タイトルWWDC》Appleからのメッセージは「ネイティブアプリケーションを作ってほしい」カテゴリーイベント
作成日2001/5/22 8:52:39作成者新居雅行
WWDC 2001の初日、2001年5月21日にAppleのCEOであるスティーブ・ジョブズ氏を中心にしたセッションが行われた。基調講演という用語は使われていなかったが、イベントの初っぱなでもあり、事実上の基調講演と言えるだろう。過去のWWDCではCarbonというフレームワークの発表があるなど、開発の世界の次世代を担う重要な発表が行われた。しかしながら、「今年は将来の話はしない」と最初に釘をさされた。
今回の基調講演でスティーブ・ジョブズ氏やアビ・テバニアン氏からの何度も発せられた「Mac OS Xのネイティブアプリケーションを作ってほしい」という言葉が、Appleからのメッセージのすべてを物語っていると言えるだろう。Macworld誌の調査を引用し、多くのユーザがMac OS Xネイティブアプリケーションを熱望していると市場の状況を説明した。また、新たに開店した直営店でもアプリケーションを扱うことを言明し、デベロッパーのモチベーションを高めた。
技術的な内容については、すでにこれまで説明されたことが中心であったが、Appleの姿勢として、Cocoaを使ってネイティブアプリケーションを作りましょうというスタンスがより明確になってきたと言えるかもしれない。昨年中は、CocoaよりもCarbonに対する情報提供を積極的に行ってきているだけに、姿勢の変化を感じた。ただ、Carbonを否定するものではなく、Carbon自体も「ネイティブ」と言える環境をAppleは提供していることも強調して説明した。いずれにしても、デベロッパー会議という場に沿った有効なメッセージはこれしかないというところだろうか。
ニュースとしては、Mac OS Xをハードウエアにバンドル、WebObject 5の出荷、Mac OS X Server 10.0の出荷がいずれも、今日から行われたことだ。1つ目の話題はともかく、WebObjects 5やMac OS X Server 10.0については詳細な技術的な説明は講演では行われなかった。内容が公開できるかは微妙だが、これらについての詳細なセッションは、WWDCのプログラムの中で用意されているので、そちらで詳細は聞いてほしいというところだろう。
いずれにしても、「おみやげ」の少ない講演だったかもしれないが、逆に考えれば昨年までとまさに時代が変わったことを意味する。ローカルでベタな表現だが、今年はまさに「Mac OS X元年」だとも言えるわけだ。派手な話題を期待する向きとしては、「Mac OS Xの次」を知りたいという話もあるわけだが、大きな流れで「次」というのは今はないと言っていると感じる。これから始まる長い「Mac OS X時代」のまさに出発点にAppleもデベロッパーも立っているのである。そして、今一番の問題は、サードパーティのネイティブアプリケーションが不足しているということだ。AppleがiTunesなど自社でアプリケーションを開発してしまっていることからも、現場ではサードパーティが成り立たないのではないかという危惧も広がりつつある。そのことに対しての明確には言明していないが、Appleは「がんばって製品を作ってください」と明るく提案してきたのである。順調にアプリケーションが出荷されると、サードパーティというものがなくなるかもしれない…というのが取り越し苦労だったと言える時がやってくるかもしれない。将来を示して鼓舞していた昨年までと、まさに時代が変わったのだ。
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