タイトルAppleが出してきたiTunesやDVDソリューションの意味カテゴリー業界動向
作成日2001/1/10 12:33:24作成者新居雅行
フリーの音楽プレイヤのiTunes、DVDオーサリングのiDVD、さらにはプロ向けDVDオーサリングツールのDVD Stuidio Proと、アプリケーションを立続けにMacworldの基調講演で紹介された。いずれもターゲットは違うとは言え、Final Cut Proなどに続き、アプリケーションまでのソリューションまでもAppleから提供されることになる。ソフトウエアの詳細などは別の記事に譲るとして、私見を交えてこれらの動きを考えてみた。

まずはiTunesだ。MP3プレイヤ、CD-Rの普及で、ここ1、2年で音楽の楽しみ方が大きく変わった点は言うまでもないが、その完全なソリューションをAppleが提供することになる。MP3のエンコードやCD-Rへの書き込みなどを、簡単な操作で実現する。MP3プレイヤ(もはやそれだけの枠内ではないが)と呼ばれているジャンルのソフトの中ではもっとも注目できるものである。しかしながら、その一方で、Mac OS分野でMP3プレイヤソフトを開発しようとするサードパーティは、やはり減るのではないだろうか。もちろん、iTunesにない機能を実現するとか言ったベクトルもあり得るわけだが、いちばん大きな市場をフリーソフトによって食われることになる。マニア向けの特種用途を含んだものなどしか市場は残っていないように思われる。ユーザにとってはまさに朗報だが、サードパーティにとっては複雑な心境ではないだろうか。もっとも、これはWindows市場でも同様なのであるが…。
iTunesのソフトウエア自体は確かにシンプルになっていて分かりやすそうではある。音楽CD並の手軽さは必要とされるが、多くのプレイヤソフトは複雑化に走っていた気合いがあったことは事実だろう。だが、基調講演のプレゼンテーションで延々と見せたビジュアルエフェクトは、Windows Media Player 7ですでに実現されている。ビジュアルエフェクトはWindowsとは違うものを一生懸命揃えたとは思うが、やはり後追いになってしまったのは事実だ。さらにラジオ放送の受信も魅力的な機能だが、これもWindowsではもっと古いMedia Playerからお馴染みの機能である。
実は筆者は今、Windowsマシンでインターネットラジオで海外の放送局を聞きながら、ビジュアルエフェクト画面にして、PowerBookで原稿を書いている。個人的には逆もできるようになるというのは嬉しいことでもある。(自分の好きなジャンルの音楽は日本の放送局ではかからないのだ。)

一方、DVDについては、Appleは大きな進歩をしてくれたと言えるだろう。DVDのオーサリングシステムとなると、非常に高価というのが当たり前だったが、Power Mac G4の最上位マシンにあるSuper Drive(CD-ROMの読み書き、DVDの読み書きができる)というハードウエア、それにバンドルしたiDVD、さらにはプロユースに対応したDVD Stuido Proと、低価格なプロダクションシステムを提供することになった。まだまだ最上位機種だけであるが、数年するとDVDを書き込むシステムもよりローエンド機に下りてくるかもしれない。DVDとなるとその道のプロしか作れないと思っていたものが、簡単に言えばアマチュアでも手が出せるものとしてしまった。ムービーを作るのとDVDビデオを作るのとでは、意味が違ってくる。ムービーはあくまでパソコンを使って再生する必要があるのだが、DVDは専用プレイヤーで見ることができる。DVDプレイヤは、PlayStation2で一気に普及したのは言うまでもないことだろう。FireWire接続でのカンタンビデオ編集というところもMacintoshはどこよりも早く実現したが、DVDでもやってくれたという点はやはり大きい。クリエイティブ市場での存在感は、大きく増したと言えるだろう。
また、DVD対応については、それに対応したハードウエアを新製品として用意し、手軽に使えるソフトをバンドルし、さらにプロ向けツールを販売するというきちんとしたソリューションを組み立てた点は大きく評価できる。映像プロダクションなどプロの映像やデザイン関係者は、すでに評価を始めているだろう。一方、プロではない人たちに訴求するかどうかというのはいちがいにいいにくいが、iMovieがそれなりに支持されている点からも、DVDオーサリングをプロシューマに解放するのは意味があると思う。iMovieでみんながビデオを作るようになるとは言いがたいが、この種のソフトに目をつける人は当然ながらビデオが好きで、すでにビデオ機器を持っているだろう。ただ、そのビデオがDV対応でなかったりすると、意気減退ということになるのだが、ビデオを買い替えてアクティブに使うようになるのにやはり時間がかかていると思う。DVDはどうだろうか。もし、DVDビデオを作成できる環境が手元にあったとしよう、こうしてビデオ編集をした結果をムービーにするのと、DVDディスクに焼き込むのとどちらを選択するだろうか? 多くの人は後者を選び、それとなく(あるいは露骨に〜笑)人に見せびらかすに違いない。ビデオを撮影して編集することは、Windowsマシンでもすでに安価に可能なレベルだ。だが、ビデオを撮影してDVDを作るという路線をAppleはMacintosh上でいち早く実現したのである。
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