このテキストは、日刊デジタルクリエイターズに掲載されたものです。
■Powerbook Publishing Project 番外編
ノンプログラマーのためのOME入門ガイド
8月サンタ
ノンプログラマーのためのOME入門ガイド/2005/3/25配信号
今、本誌デジクリで隔週の金曜日に執筆いただいている新居雅行さんといえば、Macintoshを昔から使っている人ならお馴染みの名前だろう。技術系ライターとしては、目が痛くなるほどのお仕事の実績をお持ちの、パワフルな方である。
その新居さんが中心となって開発、無償で提供されているのが、Macintosh用のメールクライアント、OME(Open Mail Environment=Macintoshメール環境)である。
●普通のMacユーザーにとって敷居が高い
OMEは結構いろんな人に知られている割には、利用者が少ない。それは、GUIに慣れきっていて、マウス操作と若干のショートカットで全ての作業をこなしてきた普通のMacユーザーにとって、若干敷居が高く、また理解しにくい部分が多いからだ。
インストールしてはみたものの、なんのメリットがあるのか良くわからなかったとか、受信は出来たけど送信が上手くいかず、その解決法でつまづいたりして、直接問い合わせるのも億劫だし結局放置、といった人が多いのではないかと思う。
私も当然その一人で、その面白さが理解出来て、便利に常用するようになったのは、最初にインストールしてから一年以上経ってからの、つい最近のことである。
しかしOMEはオープンな開発環境で、いろんな人が、いろんなパートを手助けしながら、ボランティアで開発している有志のソフトウェアである。私もその恩恵に浴している以上、折角だし、普及に少しはお役に立てるのでは、ということで、全二回程度で、このOMEはどんなソフトで、どのように使うと面白いのか、プログラマーでもなければエキスパートでもない視点から、解説してみたい。
●OMEの何が面白いのか
OMEとは、普通の人が普段目にしている「アプリケーション・ソフト」と違って、まとまったインターフェイスがついていない。あえて言うなら、「コンポーネント」である。
「メールを受信する」「メールを送信する」「メールを閲覧する」「設定をする」といった各機能それぞれが小さなアプリケーションで、各開発者達がそれぞれのパートを受け持って開発が続いている。とはいえ、メールを送受信するといった最低限の部分はすでに実装されているから、すぐにでもメーラーとして使うことは出来ないこともない。
ユーザーは、その機能群を、自分の必要に応じて、自分の作業環境に組み込み使うという仕組みである。なので、インストールそのままでは、何一つ、市販のメールソフトのようには、思うままに使うことはできない。刃や握りの付いていない包丁を買ってきたようなもので、自分で研いだり、自分で握りの部分を加工して取り付けないことには、モノを切ることすらおぼつかなかったりする。
多くのMacユーザーはそういうかたちに慣れておらず、ボタンとかプルダウンメニューとか、パッケージングされた分かり易いインターフェイスに普段接しているので、その辺が大きなハードルになっていると感じる。
しかし、OMEには決まり切ったかたちがない分だけ、自分の普段使いの環境にびたりとはめ込んでしまえる柔軟さがあり、うまく構築してしまえば、ソフトとソフトの境目を越えた便利さが手にはいるのだ。
特に1メール=1テキストの原則は、文章を記述するのにエディタを常用する全ての人にとって、大きな意味をもたらす。また、AppleScriptでコントロール出来る小さなコンポーネントなので、GUIのAppleScriptが実装されるOSX 10.4 "Tiger"の時代には、とても面白い使い方が予想されるのだ。この辺は後半で詳しく解説したい。まず今回は、とっつきにくい最初の部分からお話ししよう。
●最初のハードルを越えよう
OMEの最初のインストール作業は、OMEのサイトからパッケージ(dmgファイル)をダウンロードし、中身をアプリケーション・フォルダにコピーするだけだ。
・詳細はマニュアルの通り。
問題は、最初にメールをダウンロードしてからである。私が感じた最初のハードルは、皮肉なことに、OMEをはじめてつかうときに触れる、このページのアプリケーション群である。(ただし、初心者は必ず一通り試してみよう! 入門編としてとても良く工夫されているページである)
プログラマーならぬ普通の人には、例えばOME_DownloadMails(メールのダウンロード)やOME_BrowserXCoS(メールの簡易ブラウザ)といったものが、OMEの機能を具現化したひとつの例であり、実際には他のやり方、様々な手段でもOMEを自分の環境に組み込める、ということがとてもわかりにくい。
そして言ってはなんだが、OME_BrowserXCoSが、とてもとっつきにくい(すみません)。普通のメールソフト風の外見がついたOME_GMaiも、今の良くできたかゆいところに手の届く、純正のApple Mailにくらべると機能充実とはいえない。基本的に足りない部分はユーザーが埋めるソフトだし、開発の方はもっと多くの人に使ってもらって、ユーザーの反応、リクエストが欲しいというのが現状なので、もっと盛り上げていきたいところなのだが。
なので、お試しで使ってみたはいいが、なんだかインターフェイスがこなれていないし、わかりにくい、というところで放置、となってしまうのだと思う。
●私の使い方~Finderに組み込み、Jeditをメーラーにしてしまう
OMEは、単純にひとつひとつのメールはひとつづつのテキストファイルとして、ユーザー/書類/Open_Mail_Environmentフォルダの中の、InBoxというフォルダに保存される仕組みなので、いっそ、そのフォルダをFinderで常時表示しておけば、中にファイルが増えていくのですぐわかる。
今のシステム10.3のFinderにはサイドバーという、簡単にフォルダやアプリケーションを登録出来る窓の部分があるから、そこにOMEのInBox、ついでに送信箱であるOutBoxも登録してしまおう。該当フォルダを表示して、ドラッグして左側のサイドバーにドロップするだけである。
ついでに、メール受信、メール送信、新規メールといった操作もAppleScriptにまとめれば、サイドバーに埋め込んでしまえる。また、システム10.3には、フォルダにAppleScriptを組み込む「フォルダアクション」という機能がある。フォルダ内にアイテムが増えたときに、メッセージを表示したり、内容をコピーしたりということが自在に行える。私はInBoxフォルダに、メールが届いたら新着メールあり、のメッセージを表示させるように設定した。
と、文章であれこれ書いてもイメージ出来ないと思う。下記のURLに実際の画像を用意した。Macを起動して、Finderでサイドバーをクリックするだけでメール受信が出来たりする。新規メールをクリックすると、Jeditが立ち上がり、送受信もすべてJeditから出来る。「Finder、エディタのメールソフト化」である。
ぴんとくる方は、これだけで「おっ」とわかって下さるかも知れない。次回、実際のやり方とメリット、Tigerとの組み合わせなどをお届けする。もちろんこれは私なりの使い方で、1000人いれば1000変化がOMEの面白いところなのだ。
ノンプログラマーのためのOME入門ガイド/2005/4/4配信号
●「餅は餅屋」というのがOMEだ!
メールソフトOMEには、最近の市販ソフトのように、かゆいところに手が届くようなサービスは装備されていない。「テキストデータとして、メールを送受信する」ことに徹した単機能ソフトである。おまけに基本的に「必要なものは自分たちでなんとかしていきましょう」というスタンスだから、公式サイトで提供されているアプリケーションそのままでは、快適なメール環境にならないのは当然なのだ。ではそんなソフトの何がアドバンテージなのだろうか。
個人にとっての情報の入り口であり、毎日、最も頻繁に使うソフトウェアのひとつだから、市販のソフトは各社それぞれ工夫を凝らしており、今ではたいていのメールソフトは「そつ」がなく出来ている… 有名どころのソフトは、定番的な機能は十分に備えているので、まずは普段の使い勝手には不自由することはない。
ただし、細かな使い勝手には皆、不満が残る。「不満が残る」と断言するのは、全ての機能を兼ね備えつつ、誰にでも使い勝手の良いメールソフトというのは存在しないからだ。ソフトの作り手側も、使い手側も、千差万別の状況を抱える以上、それは仕方のないことだ。
一つのソフト内ですべてリクエストに応えようとすると当然、プログラムは肥大化する。あの機能もこの機能も充実させようとすると、開発費も時間もかかるし、それでいていいものが出来る保証は何もない。具体的に言えば、何でもついてるが、使い勝手の悪いアーミーナイフみたいなものである。
・ヴィクトリノックス・スイスチャンプ。子供の頃は、これが一番格好良いと思っていたものです…。
それよりは、「文章の編集・制作はエディタで」「自動整形処理、エクセルなどへの受け渡しはファイルメーカーで」「添付書類はMicrosoft Wordで」と、それぞれの専門職を上手く組み合わせた方が高度な処理ができる。「餅は餅屋」という発想を徹底的に突き詰めれば、特定のメールソフトに依存しなくても、使い勝手の良い環境が出来るかも知れない。それがOMEの思想である。
●テキスト職人御用達仕様? 「OME+Jedit」
OMEの面白さを体験するには、やはりエディタと組み合わせるのが一番だと思う。電子メールは基本的にテキスト文で、その文章を編集するのに最適のアプリケーションがテキストエディタなのである。一度も使ったことのない人も多いと思うので、Macユーザーに大変評価の高いテキストエディタ、Jeditとの組み合わせを、初心者には試してみて欲しい。
・もはや定番のテキストエディタ、Jedit。OMEと組み合わせるなら、今のところは4.0の方をどうぞ。
・そしてOMEサイトの「Jeditで読み書きする」ページの説明に従い、1.OMEのエディタにJeditを指定し、(必須)2.JeditのマクロフォルダにOMEの送受信機能スクリプトをインストールしよう。
・ガイダンスページ「Jeditで読み書きする」
これだけで、メールのリスト閲覧以外はJeditから出来るようになってしまう。届いたメールのリスト確認は、前回も記したとおり、MacOSのFinderで、InBoxフォルダをそのままメール受信フォルダとして使うことをおすすめする。末尾に、拡張子がygmとついていたら新着メール、読み終わったら(開いて閉じたら)mailという拡張子に自動的に変わる。
テキストエディタのツールとしての使いやすさは、使い込んでいる人にはもはや説明不要だが、「タブで整形して、そのタブをスペースに変換する」「強力な検索・置換処理」など、メールソフト内では実現しにくく、慣れると手放せなくなる便利な機能が満載である。
エディタの良さがわからないと、OMEの良さもわかりにくいのではないかとも思う。使ったことのない人は、是非おためし下さい。もちろん、Jeditだけでなく、miなど、他のエディタもそれぞれに良さがあるけれど、一度手に馴染んでしまうと、非常に乗り換えにくいのもエディタの特徴だったりする。
●AppleScriptは必須
JeditとOMEを連携させているのは、AppleScriptという、OSが備えている「からくり仕掛け」である。行数もないので結論から言えば、ノンプログラマーは、このAppleScriptの書き方をゼロから覚えよう、などという効率の悪いことをせず、ざっと仕組みを眺めたあとは、先人のつくってくれたスクリプト例を開いて、自分に必要なぶんだけカスタマイズして使わせてもらうのが一番早い。
まずはAppleScriptに関して、リアルタイムで素晴らしい情報源。
またサンプル豊富で、とても参考になったのはこのサイトである。充実したPDFのドキュメントも置いて下さっている。
・株式会社フォーサイト Scripting Serviceのページ。なんて有り難い…
さらに、AppleScript生成がノンプログラマーにとってとても楽になる、こんなツールも発売している。
要は、OMEはAppleScriptと組み合わせることで、エディタに限らず、ドックやサイドバーといったFinder項目から操ったり、ファイルメーカーから送受信したりといった、ソフトのつなぎ目を越す操作が可能なのである。そして、今はプログラミング言語として、ノンプログラマーには少々ハードルの高いAppleScriptだが、まもなく登場のMacOS10.4 "Tiger"では、そのプログラムが機能別のアイコンを組み合わせることで簡単に実現出来るような仕掛けがあるらしい… ので、要注目なのだ。
・その名もAutoMater。かなり未知数ではあるけれど、最高に期待。
とここまで来たところで、時間も行数も尽きてきてしまった。さらに、次回に続きます。ついでにファイルメーカーとメールとOMEの組み合わせについても書いてみます。
ところで、新居さんは先日から会社員となるので、デジクリには不定期登場となります(涙)しかし定期連載は終わってもOMEは終わらない(むしろこれからが面白い)ので、応援していきたいのです。しかし、4月1日のテキストを見ても、とことんDIYの人です。頭が下がります。。
ノンプログラマーのためのOME入門ガイド/2005/4/15配信号
●バラバラの反応の意味
先日のデジクリイベントでは、海津ヨシノリさんというゲストスピーカーのもつ、お話の内容のレンジ、カバーする内容の広さで「この方にきていただいて良かった」とつくづく感じた。なにしろ「オンデマンド」と銘打つ以上、迎え撃つ壇上の講師の側に、なんでもござれの懐の広さがなくては成立しない。本当にお疲れ様でした。
一方、クリエイターであるお客様サイドの受け取り方も気になった。終了後に、いろんな方に「本日はいかがでしたか」とたずねてみたときに、「いやあ、私はPhotoshopがメインなので、同じAdobeのソフトでも、Illustratorについてのパートは、正直眠かったですね」
あるいはその逆で、「イラレの部分は、帰宅後即役に立つお話があったけれど、Photoshopの部分はつらかった」など、興味をひく、ひかない、が非常にきれいに分かれている印象があった。
長丁場のイベント中、後ろからずっとビデオ撮影しながら、お客様の反応をつぶさに見ていた古籏一浩さんに伺っても、海津さんのお話しする内容に対し、会場の反応、例えばメモをとるポイントなども、ものの見事に、まったくバラバラだったという。「いやあ、全く反応しているところが違うんですよね」
各自興味を持つポイント、ジャンルがばらばらで、反応が個々に違うというのは、当たり前であって、決して悪いことではないはずだ。同じ状況に置かれている人たちばかりではないから、逆に言えば、きちんと内容を参加者各自が、正面から受け止めているが故の、バラバラの反応と言える。なんとなく調子をあわせて、おざなりの受け止め方をしている、ということなら、こうはならないはずである。充実はしていたのだ。
しかし、「Photoshop使いの人が、Illustratorの操作、TIPSに関心を持たないあるいはその逆」ということは、私にとっては、ある予感を裏付けるものだった。最近、本当に人の抱く関心の範囲、活動の範囲というものが細分化され、個々のレンジ、ジャンル内では豊かに、深くなっているものの、ジャンル間の壁を超えるということがあまりなくなっている。興味ある、興味ないの差が激しすぎる。
何度も確認しなくてはならないが、悪いことではない、とは思う。巨人・大鵬・卵焼きの時代ではないので、人は社会側の要求ではなく、自分の側の要求として、興味のあることに、自分なりのスタンスで取り組むことができるようになった。ある意味で理想的な状況である。
●細分化されすぎるとつまらない
一方では、やっぱり、イラレとフォトショップの客がきれいに分かれる、という状態にも違和感を感じるし、つまらない、と思う。別にグラフィックソフトの定番二種の話を強調したいわけではなく、個々の人の取り組み、興味のありように文句をつけたいわけでもなく、「細分化に、行き過ぎを感じる」ということなのだ。
私の持論として、「面白い人は、ジャンルを超える」「達人は、自らがジャンルとなる」というのがある。イベント企画時に、ゲスト候補を選ぶとき、例えば海津さんであれば「イラストレータ」というジャンルがあるのではなく、『海津ヨシノリ』というジャンルがある」と力説したのである。私としては、そのジャンルの広がりの面白さを、そのままお客さんに受け止めてもらいたいと思っていた。だからこそのライブイベントだと思っているところがある。
そういう、専門家とか役職とかいうありがちな肩書きを越えた、人間ジャンルと言うべき、面白い人々は、昔よりむしろ巷で見つけやすくなっているという気がする。しかし、受け止める側のアンテナは、より狭量に、より鋭敏に、という方向にしか進んで行っていない。ナローでシャープでスマートで洗練。
最初はとても素晴らしいことだと思っていたけれど、最近は、もしかして非常に深刻なことではないかと思い始めた。簡単には説明出来ないけれど、時間をかけてその深刻さを明らかにしていきたい。
●まだまだいくぞOME~ 具体的にどう便利なのか
さて、本題のOME、フリーのMac用メールクライアントのお話である。これを開発している新居雅行さん自体、ライターとか某社社員(笑)というよりは、「『新居雅行』というジャンルがある」と言う方が早い存在である。
OMEに限らず、説明しにくいアプリケーションの功徳を説くためには、具体的な活用事例を出していくのが最も効果的である。今回はファイルメーカーとの組み合わせを例として挙げたい。
●Web上のフォームから届いたメールを、仕分けして処理する
デジクリイベントの受付は、Webページ上に設置した、ごく普通の、cgiによる受付フォームである。空欄をユーザーに埋めてもらい、「申込」ボタンを押してもらえば、下記のようなメールがデジクリサイドに届く。
(以下例)
────────────────────────────
▼送信内容
────────────────────────────
name = ●川●子
age = 38
job = デザイナー
email = xxxxx@xxxxx.com
〒 = 000-0000
address = 東京都●●区●●24-1 ●●ハイツ305
phone = 03-xxxx-xxxx
comment = ※よろしくお願いいたします。
----------------------------------------------------------------------
Date : 2005/03/25(Fri) 10:28
Host : 219-xxx-xxx-xxx.xxxx.ne.jp
Agent : Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JPM; rv:1.7.6) Gecko/20050318 Firefox/1.0.2
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(以上例)
こんな受付メールを一般的なメールクライアントで受信した状態では、たんに申込情報の羅列の山である。普通はコピー&ペーストでExcelに取り込んで整理したりする。もう少し上手くやるとすると、サーバサイドにCSVの形で蓄積するようにして、Excelで処理するという手などもある。
いずれにせよ、通常のメールクライアントで受けてしまうと、なんらかの形で表計算ソフトなどに転記しないと、使えるデータにはならない。そこでこのメールをOMEで受信すると、一通づつが切り分けられた独立テキストとして、フォルダにたまる。それを活用するのである。
ファイルメーカーであらかじめ、「名前」「年齢」「仕事」といった申込みの記入内容に対する入れ物(フィールド)を配置したデータベースをつくっておいて、この申込みメールテキストから個別に取り出してそれぞれを納めれば、使い勝手の良い申込者名簿が出来上がる。手作業は面倒くさいので、当然切り分けなどは自動でやりたい。
まずは、ファイルメーカー側にこのテキストそのものを収めるフィールドを、設定・配置、「レコードの取り込み」>「フォルダ」を実行すると、一通一通が1レコードづつになって取り込まれる。
次に、納められたメール(テキスト)データを、スクリプトを使って処理していく。ノンプログラマーにはここがつらいところだが、ファイルメーカーの場合は日本語で書かれたメニューを組み合わせていけば、なんとか処理システムをでっちあげられるところが良いところ、である。
例文のようなメールから、「分離したい項目と項目の境目を、目立つ単語に変換して区切りマークとする」「不要な部分を検索・置換で取ってしまう」「区切りマークの後ろに入力されている言葉を個別に取り出し、『名前』『年齢』などのフィールドに個別に納める」というスクリプトをつくる。
細部ははしょってしまったけれど、デジクリ木曜日の茂田カツノリさん著の「ファイルメーカーPro 関数・スクリプト事典」と首っ引きでやると、なんとかなってしまうものである。(この本は身内ボメでなく、本当に名著である)
これもボタンにまとめて配置。すると、毎日適当な時間にボタンを押すだけで、Webから申し込まれた個別の申込が、名前・連絡先などの属性に切り分けられたデータベースとなる。葉書の宛名用のレイアウトをつくっておいて、画面を切り替えて印刷して、皆さんに発送している。また、報告書などの作成用には、やはりExcel形式が便利なので、必要項目だけをExcel形式で書き出し、メールに添付したりする。
正直、普段の仕事の合間にいちいち申込メールから名前を抜き出したりしていると、時間がいくらあっても足りない。しかし、この手の「ちょっとした」作業は皆さんのまわりにいくらでも転がっているはずだ。
ファイルメーカーはデータベースソフトというくくりで扱われているが、私にとっては「テキスト処理装置」にして、「Excelにプログラミングが苦手な私でも出来るような、グラフィカルなマクロが扱えるもの」という認識だったりする。
そして、実際、申込受付処理はほぼ自動で出来るようになったので、1000名だろうが、負担はもうほとんどない。実際にはアフターフォローのメール送信まで、ファイルメーカーからやっていたりするので、本当に助かるツールとなっている。
OMEは、それ自体が便利なソフトではなく、組み合わせるソフトウェアの美質を引き出すプラグインのようなものなのである。今回の組み合わせはベストとは言えないが、作業が溜まるにつれて、しみじみ有り難いものである。
ところで、今回ファイルメーカーとメール取り込みの話が出てきてしまった。次回はとうとう発売日が決まったTigerとOMEの話、そしてファイルメーカーとメールの関係について取り上げたい。
【8月サンタ】santa8@mac.com
LondonとLyallとLeCarreを愛する36歳元書店員。某超大手取次社員の経験アリ。