タイトル【Mac OS X Public Betaシリーズ】Mac OS Xをファイル共有サーバにはできない?カテゴリーネットワーク, Mac OS X, Mac OS X Public Betaシリーズ
作成日2000/10/10 18:3:4作成者新居雅行
Mac OS X Public Betaでは、自分自身をAppleShareサーバにする機能がある。だが、機能的には非常に限定されているため、その点ではMac OS 9から後退したとも言える。だが、サーバを主体ではなく、クライアントを主体としたOSであることを考えれば、それなりに納得できるファイル共有の機能なのである。また、ネットワーク環境の進展を考えれば、ファイル共有だけが情報共有ではない。こうした点をふまえて、Mac OS Xがどんなファイル共有機能を持っているのかを見ていくことにしよう。

Mac OS X Public Betaでファイル共有を可能にする前に、ユーザをMultiple Users(/Application/Utilitiesフォルダにある)で登録しておこう。それぞれ、異なるアカウントとパスワードを設定するなどする。実験してみる場合には、管理権限のあるユーザとないユーザを設定すると違いが分かっていいだろう。
そして、System PreferencesにあるSharingの設定で、ファイル共有を開始するStartボタンがある。これをクリックするだけだ。他には一切設定がない。なお、ファイル共有機能を停止したい場合には同じボタンがStopになっているのでそれをクリックすればよい。

◇System PreferencesにあるSharingの設定
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これで、Mac OS XがAppleShareサーバになる。ただし、AppleShare IPのサーバであり、AppleTalkベースでのAppleShareサーバではない。TCP/IPを利用したサーバ機能なので、これを利用するクライアント側については、AppleShare IPのクライアントになりうるMac OSないしはAppleShareクライアントが稼動している必要がある。なお、AppleTalkベースのファイル共有サーバには標準の機能ではなれないようだ。

ではさっそくクライアントからアクセスしてみよう。クライアントとしては、Mac OS 9.0.4を利用し、ネットワークブラウザで参照してみた。AppleShare IPサーバなので、「ローカルサービス」という大分類項目が出てきて、その下位項目としてMac OS Xのサーバ名が見えている。ちなみに、このサーバ名は、System PreferencesのNetworkの設定にあるAppleTalkのタブで付けたComputer Nameが見えている。サーバ名をクリックすると、おなじみのAppleShareのアカウントとパスワードを設定するダイアログボックスが表示されるので、Mac OS X側に登録されてあるアカウントとパスワードを入力する。

◇Mac OS 9からサーバとなったMac OS Xを参照した
 figs/macosxpb/os9browse.gif

これは、ネットワークブラウザでの画面であるが、Mac OS XにはAdmin権限のあるmsykというアカウントと、通常ユーザのtestを登録した。左がmsykでログオンしたときで、右はtestでログオンしたときだ。管理権限でログオンすると、自分のホームフォルダがアカウント名のボリュームとして見えており、まずそれをマウントすることが可能である。もちろん、自分のホームだから読み書きは基本的には自由だ。それに加えて、すべてのボリュームのルートもマウントすることができる。しかもどのボリュームも基本的には全て読み書き可能だ。特にアシスタントで設定したアカウントの場合は通常よく使っているので、そのアカウントがファイルの所有者になっている場合も多いだろう。しかしながら、起動ボリュームと別のボリュームは、そのボリュームのルート自体がすべてのアカウントで読み書き可能となっていることもあって、こうしてマウントするとアクセス制限が一切ない。また、他人のアカウントのホームディレクトリ内で、そのアカウントにしか書き込み権限のないフォルダに対してもファイルを書き込むことができる。つまり、rootとしてログインしていることに他ならないだろう。なお、クライアントからは“フォルダ階層”で見えている。ディレクトリ階層ではない。
一方、一般ユーザでログインすると、自分のアカウント名のボリュームが見えている。これによりホームフォルダをクライアントにマウントできる。ホーム以下は自分の所有になっているファイルが多いだろうから、自分のアカウントで自分のホーム以下を自由に操作できる点は一般的だ。ところが、一般ユーザでログオンすると、他のユーザのボリューム名も見えている。そのボリューム名をマウントすると、単に「Public」という名前のフォルダだけが見えているボリュームがマウントされる。また、Publicのフォルダにはベルト付きアイコンとなっているため、つまりは書き込みができるがフォルダを開くことができない。つまり、この場合、testでログオンして、msykというボリュームのPublicフォルダに対してファイルを書き込むことだけができるのである。どのアカウントにも、アカウントのホームにPublicフォルダが作成され、全ユーザに対して書き込みOK読み込みダメというアクセス権が設定される。こうして、あるユーザから別のユーザに対してファイルをあたかも転送ような使い方ができるのである。Publicフォルダは、別のユーザからのファイル受け付け窓口と考えて良いだろう。

ファイル共有ができるとなると、たとえば、文書ファイルやデータベースファイルの共有を行うということを考えてしまう。たとえば、ファイルメーカーProのデータベースをサーバに置いて、みなが同じデータベースをサーバ上のファイルのダブルクリックで利用できといった具合だ。しかしながら、こうした「みんなで共有」ということは、Mac OS Xでは相当やりづらい。通常のアカウントごとにログオンした場合、皆で共通に使えるフォルダというものはないのである。Mac OS Xでは、フォルダを指定して、このフォルダを公開するといったことができない。もちろん、Mac OS 9ではできたことではあるが…。
ただ、どうしても、共通フォルダによるファイル共有がしたいなると問題はあるが不可能ではない。1つはファイルサーバを使うアカウントは、全部adminにしてしまう。だが、危険が大きい。誰でもシステムを好きに触られてしまう。ユーザ教育が完全ならばこの手もあるだろうが、安全のために、共通に使うボリュームを別パーティションあるいは別ディスクにして、それのエイリアスをクライアントで作っておいて極力Mac OS Xの起動ボリュームをクライアントにマウントすることはないようにするというのも手だろう。
一方、個人別のアカウントとは別に、ファイル共有用のアカウントを用意する。もちろんadminではないものを作っておく。そして、ファイル共有利用のときはみんなで同じアカウントでログインする。同じアカウントで複数のユーザからログインすることはできるようである。だけど、個人のアカウントと別のアカウントで同時にボリュームをマウントすることはできないから、その意味では切り替えが必要になり煩雑ではある。やはり手慣れたユーザ向けの手法となり、完全なソリューションではないと言える。

こうしたファイル共有機能にがっかりする向きもあるかもしれないが、もう少し考えを巡らせてみよう。Mac OS Xのファイル共有機能は、やはり個人ベースでのファイルの転送を手軽にできるという線に絞られたのだろう。Mac OS 9でのファイル共有はそれなりの設定が必要となるため、やはり手軽さに欠ける。しかしながら、Mac OS Xはファイル共有をStartしアカウントを登録しさえすればOKなのである。そして、あるユーザから別のユーザにファイルを渡すだけなら、各アカウントのPublicフォルダが書き込みのみで見えていることだけで十分な機能だと言えるだろう。その意味で、ピアトゥピアのファイル共有の最低限の機能だけを提供している。最低限とは言え、必要十分とも言えるかもしれない。また、こうした利用だけに、「グループ」という考え方は取り入れる必要はなくなる。そのこともあって、Multiple Usersにはグループ設定をなくしたのだと思われる。
さらに、NetInfoでアカウント情報をネットワークで共有すれば、このファイル共有の機能は各クライアントにアカウント情報をMulitiple Usersで登録しなくても使える。単に、Startボタンだけになる。そうすれば、ファイルの転送は各アカウントで問題なくできるわけだ。
共通のファイルを使うにしても内容を参照するだけなら、Webを使えばいい。みんなで使う住所録など書き込みの必要があるような用途はWebObjectsで作ることで、やはりWebベースで対処できる。こうした道筋をたどっていけば、確かにみんなで同じフォルダをマウントするという形式の共有フォルダは必ずしも必要とはされない。ネットワーク設計も発想を変えれば、現在のMac OS Xの機能でも十分に意味はあり、しかも利用者側はより簡単になることが十分期待できると言えるだろう。

ところでこうしたMac OS Xのファイル共有機能を見ていて、昔あったTOPSというネットワークファイル共有ソフトを思い出した。System 6時代はスタンダードだったのだが、御存じの方は少ないかも知れない…。
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