されたソフトがMac OS Xのネイティブに対応した。Xの出荷後50日で製品を出荷できた。また、Webパブリッシングした結果と同一になることを示し、PDFフォーマットの取り扱いを紹介した。すでに出荷しており、12月にはCocoa対応のServer版も出荷される予定となっている。
いずれのサードパーティも、Appleのサポートによって早期の製品出荷が可能であったことを紹介し、Appleに対して謝辞を表明した。
そして、スティーブ・ジョブズ氏に戻り、Mac OS Xのアーキテクチャについて、フレームワークについての説明が行われた。そして、Appleでフレームワークを担当しているScott Forstall氏にバトンタッチした。そして、Cocoaは次のキラーアプリケーションを作るためにあると紹介した。Cocoaはロバストでオブジェクト指向のフレームワークであり、アプリケーションを容易に作成できる。Interface Builderを使ってCocoaアプリケーションを作るところをデモで示した。ユーザインタフェースのガイドラインをInterface Builderを取り込んであり、レイアウト時にガイドラインなどを出すようになっている。実際にビデオ編集を行うようなアプリケーション作成をデモした。カスタムクラスを利用して、ボタンなどを線で結び素早くアプリケーションを作る。そして実行させ、ムービーをいくつもつなぎ合わせたり、あるいはスプリットするようなアプリケーションの動作を自分で撮影したムービーを利用して説明を行った。作成したコードはカスタムクラスを作るときだけで、デモの上ではプログラムを1行も書かないでアプリケーションを作り上げている。
ジョブズ氏に戻って話が続けられた。Java2やUNIXといった手法でもアプリケーションが作成できることを説明した。UNIXの安定性とパワーに、Macのシンプルさとエレガンスを加えたのがMac OS Xである。バイオテクノロジーなどUNIXを使っているような分野の人たちがMac OS Xに興味を持っている。そして、AppleはUNIXの最大の供給者になることになると説明された。
3番目にやることは、Mac OS Xをハードウエアにプリインストールするという必要があると説明し、これまでは7月よりプリインストールを始めるとしたが、そうではなく、今日からプリインストールをすることにしたことを表明した。Mac OS 9が最初に起動されるが、Mac OS Xに切り替えることができるので、すぐに切り替えてもらいたいとした。今日出荷されるMacintoshから、すべてのものにMac OS Xが追加費用なしにインストールされているようになっている。

そして、25の直営小売店を米国で開催することについての話に移った。先週、2店舗が開店し、300のソフトウエアを販売している。小売店展開するのは成長を促すためだ。現在Macintoshは5%のシェアがあるが、ベンツとMBWのシェアを加えたのと同じくらいである。95%の人はアップルを考慮しない人たちなので、残りの95%を獲得するための戦略である。そして、新聞広告の内容を紹介した。そして、もう1つはデジタルハブになるという戦略である。Mac OS Xをデモし、iTunesを見せたりムービー作成のデモをする場所がほしかった。PowerBookのユーザに調査したところ、62%がデジカメ、44%がビデオを持っているなど、PCマーケットの数値よりも2倍の所有率を示している。こうした機器を接続して使うところをショップで見せることができる。そして、販売店の「ゴールドスタンダード」になり、見本を示すととも、失敗をするとしてもその実例を示すものとなりたいとした。開店より2日で、1000近いソフトウエアの売上があり、本体も含めて記録的な売上を示した。そして、作成されたビデオを紹介した。直営店の様子をジョブズ氏が紹介するといった内容のものだ。最後の締めくくりが「ソフトウエアを作成してくれれば、この棚を追加しますよ」といったものだ。(ここまでが前半の1時間である)そして、開店の様子を示したビデオも流された。列を作っている客がやたら盛り上がっており、全米はおろか、世界中から開店を目指してやってきた人がいたようだ。ショップでの買い物客のインタビューなどを示し「Shop Different」で締めくくった。
(続く)

カテゴリ:Mac OS X, イベント


WWDC》基調講演でMac OS Xの目標を詳しく紹介

WWDC 2001の基調講演の後半を紹介しよう。ソフトウエアエンジニアリングの副社長Avadis Tevanian, Jr.氏が紹介され、登場した。Mac OS Xで何が提供されているかについての説明をするとした。現在、製品として存在するが、将来のためのプラットフォームであるというのが今でも重要なことだとした。ソフトウエアの開発は長期に渡るため、数ヶ月はあまり問題ではなく、何年かして振り返ってどうかということを検討すべきことである。だから、ずっと使い続けるOSであり、自分がアップルにいる間にはずっと使い続けたいと考えていると話した。
Mac OS Xのゴールの1つは、UNIXのパワーとマックのシンプルさを兼ね備えることである。保護メモリ、仮想メモリ、プリエンプティブなマルチタスク、より使い勝手がよくなったマルチスレッド、マルチプロセッサ、BSDのUNIXサービス、オープンソースといった特徴が説明された。そして、大きなコミュニティを形成していることを強調し、それらをAquaユーザインタフェースを含めたパッケージとして提供できるものとした。そして、妥協や譲歩をまったくしていないとした。
デモとして、E-muのTim Swartz氏が紹介され、MIDIについてのデモが行われた。Mac OS XではMIDIはビルトインされており、BGMに合わせて演奏を行ったが遅延無くできることを示した。そして、サウンドを再生させながら同時にEメールのチェックやWebを見ても、遅延がないことを示した。次のデモに移った。UNIXはスリープや復帰をしなかったが、それをできるようにする必要があった。スリープからの復帰にすぐできることをPowerBook G4で実際に示した。
2つ目の目標は、オープンスタンダードを取り込むということである。新しいものを作るのではなく、オープンなスタンダードを提供する方がいいとし、Apacheなどを始めとしてそうしたものをMac OS Xに採用してきている。2Dグラフィックスでは、Quartzという技術を使い、各種のフォントやPDFのイメージングモデルを採用している。アンチエイリアスやトランスペアレントもサポートしている。そして、OpenGLを組み込んでおり、ゲームで広く使われており、Mayaでも利用されている。QuickTime 5ではSkip ProtectionやFlash、Cubic VR、MPEG-1のストリーミング、DV Codecといった機能を紹介した。ColorSyncによるカラー補正についても説明された。ウインドウはダブルバッファされており、ウインドウの表示が早くなる。また、ピクセルごとにアルファチャネルを利用できて透明化ができる。トランスフォームとワープ(Dockにしまい込む)についても説明された。
続いてデモが行われた。ビデオを再生しながら、Dockにゆっくりしまい込み、その間、ビデオを再生したままアニメーションが行われ、Dockでの表示ができることを示した。また、3Dグラフィックスとムービーのブレンドができることを示した。
3つ目の目標としては、キラーアプリケーションを実現するということだ。Carbonを開発し、すでに存在するコードを守るとともに、さらに進化して利用できるようにしたものである。つまり、Mac OS Xに最適化できるようにした。また、Mac OS 9でもCarbonを使えるようにした。そして、Cocoaについて、完全なオブジェクト指向による生産性の向上やコードを書かないで機能を追加するといったことが可能になる。また、機能も豊富に用意されている。フレームワークに機能が用意されているので、アイデアがあれば、それを実現することができる。CocoaはOSに組み込まれている。Java2をMac OS Xに組み込んであり、Aquaのインタフェースを実現している。
フレームワークを使うにはツールが必要になる。そこで、デベロッパーツールをAppleは提供している。ツール開発にこれまでも投資をしてきたが、今後も投資を行って改良を続けるというのが4つ目の目標となる。パフォーマンスツールやリーク探知などのツールもいっしょに配布し、最適化のための機能も提供している。デベロッパーツールをすべてのMac OS Xに含めている。そして、Developer Toolsの最新版を、来場者には配布した。
そして、Project Builderでのデモが行われた。ツールを使って問題を解決する実例を示した。CPUモニタを見ると、アプリケーションを使ったときにCPUの時間をすべて使っている。これは、Mac OS Xでは問題のある動作であり、Samplerというツールでアプリケーションの動作を調べるということができる。そして、時間を使っている部分を見つけだし、問題のある部分をつきとめる、といったデモであった。
5番目としてインターネットとの統合を深く行うということである。セットアップ時の設定やiToolsの設定がその実例である。BSDのネットワーク機能が組み込まれていたり、Keychainも利用できるようになっている。キーパネルやシートを組み込み、iDiskとのシームレスな統合を行っている。
6番目の目標はモバイル機能の実現である。BSDでこれまでに実現していなかった、スリープや復帰に加え、ネットワークの自動認識も実現した。場所の機能が利用できるようになっている。また、電子メールをオンラインやオフラインで利用できるようになっている。
7番目は、ワールドワイドで販売できるということで、UNICODEに対応をした。1つのソフトウエアで各国の言語が扱えるようになっており、アプリケーションでも同様な機能が利用できるようになっている。3/24には日本語を含み7カ国語に対応した。そして、多くの言語を追加する予定となっており、5月の待つには追加の8言語が入手できるようになる。
そして、マーケティング担当のKen Berenskin氏が登場し、世界中でも同じOSが使える点についての説明のために登場した。日本語と英語、そして写真を含む文書を示し、UNICODEでの言語の扱いや、質の高いフォントであることを拡大した日本語の文字で示した。そして、ログインをしなおして別の言語に切り替わるところをデモンストレーションした。フォントやインプットメソッドをOSに組み込んであることで十分に機能するようになっている。
8つ目の目標は、やさしい移行だとした。まず、Mac OS 9とXでデュアルブートが可能なようにするようにした。そして、無理だと言われていたClassic環境の実現がある。Ken Berenskin氏が登場して再度デモを行った。そして、MacPainの文書を開いて古いアプリケーションが利用できることを示した。そして、Mac OS Xでは過去のすべてのアプリケーションが稼働すると説明した。
9つ目は、デジタルハブのための究極的なエンジンとなるのが目標となる。デジタルハブの機能をMac OS Xに網羅するために努力してきた。iMovieを稼働するだけではない。デジタルカメラ機能の統合として、実際にデジタルカメラで撮影をしてケーブルでプラグインし、Image Captureでダウンロードやさまざまな処理ができるところを示した。そして、デジカメで撮影した結果をスクリーンセーバーにすることができるところも示した。

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WWDC》基調講演でWebObject 5、Mac OS X Server 10.0は今日から出荷開始されたことが表明

そして、Mac OS Xの階層構成や、出荷ができたことを示し、Mac OS X上でこれからできるようになることを紹介した。まず、WebObjects 5を紹介した。Pure Javaに対応し、サーバで動作するものである。WebObject 5は今日から出荷される。
そして、Mac OS X Server 10.0を紹介した。AppleShare IPの使いやすさとMac OS Xのパワーを合わせたものだ。グラフィックスユーザインタフェースでの管理がリモートでも可能となっている。AFP、NFS、Samba、FTPがファイル共有の機能として使える。インターネットサービスとしては、Apache、QTSS、メールサービスをサポートする。ネットワークサービスとしては、IPフィルタリング、DNS、SLP、DHCPのサービスが使える。デスクトップ管理として、NetBoot2、Macintosh Manager 2、NetInfoやLDAPが用意されている。NetBootやMacintosh Managerは教育環境などで使われているが、今までは効果的に告知できなかった。これらは、セキュリティのために機能制約を行えるようになっている。デモとして、QTSSを使ってSkip Protectionを行うといったものだった。この機能がある場合とない場合を比較した。Mac OS X Serverも、今日から出荷を開始した。
Mac OS Xのパッケージにはアプリケーションは含まれていない。そうしたアプリケーションをデベロッパーに出してほしいと訴えた。そして、Adobe SystemsのVice PresidentであるGreg Gilley氏が登場した。Mac OS Xで稼働するPremier 6.0を実際にデモをした。仮想記憶やネットワークをオフにしないでも、フルモーションビデオが表示できることを示した。
Ken Berenskin氏が再度登場し、Appleのスタッフが喜ぶものは、テクノロジーをふんだんに使ったものだと説明し、Drive 10というディスクユーティリティを紹介した。ユーザインタフェースがユニークなものだ。そして、Cocoaアプリケーションとして、Stone TechnologyのCreateを紹介した。グラフィックスソフトであり、ピクチャやテキストの入力を行い、文字を円形に配置するなどのデモを行った。そして、OpenGLを利用したゲームを紹介した。Tony Pack Pro Skaterというスケートボードのゲームを見せた。

Avadis Tevanian氏に戻り、顧客についての話が続けられた。ここでも、Mac OS Xに関するMacworld誌の調査結果を紹介した。Mac OS Xは今後15年、20年使える将来につながるOSが今出荷されたのである。アプリケーションも出荷され始め、顧客はネイティブなアプリケーションを求めている。デベロッパーにはネイティブアプリケーションを作ってもらいたいし、そのためのセッションがWWDCに用意されている。そして、すばらしいアプリケーションを書いてもらいたいとした。

そして基調講演は終了した。なお、スティーブ・ジョブズ氏は最後には登場はしておらず、Q&A的なセッションも行われなかった。

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