タイトルiMac DVは“ネタ”を提供してくれるのか?カテゴリー業界動向, iMac
作成日1999/10/9 12:5:39作成者新居雅行
新しいiMacの製品系列になり、CPUや内部バスなどの基本部分をはじめ、全体的に性能アップが図られた。しかしながら、やはりいちばん目立つのはDV端子を装備し、デジタルビデオ編集という利用が明確にできるようになったという点だ。もちろん、エンドユーザーがより手軽にDV編集ができるようになるということは明白だが、デベロッパーあるいはサービス提供者にとって、DV対応がどのようなネタを提供してくれているのかを考察してみた。

まずはiMovieが標準で搭載されている点を軸に考えてみよう。iMovieはムービー編集を簡単な操作でできる。DVカメラを接続して、クリック1つで映像をムービーとして取り込める。それをドラッグ&ドロップでトラックに配置し、映像的なエフェクトも簡単に設定できる。編集結果をムービーとして保存することはもちろん、DVカメラに書き戻すこともできる。つまり、「簡単映像編集ソフト」はすでにiMac DVに組み込まれている。言い換えれば、デベロッパーからiMac DVユーザー向けに簡単映像編集ソフトを開発して売り込むという余地は非常に少ない。その種のコンセプトの製品は相当なアイデアが求められるだろう。
一方、より高度な編集をしたいユーザーが出てくるのももちろんだ。この分野では、AdobeのPremier、After Effectsという巨大な勢力がいるので、一般にはこうしたソフトに目が向くことになる。しかし、高い。そこで、そこそこの編集機能を持った比較的安価な映像編集ソフトというのは、iMac DVユーザーに訴求する可能性は持っている。ただし、オーサリングソフトでDirectorが君臨し、ミドルレンジの製品がある時期一気に市場から姿を消したことを考えれば、かなりリスキーな市場であることは間違いない。それに、Premierが高いとは言え、DVビデオ自体がけっこう高いので、購買層が必ずしも割高感を持つとは限らないと思う。そうなるとPremierとの比較で安いことで売り込むには難しい面もある。

それでは、iMac DVのデジタルビデオジャンルにデベロッパーが入り込む余地はないのかというと、そうでもないと思われる。Premierまでは手が届かないというユーザー層を想定した一般的な編集ソフトをQuickTimeベースで開発するという正攻法では、価格や何か魅力的なちょっとした機能などをうまく折り込めば訴求力は出てくる可能性がある。別の方向性もある。ビデオからみの編集以外の用途をソフトウエアとして供給するという路線だ。たとえば、デジカメブームを見れば、レタッチの需要もなくはないが、もっと高い需要はデジカメ写真の整理ソフトだ。デジタルビデオも、作成したムービーやあるいは素材を整理するというソフトが、ニーズとして出てくることも十分に考えられる。
さらに考えれば、DVビデオで撮影したテープ自体の整理ソフトも作れないだろうか。DVビデオのデータをスキャンして、一定時間ごと、あるいは場面が大きく変わるタイミングで、つまりはDVテープのサムネールを作るようなソフトだと、需要があるかと思われる。あるいは発想を変えてDVカメラから静止画ファイルを作るソフトというのはどうだろうか。もちろん、ビデオ編集ソフトを使えば作れなくはないが、DVカメラで撮影した映像を簡単にショットできるというのは、WebページではムービーではなくJPEGファイルをアップするのが常套手段と考えれば、用途としての需要はそこそこあると思われる。
こうした、ビデオ編集という直接的ではなく、補助作業、あるいは関連した作業にかかわるソフトウエアはいくらでも参入余地があると言えるだろう。

一方でサービス系はどうだろうか? たとえば、iMac DVを見たパソコン系出版社の編集者なら、誰でも「iMac DVでデジタルビデオ三昧」みたいな書籍の企画は思い付く。出版界的に言えば、あとは誰がいちばん早く書いてくれるか・・・みたいな世界に入って行く。筆者になりたい人にとっては今こそ出版社への売り込み機会でもあるのだ。
ホームページではどうだろうか。「iMac DVでデジタルビデオ」というテーマのWebページを画策している方ももういらっしゃるだろう。いずれにしても、サービス提供相手は、プロの映像制作者よりも、家庭ビデオ編集者が多くなることが予想されるため、たとえば有償サポートサービス的なビジネスは成り立ちにくいと思われる。ただ、Webページを作り、ニュースやチップス、ノウハウなどを充実して提供して購読者がついた場合には、広告というのものが比較的取りやすい世界ではないだろうか。というのは、DV機器メーカーの数も多く、またショップ系も見込むことができる。そこまでを目指してWebページ展開するというのも、もちろん大変ではあるし、絶対にスポンサーがつくとは限らないものの、現在での有力なネタであることは間違いないだろう。もちろん、メーリングマガジンのネタとしても有力になるだろう。

さて、DVビデオは別にMacintoshだけの特徴ではない。VAIOはさすがにソニー製品だけあって早くから対応していたし、DVを軸にしたパソコンがどんどんと新発売されている。そのような中、iMac DVは、やはりMacintoshそしてQuickTimeのこれまでのデザイン分野での実績がものを言うため、存在感は高いし、なんと言っても価格競争力がある。「デジタルビデオはiMac」という定評が定着するくらいになると、デベロッパーやサービス提供者としての活動のベースにもなる。そうした状況を期待したいが、十分ありうる話ではないかと考える。
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