タイトルインタビュー:DTP市場と同じようにビデオ編集でもAppleScriptは普及するカテゴリーAppleScript, イベント
作成日2000/2/24 14:27:56作成者新居雅行
AppleのAppleScriptのプロダクトマネージャであるSal Soghoian氏と、AppleScriptテクノロジーマネージャのJason Yao氏にインタビューを行った。聞き手は主に新居雅行が行ったが、ユーザーグループFM-Tokyoの代表である長野谷隆昌氏も同行した。2月23日に開催されたセミナーの内容については、別掲の記事で参照してもらいたい。

――AppleScriptは難しいとか敷き居が高いとか言われて、なかなか足を踏み込めない人がいます。そういう人たちにアドバイスはありますか。

Sal Soghoian氏(以下、Sal):AppleScriptはほんとにいろいろなニーズに答えることができるのですよ。たとえば、ちょっとたとえ話をしてみましょう。ギターを弾けるようになるために、まずは練習に取り組みますよね。もちろん、少しは練習が必要だけど、少し練習したらそれなりに、自分なりには満足なレベルに達するでしょう。もちろん、プロレベルになっているわけではないとしても、自分が満足すればそれでいいとも言えるわけです。AppleScriptも同じことで、ちょっとやってそれなりのものができて、それで満足できればそれでもいいのです。

――そういえば、SalさんはJazzギターをやると聞きましたが。

Sal:そうなんですよ。いずれにしても、誰もがプロになるまで何もできないということではないですよね。それはギターもAppleScriptも同じことですよ。AppleScriptの簡単なスクリプトでも、本人が満足できればそれでいいのです。もちろん、それで興味を持ってスキルを高めて、最終的にはビジネスになるほどまでやるのもいいのですが、まずはなんでもトライしてみるということは重要ですよ。

――初心者の人たちはどんなものを参考にすればいいのですか?

Sal:Mac OSにはサンプルのスクリプトがたくさんついています。また、フォルダアクションのサンプルもあります。エイリアスを作るような簡単なものもありますが、初心者の方はまずそれを使ってみるだけでもいいんじゃないでしょうか。また、Appleからはさまざまなドキュメントやサンプルを提供する必要があることは認識しています。現在製作中のものもありますし、米国で作られたそうした素材も、日本語化されるはずなので、今後もスクリプト作成の参考になるものは次々と出てくるでしょう。

――DTP市場へはかなりAppleScriptが使われるくらいに浸透してきています。2月23日のセミナーではビデオ編集でのAppleScript利用を提案されたのですが、DTP市場くらい使われるとお考えですが。

Sal:もちろんです。印刷業界と同様、ビデオ製作でもニーズはあります。今はまだ顕在化していないのですが、来年になると、プロの人たちを中心に盛り上がると思いますよ。

――DTP市場では、QuarkXPressを始めInDesignなど主要アプリケーションがAppleScript対応しています。一方、ビデオ編集のアプリケーションではPremierのように対応が薄いソフトがありますね。

Sal:確かにそうなんですが、通常は開発メーカーは顧客のニーズにあわせるということを行います。また、競合製品にも影響されるはずです。そうなると、将来の方向性としては、AppleScriptに対応するということも十分ありうる話ではないでしょうか。DTP市場でも起こったことは、ビデオ編集の世界でも起こると信じています。

――(長野谷氏)マクロメディアのような独自のスクリプト言語を主体にしているメーカの人たちに向けては何かアクションを起こしているのですか?

Jason Yao氏(以下、Jason):他社の内状までは分かりませんが、そいえば、マクロメディアの人も、AppleScriptのキッチン(主として米国で開催されているプログラマ向けの実践的な講習会)に来ていましたね。

――スクリプトでビデオ編集をやろうと考えるのはやはりプロの人たちでしょうか。アマチュアの人たちにもAppleScriptはメリットがありますか?

Sal:おそらく最初はプロの人たちでしょうね。AppleScriptを活用することによって制作効率を高めてコストを低減させ、それを収益につなげるというモデルがうまくあてはまるでしょう。しかし、次第に個人ユーザーにも浸透するでしょうけど、むしろビデオ編集をより簡単にできるという方向性を持つでしょうね。たとえば簡単に作業をこなすドロップレットを使うとか、インタラクティブなチュートリアルがAppleScriptベースで動くとかそういった使い方が考えられますね。

――DTPやビデオ編集以外にさらに狙う業態というのはありますか。

Sal:セミナーでもお見せしましたが、AppleEventをIPでやりとりすることで、キオスク端末の管理や、あるいはホームオートメーションを外部からコントロールするという用途へも展開できます。いずれにしても、Mac OS Xは非常に高い柔軟性を備えているので、AppleScriptはもっともっといろいろな分野に適応できますよ。それが可能なように、Mac OS Xを作っているのです。

――AppleScriptでは、文字列の長さは分かるのですが、文字列のバイト長を知る方法が標準では用意されていません。きっとみんなそれを要望したと思いますが(笑)。

Sal:そうそう、いろんな人からその話は聞きました。これは帰国したら最優先事項として提案しておきますよ。

――UNICODEベースになると何かAppleScriptでも変わるのですか?

Sal:すでにMac OS 8.5からUNICODEは採用されているので、その意味では変わりないはずですが…。いずれにしても、今回、私が日本に来た理由は、2バイト圏でもきちんとAppleScriptが使えるようにする強い意志の現れと思っていただいていいでしょう。いろんな人に会って話を聞き、その内容をもとに、米国に帰っていろいろ提案したいと考えています。

――(長野谷氏)AppleScriptをベースにした大規模なサーバシステムを組んでいるのですが(と言いつつシステム図を見せる)、パフォーマンス的な問題もあります。これは改善されますか?

Sal:これを全部Macintoshで組んでいるのですか? それはすばらしい。AppleEvent自体は1秒間に400回ほどのリクエストは受けられるはずなのですが、あなたのシステムの場合だと、ファイル処理部分がもしかするとパフォーマンス的に不利にしているかもしれない。今のMac OSだとやはりUNIXほどのファイルシステムのパフォーマンスは得られない。でも、Mac OS XはベースがUNIXなので抜本的に解決されて、今までよりも大規模なシステムでも十分に実用に耐えられますよ。

――そういえば、Appleから、FaceSpanのようなユーザインタフェースを制作できるようなAppleScriptのツールが出るという噂は常に出ていますが、実際のところどうなんですか?

Jason:うーん、なんとも言えませんね。
Sal:出すとも出さないとも言えませんね。

――デベロッパー向けの説明会、2回のセミナーのいずれにも参加し、また、インタビューにも応じていただき、たくさんのお話を聞けてよかったです。AppleScriptの可能性を今まで以上に信じることができそうです。

Sal:あなたたちのような人がAppleScript普及の原動力になっていることは十分に承知していますし、感謝もしています。“AppleScriptの殿堂”があったら、あなたがたも入れて差し上げたいくらいだ。

最後に、こばやしゆたか氏著の『AppleScriptリファレンス』にSal氏のサインをもらったが、すばらしい書籍だと絶賛していた。もちろん、日本語は読めないけども、サンプルスクリプトには目を通したそうで、「(AppleScriptに詳しいはずの)私が読んでいても新しい発見がある」とSal氏は話していた。ちなみに、Sal氏はExpoでAppleScript Users Groupのブースで自費で書籍を買っている。

◇Sal Soghoian氏(左)と、Jason Yao氏
 figs/photos/SalAndJason.JPG

◇Sal氏のサイン「AppleScript can change the world!!」と書かれている
 figs/photos/SalsSign.JPG
関連リンク