Macintosh Developer Online (MDOnline)


2001年7月24日発行号 - Cocoaの分散オブジェクト



いやはや、ウィルスにやられました。「W32.Sircam.Worm@mm」ってやつで、昨日、シマンテックからは危険度を4に上げたと告知があったやつです。もちろん、Windows用ですけど。感染すると、そのマシンにあるファイルにとりつき、そのファイルを別の人にメールで送りつけるのです。で、そのファイルがあたかもExcelのワークシートなんですよね。最初にウィルスメールが来た時、非常に考えましたが、とりあえず開くしかないかなと思ったのです。というのは、Excelの本をこれまでたくさん書いてきていますが、時々、何にも文面がないとか理解不明な文面でいきなりワークシートを添付して送ってくるという読者が何人かいたので、もしかしてそういう類いのメールかなと思ったのです。ただ、開こうとしてもすぐに開かないのでだいたい気付いて、マシンをとにかくネットワークから切り離しました。で、シマンテックのサイトに行くと、案の定ウイルスだったのです。まあ、うかつだった私が悪いのですが、ちょっと被害大きいですね。除去はできたのですが、システムファイルを置き換えるので、結果的にシステムを全部入れなおさないといけませんでした。いっそのことで、安全のためも含めてハードディスクをフォーマットしてシステムを入れることになりました。その後続々と到着し、これまでにそのワームからのメールは20通をこえました。どれも、200KB〜数メガにもなります。まあ、それはいいのですけど、あっちこっちの方々のディスクにある文書ファイルが続々と送られてくるという感じです。しかしまあ、このワーム、自分でSMTPの機能を持っているとかで、それなりにきちんとエンコードをするあたりがなかなか技を感じます。だけど、JavaMailだとエラーになるんですけどね。日本語はちゃんとQuotedPrintableでエンコードまでしますね。それに、Outlook Expressになりすますみたいです。また、乗っ取ったパソコンの所有者と思われるフルネームが必ずFromに入るなど、メールの作りがなかなかまともなんです。まあ、感心してはいられません。ある会社のネットワーク管理者の方からは、警告のメールをいただきました。きちんとなさったところでしょう。一方、感染していると思われる人何人かにメールをしてみましたが、返事をもらったところは全然ありませんが、そんなもんなんでしょうか。
さて、ディ・ストームさんからのプレゼント品の発表です。今回は応募した人はラッキーだったかもしれませんね〜。

Mac OS XのTシャツ:ゆうき
LightWaveのストラップ:iMac266、久保田一郎
NetTekのTシャツ:Hitch、iMac266、ぽもな
LightWaveのTシャツ:Hitch、iMac266、RATS
(新居雅行 msyk@mdonline.jp


LightWave 3Dの分散レンダリングシステムをCocoaで独自開発したディ・ストームの開発者に話を聞く(1)

3DソフトのLightWave 3Dの日本総販売元であるディ・ストームでの、Mac OS X対応への取り組みについて、同社の開発部の阿部慎一さんに話を伺った。その内容をもとに、Mac OS X対応に関する事例を紹介したい。
LightWave 3Dは古くはAmigaプラットフォームでのCGやアニメーションソフトとして有名で、その後Windows、そしてMac OSへの対応を行った。古くからあるソフトだが、Mac OSへの進出は比較的最近であるだけに、Macユーザにとってはある意味ではなじみが薄いかも知れない。最近はCGやアニメでもどんなツールが使われているかことさら取り立てることは少なくなってきているが、テレビ番組やコマーシャルなどでも、LightWave 3D特有の生成画像が見られるなど、映像現場ではけっこう使われているそうだ。また、価格的なバランスからもアマチュアのクリエイタも使っている。このLightWave 3DはVer.6.0で大きくアーキテクチャを変更し、今後長期間の利用に耐えるアーキテクチャとなっている。また、OpenGLへの積極対応も行っている。現在はVer.6.5系列となっている。モデリング、そしてレンダリングを行うソフトは、Carbon化を完全に行い、Mac OS Xでのネイティブアプリケーションとして出荷可能となった。2001年7月26日より、期間限定特別価格として168,000円で販売するなど、「Mac OS Xでの代表的なCGソフト」を目指したプロモーションも開始される。しかし、今回の話の主役は、これらLightWave 3Dでの中心的なアプリケーションではない。

LightWave 3Dはこれまでも、ネットワークにつながった複数のマシンを利用しての分散レンダリングを「Screamernet」という機能で実現していた。Mac OS 9やWindowsでも可能なのであるが、ファイル共有機能をベースにしており、各マシンのレンダリングエンジンへの指示やあるいはレンダリング結果のグラフィックスはファイルでのやりとりを行う。そのため、ネットワーク管理やシステム管理をきちんとしないといけないなど、サポート面でも手間のかかるものでもあった。
一方、阿部さんは日常の開発などの業務を行いながらも、Cocoaには興味を持っていた。以前から、NeXTの環境にも興味は持っていたものの実際に何かを開発するにはいたらなかったが、Mac OS Xが発売され開発ツールもあることから、なにかできないかという感じでチェックを入れていたそうだ。そして、見つけたのが「分散オブジェクト」の機能である。分散オブジェクトについての立ち入った説明はかなり長くなるので、ごく肝になる部分を説明すると、他のパソコンで動いているプログラムを、あたかも自分のパソコンの中にあるのと同じようにつかえる技術である。この分散オブジェクトの機能はCocoaに最初から含まれている。ところが、目をつけたのはいいのだが、なかなか情報はない。「専門のメーリングリストに少しのヒントを見つけ、いくつかのサンプルプログラムであたりをつけていきました。最初、自宅で簡単なチャットアプリケーションを作って試したところ、思ったより簡単にアプリケーションができることに気がついたのです」と話す。そこで手掛けたのがLightWave 3Dの分散レンダリングをコントロールするシステムである。
実際にレンダリングを行うエンジンについては既存のものがある。そこで、全体を統括管理するアプリケーションと、レンダリングを行うクライアント側のアプリケーションをCocoaアプリケーションとして用意した。クライアント側では、すでに稼動しているレンダリングエンジンをコントロールするのである。そして、レンダリングの指示をサーバからクライアントに送り、レンダリング結果をサーバに戻すという一連のネットワーク処理を、分散オブジェクトをベースに行ったのである。
こうした一連のシステムを、なんと1週間で仕上げたというのである。もちろん、阿部さんの力量もあるわけだが、分散オブジェクトという仕組みのシンプルさもある。ネットワークの処理を行うプログラムとなると、プロトコルの逐一をプログラミングすると非常に開発に労力がかかる。たとえば、Open Transportで同じことを実現しようとすると、多大な開発期間が必要になるだろう。しかしながら、分散オブジェクトを使えば、ネットワークの複雑なプロトコル処理は、プログラマはほとんど意識しなくてもいいのである。別のマシンに接続して、そこにあるオブジェクトのメソッドを呼び出せばいいわけだ。こうした仕組みに着目したからこそ、短期間での完成を見ているということになる。また、1週間とは言っても、実際には資料をさがしたりサンプルを調べたりと言ったことが中心で、それほど長時間に渡ってプログラムをしていたわけでもなかったそうだ。

関連リンク:ディ・ストーム
カテゴリ:開発情報, Mac OS X


LightWave 3Dの分散レンダリングシステムをCocoaで独自開発したディ・ストームの開発者に話を聞く(2)

いずれにしても、Cocoaをベースにした分散レンダリングシステムを、1人の手で短期間に開発できた。こうして作ったシステムのメリットについて、阿部さんは次のように語っている。「いままでだとファイルベースのやりとりだったので、完成した1枚の画像を1台のコンピュータにレンダリングさせていたのですが、分散オブジェクトを使うことで、画像の一部分ずつを異なるコンピュータにレンダリングすることが可能になりました」と話す。従って、巨大な1枚の画像の分散レンダリングということも実現したのである。また、「これまでは分散レンダリングをさせてもLightWave 3Dを動かしているマシンはレンダリングを終わるのを待たないといけなかったのですが、別のアプリケーションになったので、完全にバックグランドで分散レンダリングができます」といったメリットにもつなっがている。また、分散オブジェクトを使った手法だと、コマごとに別々にレンダリングした結果からアニメーションにまとめるようなことも可能となるそうだ。それに、ネットワーク回りの管理は非常に楽になっていることもあるとのことである。
いずれにしても、Screamernetの機能は非常に基本的な機能でのサポートが中心だったことから、ネットワークの管理が必要になった。しかしながら、分散オブジェクトではそうした管理をOSやフレームワークで吸収するのである。NetInfoも利用しているのであるが、これは分散オブジェクトへの接続で指定する名前をNetInfoに登録してIPアドレスと対応付けてやることで、問題なく接続ができるようになったことから、こうしたディレクトリサービスの使い方をしているそうなのである。

一方、CocoaベースとなるとWindowsとのやりとりができなくなる。この点については、「Windowsでの分散レンダリングは海外でけっこういろいろな人が、やりやすくするさまざまなソフトウエアを作って配付しています。だから、標準のやり方以外に代替え手段はいろいろあるのです。ただ、Macではこうした機能を提供する人は全然いなかったため、Macでの分散レンダリング環境整えたかったというのがあります」と話す。また一方で、Javaなどの別の選択肢もあるわけだが、そこでCocoaの分散オブジェクトを選んだ理由として「やはり、Objective-Cに興味がありました。今までCでプログラミングをしてきましたし、NeXTについても昔から興味がありました。そこで、分散オブジェクトという仕組みを見たりしていたので、使えるようになったらなにかやってみようと思っていたのです」と話す。
1週間くらいで作ったものだからと言って、これから完成度をあげるというものでもないそうだ。基本的な分散レンダリングについてはほぼOKということで、今後は関連機能を整えることを考えている。1つはレンダリング結果のプレビューをムービーで行うような機能を検討している。また、レンダリング結果の各画像の明るさをまとめて変更するようなバッチでの画像処理プログラムも考えている。ユーザからの要望として上がっている、レンダリングが終わったらメールを送る機能や、レンダリング結果をHTMLファイルで整えてFTPでサーバにアップロードするような機能についてもすでに検討に入っているということである。
LightWave 3Dの開発は米国のNewTekで行われているが、一方ディ・ストームでは、日本のユーザからの声をもとに、ゲーム開発をはじめとするLightWave 3Dユーザが希望する機能をNewTekと共に開発している。その一環として、こうして日本で開発したMac OS Xの分散レンダリング環境をこれから開発元にアピールし、いい形で製品につなげたいといった段階だそうだ。単に製品の出荷やサポートなどの代理店業務にとどまらず、より積極的に製品開発に絡むという動きをしている点でも同社の体制はユニークだと言えるだろう。

◇お話を伺ったディ・ストームの阿部さんのデスクでのショット、画面にはProject Builderが見えている
 

<Cocoaの分散オブジェクトを知るための資料>

◇Programming Topic: Distributed Objects
 http://devworld.apple.com/techpubs/macosx/Cocoa/TasksAndConcepts/ProgrammingTopics/DistrObjects/index.html
いきなりオーバービューに何も書かれていないが、Cocoaのどのクラスが分散オブジェクトに関わるのかがすぐに分かるだろう。

◇DO over TCP sockets example for Mac OS X
 http://www.omnigroup.com/mailman/archive/macosx-dev/2001-February/008998.html
Omni Groupsのメーリングリストで掲載された、TCPを経由した分散オブジェクトの利用のサンプル。複数マシンでの分散オブジェクトのサンプルとして参考になる。

◇広文社刊 MacOSXプログラミング入門 Objective-C 萩原剛志 著
17章、18章に分散オブジェクトのことが記載されている。

◇Developer ToolsのサンプルのAuthenticator
Developer Toolsをインストールしたマシンの、/Developer/Examples/Foundation/Authenticatorにある。

◇OPENSTEPを使って遊んでみよう
 http://www.path.ne.jp/nakakuki/openstep/index.html
◇PDOの基本
 http://www.fsinet.or.jp/~nito/OSPT/BasicPDO.html
以上は、NeXT/OPENSTEP時代の情報であるため、そのままではMac OS Xでは稼動しないが、フレームワークの考え方などには変化がないため、解説などは今でも理解の助けになり、参考になる。

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小池邦人のプログラミング日記》2001/7/23<Macworld Conference & Expo/New York>

今回は、7/17から7/20までNew Yorkで開催されたMacworld Conference & Expoの印象を述べてみます。私が海外でのMacworld Expoに参加するのは、San Francisco Expo以来6年ぶりとなります。

以前、東海岸でのMacworld ExpoはBostonで開催されていました。それに参加した帰りに何度かNew Yorkへ寄りました。今回は、それ以来十数年ぶりのNew York滞在だったのですが、その変貌ふりには驚いてしまいました。町は綺麗で治安も良好、走っている車は新車ばかりで地下鉄の車両もピカピカです!当時は、ツアー添乗員から「あっちには行くな」「地下鉄には乗るな」「夜は外出するな」と口うるさく忠告されたものでした。実際、昼間に道を歩いてると血まみれで倒れている人に遭遇したり(マジです)、ひったくりや脅し詐欺の経験談も多く、市街を走るパトカーのサイレンも絶えませんでした。Expo前日には、地下鉄を利用してApple社がショップを出すと噂されているSOHO地区なども散策してみましたが、緊張せず歩ける感覚は、まるで普通(笑)の観光地のようです。やはり、ここ数年続いた景気拡大のおかげでしょうか(市長がエライという噂有り)? IT関連企業の凋落で景気後退が囁かれているUSAですが、今回その影響が現れている感じはしませんでした。

Macworld Expoのチケットは、先んじて日本からWeb経由で購入してありましたので、Expo前日に会場へと足を運び、レジストレーションを済ませておきました。展示会だけのチケットならば当日29ドルで購入できますが、Jobsの基調講演を聞くのには「Users Conference」チケットを購入する必要があります。こちらは、事前登録の割引を利用しても195ドルもします。Users Conferenceに関しては、そのタイトルから推測して私が聞くべき内容は見あたらなかったのですが、基調講演を外すわけにはいきません。昨年は、基調講演終了後に参加者全員にPro Mouseという「お土産」があったので元が取れたようですが、今年は何も無し(涙)実に割高です。主催者には、基調講演を含んだもう少し安いチケットを用意して欲しいものです。Macworld Expoの初日、Jobsの基調講演開始の1時間半前には会場に到着したのですが、すでに講演が行われるホールの前には長蛇の列ができており「こりゃ、ホールに入れるかな?」と焦ってしまいました。なにせ入れないと、Users Conferencチケットにした意味がありません(涙)。幸運にもホールの収容人員が多く、何とか滑り込みで席を確保することはできましたが、ずいぶん後ろの方で聞くはめになってしまいました。(次回はプレスとして入れるように根回か?)

基調講演の内容は、すでに多くのメディアで報道されていますので、詳しい説明は省略します。実際にその場で聞いた感じとしては、ハードウェアの発表については少々物足りませんでしたが、Mac OS X 10.1のデモは結構インパクトがありました。できれば、Jobsの「今日からアップデート可能だ!」という声を聞きたかったのですが本音ですが...。基調講演後は、さっそくAppleブースへ出向き、実際にMac OS X 10.1のデモを見ることにしました。10.1のデモブースにはApple社の担当が張り付いており、来場者が直接操作することはできません。ただし、熱心に頼んだりスキを盗めば(オイオイ)、少しは操作することが可能でした。長時間デモを見ていると、1時間ぐらい掛けてAppleScriptのコンパチビリティをチェックする怪しいおじさんとか、あちこちのWebサイトへアクセスし、10.1搭載のJava 2とApletの整合性をチェックしまくる少年とか、へビーユーザが相手だと担当者に同情したくなります(笑)。しかし、中には、今使っているアプリが使えるかどうかを尋ねる初心者のご婦人がいたりして、多種多様なユーザで常時にぎわっていました。私も短い時間操作させてもらいましたが、アプリの起動、メニューの表示、ウィンドウのリサイズなどのパフォーマンスは確かに良くなっています。特に、アプリの起動は特筆すべきで、Mac OS 9環境と比べても遜色ありません(それ以上?)。ただし、デモマシンが新型PowerMac G4 800MHz(Dual)という高速マシンでしたから、体感速度の本当の評価は、自分のマシンにインストールして試してみるまで差し控えたいと思います。とは言っても、10.0.4がインストールされている同マシン(こちらは自由に使えた)で同じ操作を試してみましたが、確かにFinderのレスポンスはワンランク向上したと実感できました。

デモマシンに搭載されているClassic環境はMac OS 9.2でした。また、アプリ起動のデモに使われていたInternet Explorer 5.1は正式版のようで、現状10.0.4で使っているバージョンとは異なりました。多分、アプリ自体もCFM(PEF)ではなくMarch-Oベースになっているのではないかと推測しますが、残念ながら、そこまで確認はできませんでした。それから、Apple社から発表が無かった項目についても、何点か確認してみました。Finderのリスト表示では、ファイル名の頭文字をキーから打ち込み項目を選択する機能が動くようになり、システム環境設定の「一般」では、アンチエイリアスで表示する最小文字サイズの設定もできるようになっていました。残念だったのは、相変わらずフォルダやドキュメントアイコンにカラーラベルが設定できないことです。それから、コンテクストメニュー表示など、現状と同じく反応が遅い箇所もいくつか見受けられました。加えて、今回から可能になったDVD再生についても、長時間再生のデモをしないのが実に怪しいと思います(笑)。まあ、まだチューニングされていない箇所をあえてデモすることもないでしょうから(気持ちはよく分かる)残り一ヶ月で、どの程度そうした箇所を無くせるかが重要となります。会場でデモされているMac OS X 10.1は、あくまでもPreview版であり、これがそのままGM版になるかどうかは分かりませんが、さらなる努力により最良の状態で我々の手元に届くことを期待したいと思います。

近年のMacworld Expo/東京は、出展するサードパーティがどんどん少なくなってきており、会場を回るのも楽になってしまいました。Expo/New Yorkでも出展者が少なくなっている傾向はあるようですが、予想していたほど極端ではありませんでした。ゆっくりと丁寧に回れば、2日ぐらいは十分に楽しめます。また、相変わらず来場者の数は多く、初日は大変な混雑でした(ただし、平日なので子供が少なかったような気がする)。老若男女、ノーネクタイのMacユーザが世界中から集合し、各ブースで、Tシャツ、バッジ、シール、デモCD-ROMの争奪戦を展開しています(笑)。Apple社がどんな状況であろうと、会場内の雰囲気はいつも明るいのが、この展示会の大きな特徴でもあります。会場を回ってみると、WACOM社など、まだMac OS 9環境でデモしている有名メーカもいくつかありましたが、ブースの半分以上は、Mac OS X環境で自社製品をデモしていたのではないでしょうか?老舗アプリケーションがバージョンアップによりMac OS X対応になったケースが目立ち、新規開発やUNIXやWindowsから移植されたアプリケーションのデモがそれに続いていました。それから、デモ用マシンとしてPowreBook G3やG4が多数使われていたのが印象的でした。デスクトップの凋落を、こんな場所でも実感できたと言う訳です。

Microsoftをはじめ、今回のExpoでMac OS X対応アプリケーションを発表したサードパーティの多くは、9月にMac OS X 10.1が出荷された時点で正式に発売を開始するようです。同業者として、現状の10.0.4環境を避けて通りたい気持ちは良く分かります(笑)。開発環境にしても、Metrowerks CodeWarrior 7.0が9月発売開始ですから、タイミング的にもそうなるのが自然でしょう。本当ならば、Mac OS X 10.1はWWDC 2001で発表されるべきバージョンであり、今回のExpoで正式出荷になるはずだったと思います。Apple社としては、サードパーティがMac OS X用アプリを多数販売することで、今回のExpoを盛り上げたかったのでしょうが、10.1を間に合わせられなかったのですから、これは自業自得ですね。ただし、多くのサードパーティがMac OS Xへの対応を進めていることを来場者に示すことはできたと思いますので、Expoとしてはまずまず成功だったのではないでしょうか?

お土産としてMac OS X10.1が入手できないと知っていたら(薄々感じていたけど)New Yorkは止めてParisにすれば良かったかなぁ?と思う今日この頃です(笑)。とにもかくにも、9月には期待を裏切らないMac OS X 10.1の登場を望みたものです。でないと、ソフトの作り手側の志気も気力も上がらないことは、今回のExpoが証明しているわけですので...。
[小池邦人/オッティモ]

関連リンク:オッティモ
カテゴリ:Mac OS X, 小池邦人のプログラミング日記, イベント


Web開発関連のカンファレンスが開催、WebObjectsをはじめWebの今を講演

2001年7月24日、東京コンファレンスセンターで、びぎねっと主催の「Web Developers Conference」が開催された。全部で8つのセッションが行われたが、そのうちのいくつかを取材したので、その概要をお届けしよう。8つのセッションのうち、4つはスポンサーによるもので、 Oracle 9i、WebSphere、Enhydra、WebObjects 5の各テーマで講演が行われた。そして、残り4つは、Apacheの最適化、PHPとXML、Java、WebDAVといったテーマで講演が行われた。これらのうちMDOnlineでは、WebObjects 5と、Java、WebDAVについて取材をした。

スポンサーでもあるアップルコンピュータは、「WebObjects 5 次世代の開発運用環境」として、WebObjects 5についてのプレゼンテーションが行った。マーケティングの鷲滝薫氏による概要のプレゼンテーションでは、Java2に対応したことや、WebObjectsの開発環境を説明した。WebObjectsのメリットについても説明が行われた。まずはアプリケーションの一番大変なデータベースアクセスをSQLコーディングなしに自動的に行えることを説明した。そして、HTMLのテンプレートによる自動生成ができることから、ビジネスロジックとページでザインを別々にできるということを説明した。また、デスクトップアプリケーションの開発環境としても使えることも説明した。アドバンテージとして、マーケットニーズへの迅速な対応が可能なことやフレームワークの信頼性、稼動プラットフォームを多彩にするJava2であることを挙げた。各社で採用実績があると同時に、Appleでの販売サイトなどさまざまなサービスで利用している。また、来場者にWebObjectsトライアル版のCD-ROMが配付された。評価版のWebObjects 5が含まれている。また、日本語の技術資料も今後はリリースするが、今日からいくつかの文書が公開される。
続いて、アップルコンピュータの野村氏によって技術的な内容の説明やデモが行われた。Webサーバを使うことやJDBCドライバを利用するなど動作の基本を説明した。そして、シンプルなアプリケーションを例に、WO AdapterやEO Adaptorの動作とHTMLの生成までを説明した。そして、アプリケーションを作成するデモを行った。EOModelerでOpenBaseに接続してモデルファイルをまず作成する。そして、Project Builderを起動し、WebObjects Applicationのテンプレートを選択する。そして、最初に表示されるページの設計をWebOjbects Builderで変更を行った。データベースの内容を表示するコンポーネントを配置し、EOModelerからエンティティを追加し、それらを線で結んで設定を行った。また、ムービーを参照するアプリケーションや、MySQLへの接続も行った。

「今Web開発でJavaをはじめる理由」といったセッションで、エア・ロジックの羽生章洋氏による講演が行われた。Webの基本要素をHTMM、HTTP、URLといった要素を挙げ、文書閲覧のためのシンプルな仕組みとして説明したが、こうした仕組みがこのまま続くのかということが気になる状況になってきたと話が振られた。コンピュータの歴史を説明し、現在はサーバに処理を負担させているが、今後もやはりサーバにはたくさんの仕事をさせることになり、また性能がアップしたクライアント側にも仕事をさせる動きになると予測した(ファットクライアント/メガサーバ型と表現している)。ネットワークの進展も前倒しで発展してきている。Webに要求されるのは、大規模、高機能、複雑になってきており、ドキュメント指向から相互にやり取りをするWebサービスになってきている。以前にeビジネスとtビジネス(Traditional)といった対比もあったが、今風に言えば、entryとtransactionとなり、クリック&モルタルというモデルにも近いといったユニークな分析も話された。XMLや携帯も含めて、こうした状況に対応できるものはJavaであるとした。ただ、エンタテインメント系はFlashにまかせるのがいいという話もあった。
Javaに対する疑念について話が及んだ。まず、Javaは難しいという点については、確かに難しいが、学習をすれば実現する範囲も広がり、後から苦労は生きてくる。ただ、手っ取り早く仕事を終わらせるライトウェイトな手段も持っておくのがいいとの意見も話された。Javaが遅いと言うのは事実であるとしながらも、その点に注目が集まり改善は著しい。しかしながら、GUIについてはまだまだ改善の余地があものの、サーバーサイドではマシンスペックが上がっているため問題がないレベルになっている。Javaが普及していないと言う話もあるが、書店でコーナーもあり、新聞に掲載され、携帯で話題になり、情報処理試験に採用されるなど、定着はしてきている。Javaは安定していないという話もあるけど、6年経過して安定してきており、APIも出揃い、良く使うものは安定していると言える。Javaのメリットとしては、APIの使い方を調べるだけで大体分かってしまうので、環境設定でははまっても、プログラミングではまることはないとした。そして、実際のJavaの具体例として、JBuilderを使ってボタンをクリックしたらテキストを表示するといったアプリケーションをすぐに作成した。また、JavaBeansによるコンポーネント作成も手軽にできることを示した。さらに、サーブレットやJSPの作成のデモを行った。さらに、PHPのスクリプトで、JavaBeansで作ったコンポーネントを呼び出して表示するといったデモも見せた。
実際にJavaを利用するために最初に手をつけるには、まずは入門書を読み、JavaBeansの学習をしておく。そして、サーブレット、JSP、JDBCと学習を進めば良い。ここまで来れば、Web開発の一通りを網羅できる。レベルアップするためには、EJBやXMLを操作するJAXP、SOAPを学習すれば良い。最初にSwingを使ったGUIをやるとヘコむので、このテーマは徐々にやった方がいい。まとめとして、大きな変化が近い将来やってきて、HTMLがすべての時代が終わるとした。そして、大きく楽をするために少しの苦労をしましょうとして締めくくった。

「分散オーサリング/バージョニングプトロコル WebDAV」として、テューンビズの早川仁氏による講演が行われた。WebDAVは分散環境におけるオーサリングを実現するためにHTTPを拡張したもので、Webを書き込み可能にし、あらゆる種類のファイルを利用できるようにし、コラボレーションを可能にしたものである。Acrobat5ではDAVサーバ上のPDFを開いて付箋をつけるようなことが可能になっている。WebDAVはプロトコルの名前でアプリケーション名ではない。HTTPにメソッドを追加したもので、HTTPの特徴を引き継いでいる。そして、通信フォーマットにXMLが使われている。WebDAVで提供される機能は現段階では、リソースやコレクション管理、プロパティの管理、上書きの保護となっている。WebDAVの利点としては、HTTPと同じなのでHTTPあるいはSSLのポートしか使わないので、ファイアウォールがあっても利用しやすい。また、さまざまな手法でセキュリティを確保することができる。そして、OSや言語に依存しない規格であるということを挙げた。また、サーバ内でのファイルの移動をサーバ上でだけ行われるなど効率的に動作する。
WebDAVの適用例として、OSに依存しないファイルサーバとして利用することが考えられる。FTPなどの代替えとして安全にファイル転送ができる。また、Webサイトのステージングサーバとしての利用もある。そして、コラボレーションツールとしての利用がある。そして、様々なソフトウエアでの利用方法について説明が行われた。Windows 2000ではマイネットワークから利用でき、ネットワークプレースの追加でアイコンを追加できる。
ApacheでWebDAV機能を実現するには、mod_davというモジュールを使うが、それを使うための諸設定についても説明が行われた。日本語のファイル名の扱いがうまくできないのが問題である。mod_davは文字コードの扱いについては期待とおりの処理をしていないが、クライアントがUTF-8を要求しているのに、実際にはShift-JISのコードが行われる。そこで、IIJの山田氏によって開発されたmod_encodingによってサーバアップロード時に必要な変換を行うようにすれば、日本語のファイル名も扱えるようになる。ただ、残念ながら、mod_davに取り込まれる気配がないので、可能な限りアピールをしたいとした。このmod_encodingの入手方法や必要な設定についても解説された。Acrobat 5での利用例も示された。また、Nautilusも対応しているという話もあったが、機能は組み込まれていない。UNIX系では、SkankDAVを利用することで対処できるだろう。WebDAVを利用する時にはセキュリティには気をつける必要がある。最低限でも参照以外はBASIC認証を設定する必要がある。また、書き込み可能なディレクトリにCGIの実行権限を与えるのも危険をはらむことになる。
WebDAVの今後としては、更新日や作成者を指定したファイル検索が組み込まれるが、IIS等では一部サポートされている。そして、Access Control List(ACL)によって、アクセス権限の設定ができるようになるが、コメント募集を閉め切られており、間もなく実装が始まる予定だ。さらに、バージョニングについても作業が行われて実装が行われ始めているものの、稼動するものが得られない状態である。最後に、WebDAV関連のリンク集を紹介した。

関連リンク:びぎねっと
カテゴリ:WebObjects, Java, サーバー製品, イベント


TIL》Mac OS XのWebサーバ機能やセキュリティ機能をアップデート

Mac OS X向けに「Web共有アップデート1.0」というアップデートが行われている。Webサイトからダウンロードができるが、ソフトウエア・アップデートを通じてのアップデートも可能だ。このアップデートをMac OS X 10.0.4に適用した場合、Apache WebサーバがVer.1.3.14から、1.3.19にアップデートされる。また、HFS+フォーマットのドライブではファイル名の文字列の大文字と小文字を区別しないが、Apacheをそうしたフォーマットでも問題なく動作させるモジュールとして、mod_hfs_apple.soが加わった。このモジュールは、Mac OS X Serverでは最初から組み込まれていたものである。また、OpenSSLのバージョンもアップしていると説明されている。マニュアルから判断すると、Mac OS Xに元からインストールされているOpenSSLはVer.0.9.5aだと思われるが、現在OpenSSLはVer.0.9.6aが公開されているため、このバージョンないしはVer.0.9.6が組み込まれるものと思われる。

関連リンク:Web Sharing Update 1.0 : Document and Software
カテゴリ:サーバー製品, OS関連ソフトウエア


TIL》GeForceグラフィックスカードの日本語アップデータ2.1.1が公開

GeForce Graphics Cardのファームウエアと、Mac OS 9向けの機能拡張をアップデートするアップデータの日本語版が公開された。英語版は、2001年7月10日付けで公開されている。パフォーマンスや互換性を向上させるアップデートであるとしている。

関連リンク:GeForce Graphics Card Update 2.1.1: Document and Software
カテゴリ:周辺機器, OS関連ソフトウエア