タイトル【MacWIRE配信予定】Microsoft Office v.X for MacのExcelをチェックする(1)カテゴリー文書作成アプリケーション
作成日2002/1/25 17:49:36作成者新居雅行
X対応のOfficeをチェックするシリーズはちょっとマイペースすぎて申し訳ない。発売までに全ソフトクリアするかと思ったら、ちょっと甘かった。今回はExcelについて説明をしたいが、その前に、事前に予約購入していた方のところには、宅配便でOffice Xが到着しているところだろう。筆者のところも25日の午後に到着した。例によって少し凝ったパッケージである。

Macユーザのうち特に古くからのユーザには、Excelに関する思い入れの深い人は多いと思う。筆者ももちろんその1人であり、最初にMacを使いはじめたほんとに大きな理由は「Excelがあるから」だ。当時、MS-DOSの世界で1-2-3全盛期でもあった。筆者が今の会社に入った当時、会社は1-2-3の書籍等で、それなりに1-2-3の世界では知られた会社だったこともあって、当然1-2-3を使うということも仕事に含まれていた。当時の逆引きシリーズのいくつかでは筆者としても参加した。だけど、やっぱり1-2-3は必要があるときしか使わなかったのである。普段はもちろん、Macintosh Plusで動かしていたExcelだ。GUIであるということ、そして、なんといってもマルチウインドウであるということが大きな違いだ。さらに、メニューで操作できるといった、今となっては当たり前のことが当時としてはExcelを使うことで得られる大きなメリットだったのである。1-2-3は確かに慣れると早いのだけど、当時のプリンタの水準だとミシン目にページの切れ目をあわせるのが「テクニック」だった時代だ(もっとも、だからこそ書籍が売れたのではあるが…)。ところが、MacでExcelだと、そんなことはどうでもよくって、何も考える必要がない。さらに、マクロといった機能も、当時のExcelは関数で書くという今思えばとんでもない仕様だが、それでも、時としてアセンブラより分かりにくい1-2-3のマクロよりかははるかに「言語」であったと言えるだろう。(そんなこんなで、ブツブツといいながら会社で1-2-3を使っているのを笑いながらたしなめ、そこでのディスカッションを次のネタにつなげていた上司は、残念ながら2年前に他界した。)

いずれにしても、その後のWindowsに移植された最初のExcelのできばえに、卒倒はしたものの、Excel 4.0あたりからWindows版も実用的になってきて、Windows 3.1/Excel 5.0、Windows 95/Excel 7.0と進む当たりで、Windowsという市場でExcelはビッグなソフトになっていった。もともとMacでしか使えなかったExcelであるが、それをもとにWindows版を作ったというよりも、Windows版は独自に構築したのではないだろうかと思われる。逆に従来のMac系列のものは、Excel 4.0としていったん途切れて、Windows向けに開発していたものをMacintoshでも動くようにしたという感じのExcel 5.0となる。もちろん、根本的なテイストは変わっていないのであるが、なんというかMacで先行していたExcelという環境は、Windowsが先行しそれをMac版が後追いするようになったのである。また5.0での大きな変化は、ドラッグ&ドロップやオートフィル、マルチシート、Visual Basicの採用など、現在のExcelの原型になるものだ。全体的にOfficeはWindowsのもので、それをMacでも動くようにしました…という雰囲気が強くなってきた。そのため、Windows版ほどの軽快な動作ができない状態になってしまい、Excel 4.0をずっと使い続けたという人も当時は多かったと記憶する。そうこうしているうちに、Macintosh版のOfficeはアップデートされないという状況になってしまった。Windows 95をMicrosoftはリリースをし、Internet Explorerを出すなど「Windowsプラットフォーム」の強化を図っている時期だったからだ。
そして、1998年、やっとのことで、Office 98 for Macintoshがリリースされた。そして、Excel 2001、Excel Xと、Macintosh版としてのOfficeのシリーズが展開されてきた。単にWindowsにあるものを移植するのではなく、Macintoshという環境にマッチしたExcelを作るといった点がこれまでと違うところである。

ただ、Excel 1.0.6とかいった時代からExcelを使っている人はよく理解できると思うが、バージョンが新しくなっても、やろうとしていることは、表を作って罫線を引いてSUM関数を入力することだ。確かにドラッグ&ドロップとか、マルチシートと言った大きな変換点はあるものの、スタイルの上では80年代のExcelは表計算ソフトの1つの完成を見ていると言ってもよい。言い換えれば、90年代はその完成した形の上にいろいろな機能を追加したといったところだろう。Windows版では特にデータベースのフロントエンドという使い方を発展させたため、企業ユーザに受け入れられた面が多分にある。Mac版ではそうした機能は弱いのではあるが、Excel 2001から導入されている「設定パレット」といったユーザインタフェースは、ちょっとAdobeのアプリケーションを思わせるGUIでもあり、その意味では「Mac的」な機能なのであろう。ただ、いずれにしても、新しい機能ということは、もはや表計算ソフトの世界ではあまり話題にはなりにくいと言える。もちろん、Excel Xの大きな特徴は、Mac OS Xネイティブで稼働するということだ。Classicで動かすExcel 2001に比べて起動も速く、フォルダ名が31バイトを超えると開けないと言った根本的な問題も解決されている。
そんな中で、Excel Xの大きなトピックと言えば、やはりQuartzを使ったとされるグラフィックスの透過度の設定だろう。シートに配置したスマートオブジェクトに対しては、設定パレットを使って、透過度を設定できる。

◇オブジェクトの透過度は設定パレットで設定できる
 

一方、グラフの場合には、系列のパターンにあるグラデーションの設定に「透過度」という設定が加わっている。

◇透過度の設定は書式のパターンのグラデーション設定のところで行う
 

なぜかグラデーションの場合にだけ透過度が設定できるようになっている。1色の塗りつぶしに透過度の設定をするには、2色のグラデーションを指定して、両方の色を同じにするとうことになる。
いずれにしても、こうして、グラフの塗りつぶしを透明にすると、当然ながら後ろ側が透けて見えるのである。以下の図には2つのグラフがあるが、下のグラフは透過を設定していないもので、上のグラフは手前から2つ目の系列に透過を設定した。

◇グラフの系列に透過の設定を行った
 

なるほど、いずれにしても、見栄えをよくする機能は加わったと言えるだろう。ただ、実は少し問題がある。オブジェクトに設定した透過の設定は印刷においても有効であるが、グラフに設定した透過の設定は印刷時には無視されるのである。以下はプレビュー結果ではあるが、実際にインクジェットプリンタで印刷しても、棒グラフは画面のようには透過していなかった。

◇透過のあるグラフを印刷してみた(プレビュー)
 

透過の機能は確かにおもしろいが、やはり印刷まではサポートしてほしいところである。また、グラフを画像としてコピーしてペーストすると、透過度を設定したグラフの部分は非常に荒いドット丸見えの画像となり、これはスマートオブジェクトでも同様だ。ちょっといい機能なのだが、このバージョンでは使い方を注意する必要があるということも言えるだろう。
(続く)
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